今年9月から始まる「マイナンバー還元」で、はたしてカード保有者は増えるか?


今年(2020年)9月から、マイナンバーカードによるポイント還元が始まるのをご存じだろうか。

これは、マイナンバーカード保有者のキャッシュレス決済に対して、最大5000円分のポイントを付与する制度で、昨年の消費増税とともに始まった「キャッシュレス・ポイント還元制度」に続く国の還元事業となる。政府はポイントの原資として、新たに2000億円を超える予算を投じ、消費税対策&キャッシュレス推進とともに、マイナンバーカードの普及を促す狙いだ。

そこで今回は、今年秋からのマイナンバー還元制度に焦点を当てて、その仕組みや利用方法、普及に向けた課題点などについて考察する。

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キャッシュレスの買い物で最大5000円分を還元

マイナンバーカードによる新たな還元策では、2020年9月~2021年3月までの7ヵ月間、マイナンバーカード保有者にキャッシュレス決済で使える「マイナポイント」が付与される。
適用される事前入金(チャージ)や買い物の額は1人2万円が上限で、還元率は25%。つまり、キャッシュレスの買い物で、最大5000円分が“実質タダ”になる仕組みだ。利用できる決済サービスは、Suicaなどの電子マネーやPayPayなどのQRコード決済を含め、約12種類ほどになる見通しという。

ご承知の通り、政府は昨年10月の消費増税に合わせて、キャッシュレス決済で最大5%のポイントを付与するキャッシュレス・ポイント還元を実施。その政策が功を奏し、昨年の消費増税をともなう景気変動は、前回の増税時(2014年4月)より大幅に抑えられ、キャッシュレス決済の利用率も順調に拡大している。
ただ、同制度は今年6月に終了するため、第二弾の還元策を投じて、その後の消費の落ち込みとキャッシュレス離れを抑えつつ、マイナンバーカードの保有者も増やそうという狙いだ。

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マイナンバーカードでポイント還元を受ける方法

マイナンバーカードでポイント還元を受けるためには、事前にパソコンまたはスマートフォンから申請して「マイキーID(個人認証ID)」を取得し、利用する決済サービスの情報を登録する必要がある(以下参照)。

【マイナンバー還元 申請手続きの方法/パソコンの場合】
1・専用サイトでマイキーID作成・登録準備ソフトをインストールする(※1)
2・パスワードを入力する(マイナンバーカード受け取り時に設定した4ケタの暗証番号)
3・マイナンバーカードの内容をICカードリーダーで読み取る(※2)
4・マイキーIDが発行されたら、利用する決済サービス(1種類のみ)の情報を登録する
(※1)対応OS:Windows 8.1以上、対応ブラウザ:Internet Explorer11
(※2)公的個人認証サービス対応のICカードリーダーが必要

【マイナンバー還元 申請手続きの方法/スマートフォンの場合】
1・専用アプリをインストールする(※3)
2・パスワードを入力する(マイナンバーカード受け取り時に設定した4ケタの暗証番号)
3・マイナンバーカードの内容をスマートフォンで読み取る
4・マイキーIDが発行されたら、利用する決済サービス(1種類のみ)の情報を登録する
(※3)現時点ではAndroid端末の適合機種のみ対応。iOS端末用のアプリは順次開発予定

マイナンバー還元の手続きはハードルが高すぎる?

新たな還元制度で注意したいのは、先述した申請手続きを自分で行わないと、マイナンバーカードを持っていても還元の対象にならないことだ。もちろん、施行期間(2020年9月~2021年3月まで)が過ぎてから手続きをしても無効となる。

とはいえ、ここまで煩雑な手続きが必要となると、それだけで利用をあきらめてしまう人も多いのではないだろうか。とくに、スマートフォンやパソコンを使い慣れない高齢者が、これらの面倒な手続きを難なくこなせるとは到底思えない。しかも、パソコンから手続きをするためには、公的個人認証サービス対応の高機能なICカードリーダーを購入する必要があり、専用サイトに対応するOSやブラウザ、スマートフォンの機種もごく一部に限られている。

いずれにしても、マイナンバー還元の恩恵にあずかるためには、それ相当のITスキルとデジタル機器が必須となることは間違いないだろう。筆者自身、パソコンやスマートフォンはそれなりに使い慣れているが、対応する機種端末やカードリーダーを所有しておらず、その時点でもうNGである。

マイナンバーカードの普及率は約14%と低迷

そもそも、マイナンバー制度が始まったのは2016年1月のこと。以来、政府は行政の効率化や社会生活の利便性向上をアピールし、書類交付や納税などの電子証明にも使えるカードの普及にも力を入れてきた。

しかし、昨年11月時点のカード発行枚数は約1823万枚にとどまり、普及率は14.3%(国民10人に対して約1.4人)と低迷している。また、一昨年秋の内閣府の世論調査では、53%の人が「今後もカードを取得する予定がない」と回答。その多くが、取得しない理由について「必要性が感じられない」「個人情報の漏えいが心配」と答えており、利便性への疑問や安全性に対する不信感は根強い。

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ネット上ではマイナンバー還元に対する批判の声も

こうした中、政府はマイナンバーカードの利用に金銭的なメリットをヒモ付けることで、普及への起爆剤としたい考えだが、早くもネット上では、マイナンバー還元に対する批判の声も多く上がっているようだ。たとえば……

◎マイナンバーカードの将来的なメリットが見えない。一時しのぎにお金をばらまいて、後からツケを回すのは勘弁してほしい。

◎消費増税の目的は、国の膨大な借金を減らし、負担の先送りに歯止めをかけることだ。巨額の国費を投じた還元事業で、大盤振る舞いするのは本末転倒。

◎カードを普及させるために必要なのは、買い物ですぐになくなるポイントではなく、誰もが安心・永続的に利用できる行政サービスを拡大し、国民の理解と利便性を高めることではないか。

……たしかに、どの意見も正論である。

国の政策にも“お得感”が求められる時代に?

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一方で、還元制度にどんな狙いがあるにせよ、とりあえず家計を助けてくれるのは大歓迎という人も多いだろう。現行のキャッシュレス・ポイント制度の効果でもわかる通り、結局のところ“お得感”がなければ国民は動かないのである。ポイント還元を目玉に打ち出す政府の方策も、そうした意味では的を射ているのかもしれない。
ただし、マイナンバー還元の煩雑すぎる申請手続きについては、施行前に改善するべきだろう。デジタル知識・対応機器がないなどの理由で手続き自体ができず、利用をあきらめる人が続出すれば、これまた本末転倒である。

いずれにしても、マイナンバー還元制度は今年9月から始まる予定だ。この新政策に対して、国民の多くがどのように受け止め、実際にどれだけの人が利用するかは未知数だが……はたして皆さんはどう判断するだろうか。

※参考/内閣府HP、日本経済新聞、朝日新聞

≪記事作成ライター:菱沼真理奈≫  
20年以上にわたり、企業・商品広告のコピーや、女性誌・ビジネス誌・各種サイトなどの記事を執筆。長年の取材・ライティング経験から、金融・教育・社会経済・医療介護・グルメ・カルチャー・ファッション関連まで、幅広くオールマイティに対応。 好きな言葉は「ありがとう」。


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