話題のSDGsとは?私たちにどうかかわるの?〈第7回〉


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ノーベル化学賞を受賞した吉野彰さんは、授賞式終了後に「受け取ったメダルはずっしりと重い」と発言しました。

その真意について記者団の質問に応じ、「サステナブル(持続可能な)社会、脱炭素社会を実現しなさいという一種の指示であり、重みがある。受賞者の立場から、環境問題について発信したい」と心境を語りました。
12月18日には大阪府内で記者会見を開き、大阪・関西万博が催される2025年は「空回りしてきた環境問題への答えが出る時期」だと指摘。「電池技術を人口知能(AI)やIoT(身の回りのあらゆるモノがインターネットとつながる仕組み)などと融合すれば、環境問題に貢献できる」と訴えました。リチウムイオン電池の実用化に道を拓いた吉野彰さんだけに、その言葉は重く説得力があります。

「無人電気自動車(AIEV)を携え、環境問題の解決に向けて旗振り役になっていきたい」という吉野彰さんの意気込みは、まさにSDGsのめざすゴールに合致するものといえます。では、SDGsの15から17までの目標を見ていきましょう。

陸の豊かさも守ろう

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2010年から2015年にかけて、世界では33万ヘクタール(東京都の面積の約15倍)の森林が失われていますが、インドネシアとマレーシアだけでも、過去20年の間にアブラヤシ農園を作るために、約360万ヘクタールのもの森林が伐採されました。森林が消滅するとそこに住む動物たちも住む場所がなくなります。ボルネオ島のオランウータンは、過去100年間でその生息数は10分の1になってしまいました。

砂漠化の問題はさらに深刻です。毎年、干ばつと砂漠化によって約1200万ヘクタールの土地が失われています。これは1年間で約2000万トンの穀物が栽培できる面積にあたります。人びとの暮らしは山や川、海や森に囲まれた自然と、そこで生きる多くの生き物に支えられています。私たち人類の暮らしが豊かになっていくにつれ、生物の多様性を守る自然が破壊されてきました。いま、森が失われ、砂漠化が進むことで、多くの生き物が絶滅の危機にあります。
第15番目の目標は、持続可能な形で森林を管理し、砂漠化に対処し、土地の劣化を食い止めて、生物多様性の損失に歯止めをかけることです。

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《私たちにできること》
消費者として私たちが生物多様性維持のためにできることは、リサイクルや、持続可能な供給源を利用した地産地消の食生活、必要なものに限った消費、エネルギー仕様の抑制などが挙げられます。森林伐採の元凶ともいうべきアブラヤシを原料としたパーム油を使う食品を摂らないことで、生産国の森林を守ることに寄与できます。
スナック菓子、マーガリン、カップ麺、アイスミルク、チョコレートの原材料表示を見てください。「植物油脂」と表示があるものの大半がパーム油のことです。日本人は一年間に平均4㎏のパーム油を摂取していると言われています。発がん性や糖尿病のリスクさえ指摘されるパーム油の摂取を避けるとともに、インドネシアやマレーシアの森を守りましょう。

平和と公正をすべての人に

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世界では、今この瞬間にもどこかで紛争や戦争が起きています。紛争のある国や地域で暮らす子どもたちは約2億5000万人にのぼり、これらの地域では小学校就学年齢で学校に通えない子どもがおよそ2850万人もいるのです。

多くの人びとが争いや迫害、暴力で命を奪われ、家族を失い、住む場所を追われた人たちが暮らす難民キャンプには6850万人もの難民がいます。地球上からあらゆる争いごとをなくして平和を実現する必要があります。みんなが参加できる平和な社会こそが持続可能な開発を生むのです。

そのためには、法律などの公正な制度をだれもが利用でき、地域・国・世界といったあらゆるレベルで公正な司法制度を利用できる社会を築かなくてはなりません。腐敗が最も広がっている制度の中には、司法と警察も含まれています。有罪判決を受けていないにもかかわらず収監されている人たちの割合は受刑者全体の31%を占め、その割合は減ることがありません。
平和で包括的な社会を推進するためには、国際的な殺人、子どもに対する暴力、人身売買、性的暴力の脅威に取り組むことが重要です。こうした取り組みこそ、すべての人に公正な司法へのアクセスを提供し、公正かつ包括的な社会制度を構築するための基盤になるのです。
 

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UN Photo/Stuart Price

《私たちにできること》
まずは世界の出来事に無関心にならず、テレビや新聞で「どんなことが起きているのか」を知ることが大切です。また、公正な社会を作っていくためには、だれもが政府の行いに強い関心を持ち、積極的に政治にかかわっていくことが必要です。貴重な選挙権は棄権することなく必ず行使して責任を果たし、自分の意見を政治に届けるようにしましょう。
また、地域社会やコミュニティーのなかで、暴力の現状と、平和で公正な社会の重要性に関する意識を高め、正義を実現する取り組みに積極的に参加することが求められます。

パートナーシップで目標を達成しよう

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最後となる17番目の目標は、持続可能な開発のためのグローバルなパートナーシップを活性化し、必要な行動や方法を強化して目標を達成しよう、ということです。

グローバルなパートナーシップのためには、各国政府、市民社会、科学者、学会、民間セクター、企業、学校、家庭など、世界中のあらゆる人たちを含む私たち一人ひとりが結束を図り、SDGsの担い手になる必要があります。それは私たち全員に関係がある大切なことといえます。

これまでに述べてきた17の持続可能な開発目標(SDGs)は、先進国、途上国を問わず、すべての国に対して「誰も置き去りにしない」ための行動がなくては達成できません。
発展途上国は、資金や技術など、先進国からの積極的なサポートが必要です。先進国の協力により、2014年の政府開発援助(ODA)の総額は1352億ドルと過去最高水準を記録することができました。一方、アフリカのインターネット利用者は過去4年間でほぼ2倍に増えましたが、今なお世界で40億人以上がインターネットの利用ができておらず、その90%は発展途上国の人たちです。
 

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UN Photo/Laura Jarrielc

《私たちにできること》
地域のコミュニティーで、SDGsの達成に向けたアクションを働きかける団体への加入や、仲間でそのようなグループを結成する活動をしてみてください。積極的に関心を持ち、考え、行動を起こすことがパートナーシップを充実させ、地球の抱える複雑で難しい問題を解決していくことにつながるのです。SDGsの実現のためにできることやアイデアが浮かんだら、その輪を家族や友人、地域の人たちに広げ、一緒に行動しましょう。その一歩一歩こそがまぎれもなくSDGsを実現するパートナーシップとなっていくのです。

このままでは地球がもたない!

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UN Photo/Mark Garten

7回にわたってSDGsを解説したシリーズも今回が最終回となります。本来ならSDGsによってもたらされる豊かな未来を見据えたいところですが、先ごろスペインで開催された国連気候変動枠組み条約第25回締約国会議(COP25)では、議論がまとまらず、地球温暖化防止の新たな枠組み「パリ協定」に黄信号がともりました。

11月4日、アメリカは「パリ協定」からの離脱を正式に国連に通告。世界で唯一、同協定に参加していない国となったのです。COP25では二酸化炭素など、温室効果ガスの排出削減量の上積みが参加各国に求められ、どんなに環境性能が優れた設備でも二酸化炭素を大量に排出せざるを得ない石炭火力発電の廃止が議論されました。
しかし、出席した小泉進次郎環境大臣は、石炭火力発電所の海外輸出削減など、日本に求められた脱石炭化や排出削減目標の強化に同意しませんでした。これはとても残念なことです。

──2030年の社会を支えるのは今の子どもたちです。将来の地球に生きる人たちすべてが豊かに幸せに暮らすため、これを読んでくださるみなさんから声を上げ、行動して、SDGsの達成をともにめざしていこうではありませんか。

≪記事作成ライター:山本義彦≫
東京在住。航空会社を定年退職後、介護福祉士の資格を取得。現在は社会福祉法人にて障がい者支援に携わる傍ら、30年に及ぶクラシック音楽の評論に加え、社会問題に関する執筆を行う。


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