一向に解決しない待機児童問題。保育士の給料が日本の将来を左右する!?


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2016年2月15日にアップされた「保育園落ちた日本死ね!!!」という匿名のブログ。
そのメッセージはSNSでみるみる広まり、国会でも取り上げられて政権与党を追求する材料となるなど、大きな出来事に発展しましたね。

「日本死ね」という過激な叫びが、反感以上に共感を集めた(だからこそ猛烈に拡散した)背後には、「女性活躍社会などと言っておきながら、保育園の待機児童問題は一向に解決していないではないか!」という憤懣が渦巻いているわけです。
 

東京での保育園経営は“採算”が取れない

 
ではなぜ、待機児童問題は一向に解決しないのか。そこでよく調べてみると、この待機児童問題は日本全体の問題ではなく、地域によって大差があることがわかります。
厚生労働省の調査によると、平成27年4月現在の都道府県別待機児童数は東京都が7814人とダントツで、1000人以上は埼玉、千葉、大阪、沖縄の4府県。
一方、“待機児童ゼロ”が青森、山形、群馬など10県あるほか、100人未満の県もさらに12府県あります。

保育園が足りていないのは、建設計画が明らかになると近所の住民から「子どもの声がうるさい」と反対運動が起きるなどという問題もありますが、一番の問題は“採算性”といわれています。

保育園には、国の認可を満たす「認可保育所」と、満たさない「認可外(無認可)保育所」に分かれます。
認可の場合は、0歳児を預ろうとすると子ども1人あたり3.3㎡のスペースと、子ども3人につき1人の保育士が必要です。
民間が土地代の高い東京に保育園をつくっても、採算が取れないのです。
現に、保育園の運営主体の93.3%は、課税面などで優遇されている社会福祉法人です(東京商工リサーチ調べ)。

保育園の収入源は、国や都道府県や市区町村からの補助金が大半を占めています(そのうち一定の割合が保育料の補助金として保護者に支給され、保護者経由で保育園に入る)。
ですから、保育園の収入を上げるには補助金か保護者からの保育料(平均月額2万円強)を上げるしかありません。
しかし、補助金の財源は税金であり増やすのは至難、保育料アップもそもそも母親が家計のために預けて働くわけですから、これも至難とあいなります。

(やや飛躍しますが)だからこそ、なるべくコストを削減するために保育士の給料は安く、したがって成り手が不足し、受け入れ態勢が整わず、保育園が足りなくなるのです。
 

保育士の給料は平均より10万円安の厳しい現実

 
では、保育士の給料はいくらぐらいなのか。

厚生労働省の「平成27年賃金構造基本統計調査」によると、約22万円です。
全産業平均は33万円強ですから、マイナス11万円。
医師(約85万円)や弁護士(約82万円)の4分の1、システムエンジニア(約40万円)の半分強という低さです。

ちなみに、ホームヘルパー(22万5000円)や福祉施設介護員(22万円強)と介護系も同様です。この待遇が大きな要因となって、保育士は2017年度までに約9万人、介護職員は2020年には約25万人も不足すると予測されています。

そこで、「保育園落ちた日本死ね!!!」と国会でも突き上げられた政府・与党は、4月26日、2017年度から保育士の給与を平均6000円アップするという方針を発表、保育士の人材確保策を打ち出しました。
「苦肉の策」ともいわれていますが、しかし、保育士の確保と待機児童の解消は待ったなしです。

安倍政権が「1億総活躍社会」と打ち出しているのは、労働力の不足が日本経済の足を引っ張るという深刻な問題があるから。そこで、育児中の女性の就労も促進しなければならないのです。
その決め手は、子どもを保育園に預けられること。この問題は、少子化の阻止にも連動します。日本経済を沈み込ませないためには、少子化阻止と女性の就労は不可欠。
── つまり、「保育士の給料が日本の将来を左右する」といえるのです。
 

≪記事作成ライター:髙橋光二≫
フリーライター・エディター。1958年、東京都生まれ。1981年、多摩美術大学デザイン科卒業後、㈱日本リクルートセンター(現・㈱リクルートキャリア)入社。2000年、独立して現職。主に経営者インタビュー、コンテンツマーケティング、キャリアデザインなどの分野で編集・執筆。


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