FM局のCMは、いつから「カネカネカネ」になった?


Radio host mixing with a table


 

筆者は現在50代。10代のころからFM放送といえば“大人の音楽への入り口”であり、憧れ的な存在でした。

ポップスはもちろん、ロック、ジャズ、そしてジェットストリームのポール・モーリア・グランド・オーケストラや、リチャード・クレイダーマンまで……。
何より、大人のテイストに満ちた番組からは常に耳に心地よい音楽が提供され、FM放送を通して様々なアーティスト、楽曲との出会いがありました。しかし、そんな “FM放送らしさ”はいまも健在ではあるものの、“FM放送らしさ”を損なう「ある様変わり」に、みなさんお気づきではないでしょうか。それは、筆者にとって非常に耳障りなFM局のCMなのです。

 

CMまで厳選されていた80〜90年代

 

あの頃のFM放送には、著名な企業が番組を提供するとともに、カッコいいCMがたくさん流れていました。例えば、オーディオメーカーが提供する「ダイヤトーンポップスベストテン」、サントリーが提供する「サウンドマーケット」、そして、JALが提供する「ジェットストリーム」……。同じ世代の人であれば、「ああ、覚えてる!」と共感される方も多いことでしょう。
それはもう番組だけでなくCMまでもが心地よく、ときに、カッコよかったりしたものです。そのころのFM局には、「われわれはAM局とは違って音楽シーンを提供している、それを邪魔するものはリスナーに提供しない」というプライドのようなものがあったと思うのです。

 

過払い金請求、パチンコ、車買い取り……

 

ところが今は……。10分に一度は必ず流れる過払い金請求のCMを聞いて、不愉快に思うのは筆者だけでしょうか。SNSや掲示板を見ると、過払い金請求のCMは「公害」という表現まであります。しかし資本主義社会ですから、タダで聞いている以上、CMは選べない、ということは理解しているつもりでいます。しかしあまりにも間が悪いと思うのです。

筆者は千葉に住んでいるので、Bay FM(FM 78.0MHz)をよく聞きます。東日本大震災復興祈念番組と銘打った番組の中で、「一人ひとりの協力が」と心温まるコメントを言っているDJが、突然のっぺらぼうな声で「ここで過払い金の~」とCMコメントを読み上げ始める。DJ氏もきっと好んでいるわけではないのでしょうが、それはやはり仕事ですからね。
さらにBay FM主催による、幕張で行われたゴールデンウィーク中のフリーマーケットのスポンサーは、大手パチンコチェーン。子どもの日でしたので、アナウンサーたちは「子どもたちの明るい未来がどうのこうの」と、スポンサーのパチンコ企業を絡めながら連呼します。「え? 子ども? パチンコ、なんのこっちゃ」と思うのは筆者だけではなかったはずです。そして、車買い取り。これも最近やけに多いですが、いったいなんでそんなに儲かるのでしょうか。まあ、それはさておき、いずれにせよどのCMも、音楽性はおろか、デリカシーのかけらも感じられず、「カネカネカネ」のオンパレード。FM放送愛聴家の一人としては寂しい限りです(筆者個人の感想です)。

 

どんどん減っていくラジオの広告収入

 

 

総務省の資料を見てみると、平成10(1998)年から、平成26(2014)年までの民間ラジオ(AMラジオも含む)の広告収入の推移は、図のように平成5(1993)年の2113億円から、平成26(2014)年の1272億円まで、ほぼ右肩下がりを続けています。ピークの平成9(1997)年からは、約1000億円減、ほぼ半減ですね。

一方で、インターネット広告は、平成5(1993)年にほぼゼロだったものが平成16(2004)年に1814億円と、ラジオに追いつき、そこからはさらに加速して急成長、2016年には1兆円を超える市場に成長しています。何よりもYouTubeの登場など、ラジオを取り巻く環境は厳しさを増す一方の環境下で、FM各局が過払い金請求やパチンコなどの広告に大きく救われてきた側面もあるのでしょう。

 

今度は、平成5(1993)年を100とした時のAM局を含まず、FM局単体で見た売上高の推移のグラフを見てください。平成22(2010)年まで減り続けた売上高は、その後少し持ち直しています。感覚的ではありますが、このころからFM局のCMの内容が変わっていったような気がするのです。つまり「カネカネカネ」の下品な(個人的な感想です)CMに大きく舵を切ったことが、売り上げに大きく影響しているのではないでしょうか。

 

懸命の努力が続くFM局

 

ラジオを聞く方ならすでにお気づきのことだと思いますが、過払い金請求の最大手の司法事務所が、代表退任を機に4月以降のCMから手を引いたので、リスナー側にすれば、聞いていてもいくぶん、イライラしなくなりました。おそらく、過払い金請求でぼろ儲けできる時期はもう過ぎたと判断したのでしょう(個人的な感想です)。

しかし、大口のスポンサーを失ったFMラジオ局の経営環境はさらに厳しくなることが予想されます。その一方で、インターネットで首都圏のラジオがいつでも視聴できる「radiko」の登場など、各局の懸命な試行錯誤が続いています。
クルマを運転している時、家事をしている時、何かをしながら心の安寧をもたらしてくれるFMラジオは、何時の世も貴重な存在です。どんどん新しい試みをして、なんとか生き残ってほしいものです。

≪記事作成ライター:前田英彦≫
同志社大学工学部(現理工学部)出身。株式会社リクルートに11年間在籍、広報室マネジャーなどを経て独立。数々の起業家、創業経営者との出会いを通して、日々成長中。独立時に設立した会社は現在18期目を迎えている。「『レジを打ったことのない人間に小売りの何がわかる!』と流通業の顧客に言われたことがきっかけで、たい焼き屋も展開。大学を卒業して30年。突如理系仕事に目覚め、最近では製造業の職人になってしまったという噂も。ダルメシアン、テニス、ゆで卵を愛す。


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