年金制度〈超〉入門 その1 ── 複雑な制度


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「景気は改善しつつある」という政府の発表を実感している人は、そう多くないでしょう。
ここ20年、私たちの経済状況への一般の「不安」は常態化しているとも言え、現在の経済ばかりではなく、私たちの不安は将来にも向けられています。

「将来、年金は果たしてもらえるのだろうか?」……。
この問いに明快に答えることのできる人はいないでしょう。
せめて、年金制度を少しでも理解するために、あらためて整理してみましょう。
 

年金制度のわかりにくさ

 
年金制度がわかりにくいのは、日本の年金制度が職業別に分かれており、運営方法やその仕組が年金ごとにまったくバラバラなことがあげられるでしょう。
加えて、年金制度はしょっちゅう改正されています。

2012年には社会保障と税の一体化をにらんで年金改革関連法案が成立しましたが、こうした改革によって制度が変更されます。
そのたびに難解な用語がひんぱんに持ちだされ、一般の人々にとって、新聞を読んでいるだけではとても理解できないというのが現状です。

自営業とサラリーマンは加入している制度がまったく別で、保険料の額も異なっているし、受け取る年金額も異なります。
サラリーマンは、保険料が会社から天引きされるので、制度に対する理解がなくても、意識することが少ないかもしれません。しかし、サラリーマンの人も不安を感じている人は多いことでしょう。
「年金は果たしてもらえるのだろうか?」「保険料を払う価値があるのだろうか?」
「日本の年金制度は崩壊するのではないだろうか?」
……でも、制度を理解しようとしても、結局よくわからない。
 

公的年金と私的年金

 
まず、年金には大きな枠組として「公的年金」「私的年金」の二種類があります。
公的年金は、国が運営するもの。以前は社会保険庁が管理運営していましたが、記憶に新しい年金記録問題などの問題が表面化し、現在では日本年金機構が運営しています。
私的年金の中には、企業が従業員のために運営する企業年金や民間の保険会社・金融会社などが提供する個人年金、そして自営業者のための国民年金基金などがあります。

ところが、この区分は、運営主体が誰であるかという問題にとどまりません。
年金の運営には、おおまかに二つの方式があります。現役時代に保険料を積み立てて老後になったら受け取ることができる年金を「積立方式」と呼びます。

一方で、現役世代の支払った保険料を現在の高齢者の年金を支払うために使う方式を「賦課方式」と呼びます。
つまり、その年に支払う給付金をその年に支払われた保険料でまかなう方法です。保険料は現役の若い世代が担い、給付金は高齢者に支払われます。よく言われるところの「世代間の助けあい」です。

賦課方式のみで運営されている私的年金は存在しませんが、国の運営する公的年金は基本的に賦課方式で運営されています。
 

賦課方式と少子高齢化

 
ここに大きな問題が存在します。
賦課方式は、人口が順調に増えて、経済状態が悪化しないことが将来も維持できれば、年金制度は破綻しません。
ところが、誰もが知る通り、現在の日本は世界に類を見ないほど急速に進む少子高齢化社会です。
日本の生産年齢人口(15歳から64歳までの労働によって国の経済成長に貢献し、保険料を納める人口)は、2030年には約6700万人程度となると予測されています(2013年「人口統計資料集」による推計値)。

年金に即して考えると、生産年齢人口が減っていくということは何を意味しているでしょうか。

賦課方式の年金制度では、若い人によって高齢者を支えますが、生産年齢人口が減っていけば、若い人の保険料負担が大きくなっていきます。
つまり、これまで10人で一人の高齢者を支えていたのが、極端な場合、一人で一人を支えていかねばならないことになります。保険料は10倍です。
実は、これは「極端な場合」ではなく、2030年には約1.8人で一人を扶養することになると考えられているのです。

── なんとも憂鬱な話ですが、年金制度が危ないと考えられているのには、この制度の問題が大きく関係しているようなのです。
 
 

≪記事作成ライター:帰路游可比古[きろ・ゆかひこ]≫
福岡県生まれ。フリーランス編集者・ライター。専門は文字文化だが、現代美術や音楽にも関心が強い。30年ぶりにピアノの稽古を始めた。生きているうちにバッハの「シンフォニア」を弾けるようになりたい。


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