スポーツイベントでよく聞く「オフィシャルサプライヤー」とは?(後編)


クラウドファンディング,ソーシャルレンディング,マネセツ

前回に続き、今回も「オフィシャルサプライヤー」についてのお話を取り上げます。

スポーツイベントなどにおいて、運営組織や選手団に物品を提供し、その見返りにイベントのロゴやエンブレムなどを使用する権利を得た企業が、すなわち「オフィシャルサプライヤー」です。
巨大化するオリンピック、その中でオフィシャルサプライヤーがどのような成長を遂げていったのかを振り返ります。
 

大会規模は拡大する一方。財源はどうしたらいい?

 
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大規模なスポーツイベントに付き物の、「大会ロゴ」や「大会エンブレム」「マスコット」。これらを利用した「オフィシャル○○」などが出回るのは、多くの方がご存知ではないかと思います。
こうした、「大会エンブレムの商業利用」「マスコットのグッズ販売」がスタートしたのは、
1972年のミュンヘン五輪でした。
その背景にあるのは、拡大する一方の「大会規模」です。オリンピックを運営するためには「税金など公的な資金の投入」または「商業化」が避けられない情勢となっていったのです。
 

「オフィシャルサプライヤー」方式、いよいよ登場

 
1976年のモントリオール五輪は、多くの公的資金が投入されたにもかかわらず、巨額の赤字を残したオリンピックとして知られています。
スタジアムの建設費がかさんだことが主な原因とされていますが、テロ事件などの影響で監視カメラや金属探知機を設置する費用がかさんだためとも言われます。

そして、「大会オフィシャルサプライヤー」方式が確立されるきっかけとなったのも、このモントリオール五輪なのです。
飲料や食品、シューズ、計測機器、自動車などのメーカーが「オフィシャルサプライヤー」に名乗りを上げました。
サプライヤーとなった企業は、自社の広告に大会ロゴやエンブレムを使用したり、大会オフィシャル商品として商品の提供ができるように。この方式が現在も続いており、大会スポンサーや放映権料などと並んで、大きな収入をもたらしています。
 

何かと評判が悪い(?)ロサンゼルス五輪、実は……

 

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ロサンゼルスには既存のスポーツ施設が多数あり、支出を抑えることができた

ちなみに、公的資金を導入して失敗したモントリオールを反面教師に、黒字運営を成し遂げたのが1984年のロサンゼルス五輪です。
住民投票により税金投入が禁じられたこともあり、大会運営は「完全民営化」。放映権料やスポンサー料の収入は過去最高と、商業的に成功したオリンピックとして今も賛否両論の対象となっている大会ですね。
入場券の売り上げが好調だったのも黒字の原因といわれますが、実は最大の要因は「支出の縮小」。ロサンゼルス周辺には既存のスポーツ施設が豊富にあるため、スタジアムなどを新たに建設する必要がほとんどなかったのです。

何をするにもお金が必要な現代社会。しかし、スポーツの理想的な姿を追い求め、近代オリンピックを創設したクーベルタン男爵の思いも忘れたくないものです。
来たる2020年、私たちはどんな時代を迎えているのでしょうか。そして、その中で何をなすべきなのでしょうか。今から考えておくことが、大切なのかもしれません。

参考:小川勝「オリンピックと商業主義」(集英社新書)
 
 

《記事作成ライター:奥田ユキコ》
生まれも育ちも東京のライター。教育や語学、キャリア、進学、サイエンス、生活の雑学、ライフスタイルなどをテーマに、雑誌や広報誌、ウェブなどの記事を手がけています。「マネセツ」では、主にスポーツと「お金」にクローズアップした記事を書いていきたいと思います。


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