にゃんとも驚く猫ブーム! “ネコノミクス”なる経済効果たるや、いかに?


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ちまたには猫グッズがあふれ、TVや映画でも猫が大活躍。書店には猫特集を組んだ雑誌が平積みになり、飼育数でも来年には犬を追い越しそうな勢いの猫・ネコ・ねこ!

平成の猫ブームといっても、いきなり始まったわけではありません。
もとはといえば、猫駅長のタマがきっかけではないでしょうか。和歌山電鐵貴志駅で駅長に任命され、全国的な話題に。
そこにSNSが拍車をかけ、猫の写真や動画が手軽に配信されることで人々はあらためて猫のカワイさに気付き、人気が上昇していったようです。

相次いで出版される猫の写真集やカレンダー、猫グッズでは飽き足らず、ついには愛猫を腕に抱く……、そんな猫ブームが経済におよぼす影響とは、いったいどのくらいなのでしょうか。
 

ペット首位の座を犬から奪う日も近い?

 
団塊の世代がリタイアを迎えた2007年頃にもペットブームが話題になりましたが、その主役は犬でした。それから10年近くが経ち、ワンちゃんたちも年をとってきます。
ペットフード協会の集計では2008年の約1310万頭から、2015年には約991万7000頭へと24%も減ってしまいました。飼い主も高齢になり、健康のためにと始めた愛犬との散歩が苦になり始めただけでなく、新たに犬を飼うことを控える人も多いと思われます。

一方、家の中で手軽に飼育ができ、散歩もトイレのしつけも不要な猫。マンション住まいやひとり暮らしにもピッタリだと、じわじわと人気が出始めました。飼育数は2015年には987万4000匹まで増えています。

さらに注目したいのは、現在飼育されている犬と猫の年齢構成です。
犬は高齢期とされる7歳以上の割合が54.6%と過半数を越え高齢化が進んでいるのに対し、猫は6歳以下が54.4%とまだ若年層が多い模様。猫専門にくら替えしたペットショップは売り上げが20%も増えたという話もあるほどです。

犬と猫の飼育数の差はわずかに4万3000。これが逆転し、ペット首位の座を猫が奪う日もそう遠くはないかもしれません。
 

ネコノミクスの経済効果は世界60位の国家予算並み

 
アベノミクスならぬ“ネコノミクス”という新たな経済用語(?)が生まれ、昨年あたりからメディアを賑わせています。
空前の猫ブームを受けて、その経済効果を安倍政権の経済政策になぞらえたもので、関西大学の宮本勝浩名誉教授の試算によれば、ネコノミクスの総額はなんと2兆3162億円にものぼるといいます。
この額は、スロベニアやナイジェリアなど世界60位程度の国家予算にも匹敵するといいますから、実に驚きですね。

宮本教授はその経済効果を餌代や医療費、猫グッズの売り上げなどの直接効果と、そこから派生する波及効果から計算されると説いています。
一匹の猫にかかる飼育費用がキャットフードや猫砂、ペット保険などで約11万1424円、これに2015年の飼育数を掛けると約1兆1002億円になります。

また、島の人口を超える猫の数が猫好きを魅了し、観光誘致となっている各地の「猫島」や、「猫の細道」で全国からマニアが訪れる猫のまち、尾道など、観光分野での直接効果を約40億円と推計。

加えて、NHKの人気テレビ番組『岩合光昭の世界ネコ歩き』など、猫に関係するDVDや写真集、本の売り上げで約30億円に。
その他、猫と同じ空間で癒されると人気が集まり、全国で200店舗以上といわれる「猫カフェ」などもあります
これらを加えると、猫が経済にもたらす直接効果の総計は1兆1072億円余りになる計算です。

さらに宮本教授が計算するのは、直接効果から生まれる間接的な効果。
キャットフードの売り上げが増えれば、容器を作るメーカーの売り上げが増えます。また、ペットの販売が増大すれば、ペットショップやブリーダーの社員の給料も上がって消費を押し上げる、というわけです。
こうした波及効果をすべて総計すると、ネコノミクスの経済効果は実に2兆円を超えるという試算も。
 

猫は一日12時間労働ってホント?

 
猫好きにとって癒しの場となっている猫カフェですが、「猫を夜遅くまで働かせてよいのか」という問題に決着がつきそうになってきました。
先ごろ環境省の中央環境審議会動物愛護部会は、猫カフェが夜10時まで営業できるよう動物愛護法の施行規則などを改正する答申案を承認したのです。

動物愛護法では動物の展示を午前8時から午後8時に定めていますが、猫カフェの業界団体から「猫は夜行性だ」という申し入れを受け、暫定措置として夜10時までの営業を認めていました。
そこに、猫の一日の労働時間を12時間以内に限定する条項を新たに設けたうえ、規則を改めて恒久的な規制緩和をすることになったものです。

一日12時間労働とは、猫がちょっと可哀そうな気もしますが、猫が寝ていようとじゃれあっていようと人からは可愛がってもらえるのですから、あまり問題はなさそうですね。
 

猫も杓子も猫ざんまい! 飼い主は最後まで責任を持って!

 
2016年秋冬のパリ・コレではロエベをはじめ、多くのブランドで猫トレンドがランウエイに登場しています。まさに、日本だけでなく世界中が猫も杓子も“猫ざんまい”の状況のよう。
そんな空前の猫ブームをさまざまな視点からとらえてみましたが、最後にひとつだけ考えてほしいことがあります。

環境省の統計資料によると、平成26(2014)年度に殺処分された猫は7万9745匹にものぼりました。問題なのは飼い主から引きとった数が2万4385匹もいること。ペットフードや飼育環境のよさから思いがけず猫の寿命が延びている一方、飼い主の病気や高齢化により飼い続けることができず、やむなく手放したケースも多いようです。

猫はわがままで気まぐれ。決して従順ではなくツンデレなところがまた可愛い。そして、何より人間にとっては身近な動物で、癒される存在です。
猫ブームのいま、猫を飼い始めようとする人は一時の思いだけではなく、その子の命を最後まで預かる責任があることを理解したうえで、腕に抱いてほしいと思います。
 
 

≪記事作成ライター:山本義彦≫
東京在住。航空会社を定年退職後、学校に通って介護資格を取得。現在は介護福祉士として勤務する日々。オペラをこよなく愛し、航空会社在職中より始めた音楽評論の執筆も継続している。


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