英国国民投票近づきリスク回避志向の金融市場 


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EU離脱の是非を問う国民投票が6月23日と来週に迫っています。先月まではEUに残留するのではとの世論調査もあり、楽観視されていました。それがここに来て世論調査の結果は、離脱派が優勢のようです。昨日も英大衆紙サンの世論調査では、残留46%、離脱45%と残留支持のリードが縮まっています。週末発表の世論調査では、離脱派優勢の結果が出るなど、結果が読めない状況になりつつあるようです。

 

選挙戦の争点は移民問題

 
今回の選挙戦の争点は移民の問題が大きく関わっているようです。住宅問題、公共サービス、教育問題そして雇用問題が難民受け入れの影響を受けていると英国民は考えるようになってきています。その不満をジョンソン前ロンドン市長が国民に訴えかけることで、それに迎合する意見が離脱派を勢いづけているように思います。英社会でも身近な問題が人々の関心を呼ぶ傾向にあります。従ってキャメロン首相以下政府内にはいら立ちが目立ちます。しかし仮にEU離脱の結果になっても、実際には2年程の手続き期間を要します。直ぐには影響が出てこないが、投資家の心理的恐怖感は高まります。

 

金融市場に不安感 リスク回避の行動が鮮明に

 
英国がEUから離脱するのではとの観測が、先週からは大きく金融市場に不安感、つまりリスク回避の行動として鮮明になってきています。為替ではポンド/ドルで最近の高値1.47台から1.4200を下回るポンド安が続いています。当面2月下旬示現の今年安値の1.3834方向へ向かうことが予想され、その前に1.4000の心理的節目を目指すのではと思います。

リスク回避の行動の結果、円とスイスフランに資金流入が明確となっており、円は地理的に離れていること、経済的に英国とのつながりがないことから買われ、スイスフランは歴史的に中立と言うことで買われる傾向が見られます。ポンド/円でも、150円台と年初の175円台から大きく円高方向に傾いています。6月23日の英国民投票までは、世論調査の報道に一喜一憂しながら、リスク回避の円高傾向が続くのではと推測されます。

 

リスク回避の安全債券市場に資金が流入

 
海外債券市場では、米10年債1.61%と依然として利回り低下の動きに歯止めがかかっていません。2.00%は次第に遠くなりつつあります。
また欧州債券市場では、独連邦債10年-0.01%と初めてマイナス体系になりました。リスク回避の安全債券市場に資金が流れ込む状態が続いていると言えます。英10年ギルト債1.14%とこちらも利回り低下気味と言えます。
反対に、古傷を負うギリシャは10年債10年8.21%、再総選挙が迫るスペインでは10年債1.57%、政権の脆弱性が指摘されるポルトガルは10年債3.39%と、今週からの利回り上昇が著しく、南欧諸国債券売りが今週から始まったようです。リスク回避行動の典型と言えます。日本国債10年-0.18%と安全資産と言われる日本国債にも資金流入する傾向にあります。日銀が金融緩和政策を続ける限り、金利低位安定と言う要因も働くことになります。

 

株式市場は下落傾向

 
株式市場でもリスク回避志向に向かう傾向が続きます。株式市場の資金を債券市場、もしくはMRFなどキャッシュに資金を一時的に滞留させる傾向が見られます。震源地の欧州では、英株式市場FTと独株式市場DAXは軒並み大幅下落の動きとなっています。
日米の株式市場では、昨日現在ダウ平均17,674.82と18,000台は届くようで届いていません。FRB(米連邦準備理事会)の利上げ見送り観測が米株価には追い風となっているようですが、英国民投票、そして原油価格、中国経済など不透明要因があり、大きくは上伸しない状況となっています。
日本でもご多分に漏れず、世界経済に大きく左右される状況です。こちらも英国民投票で英国がEU離脱となるのではとの恐怖感があるため、そして円高傾向が日本経済には悪影響があるのではとの懸念から、下落傾向が続いています。英国がEU離脱となると日本のGDP(国内総生産)0.1~0.8%下押し(みずほ総合研究所)との試算が今日の日経新聞で紹介されており、実際に景気悪化の要因として意識されそうです。現在16,000円前後の水準の日経平均ですが、こちらも今年2月最安値水準の15,000円台まで下押しするのは、あるいはこの水準を下回るのではとの懸念があります。
リスク回避行動が現在の金融市場の動きであり、債券市場、あるいはキャッシュに資金を滞留させ、英国民投票の結果を見守り、結果が明確になってから行動することが必要なようです。

 

国内で帰結するクラウドファンディングは投資の選択肢として有効

 
このような金融情勢の中では、クラウドファンディング投資を選択肢に加えることは有効なように思います。
投資家のリスク回避行動が強まる中、高利回りの投資機会は内外ともに限界があります。そのような状況下で、不動産や再生可能エネルギーなど国内で帰結する案件が多い投資型クラウドファンディングは、日々刻々と変化するグローバルな金融市場に大きく左右されず、中期的インカムゲインが得やすいと言えます。優先劣後構造の劣後部分に投資するクラウドファンディングでは、優先部分よりはリスクを伴いますが、優先部分よりも多くのインカムゲインが期待できます。
グローバルな金融市場が不安定になっても、国内の不動産需要は非常に強い市況が続いています。リスク回避行動を取る投資家が多くなるほど、クラウドファンディングはその利回り確保の観点から投資の選択肢として有効ではと思います。

 

≪記事作成ライター:国際金融アナリスト 水谷文雄≫
スイス銀行(現UBS銀行)にて20年余に亘り外国為替及び金利・債券市場部門で活躍。1980年代の為替相場大変動期の為替市場を体験する数少ない為替ディーラー。ファンダメンタルズ分析、特に欧州諸国で強みを発揮し、テクニカル分析においても定評を得る。ほぼ全部門に精通する国際金融のプロフェッショナル。
プライベートではスペインとの関わりを深く持つ文化人でもあり、スペイン情報発信センターをインターネット上で主催。スペインと日本の文化・経済交流を夢見るロマンティストでもある。


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