“CM枠の視聴率買い”から、「テレビ業界は斜陽産業か」を考えてみる


テレビ映像イメージ
筆者の同級生に、テレビ局の技術部門で偉くなった人がいます。

友人である彼は、10年ほど前から「テレビ業界は斜陽産業」と公言してはばからず、「その証左として“CM枠の視聴率買い”が増えたという事実がある」と語ります。
そして視聴率買いは、テレビ局側よりもスポンサー側に有利な契約になることが多いのだそうです。
“視聴率買い”。これは、どういった意味なのでしょうか。ここ20年くらいのテレビCMの変遷を振り返りながら考えてみましょう。

 

激減した、テレビCMの一社提供

 

アラフィフ世代以上の方ならおわかりいただけると思うのですが、20年ほど前までは「明日をつくる技術の東芝」というキャッチフレーズが、長寿番組『サザエさん』のタイトルコールの前に必ず流れていました。同様に月曜日の夜ともなれば、「♪明るいナショナル」という歌声の後に時代劇が始まる……、それが定番でした。
『サザエさん』の協賛スポンサーであった東芝は1998年に、「ナショナル劇場」のパナソニックは2013年にそれぞれ一社提供を断念し、複数社提供に移行。これはなぜかというと、1社で莫大なCM提供費用をまかないきれなくなったからといえます。

 

かつての花形番組も、CM枠が埋まらなくなり……

 

そして、「プロ野球中継」が地上波からほとんど姿を消してひさしいのも、テレビを語るうえで大きな変化といえます。野球中継がほとんど姿を消す前に短期間ではありましたが、9時以降の延長放送がなくなりました。どんなに息をのむ接戦であっても、人気の4番打者がネクストバッターズサークルに入っても、8時50分頃に放送が終わってしまったわけです。結果、プロ野球の視聴率の低迷。
そうなった背景には、BS・CSなどの専門チャンネルが増加したことで、そちらに野球中継が移行したことも理由のひとつですが、そもそも、人気があるならば地上波に残るはず。
ではどうして、地上波から野球中継が消えたかと言うと、ズバリ「ジャイアンツでは視聴率が取れなくなった」からといえます。時同じく、サッカー熱が高まったことも要因のひとつといえるでしょう。

以前は、後に放映されるドラマのスポンサーが、延長枠のスポンサーを引き受けるなどの措置が取られていましたが、スポンサー側にしてみれば「プロ野球ではなく、当社はドラマのスポンサーをしたのであって……」と本意ではなかったはず。当然、CM枠を引き受けるスポンサーがいなければ延長はできませんので、必然的に野球中継が地上波から姿を消すことになったのです。

 

スポットCMの「視聴率買い」に頼るテレビ局

 

「♪ピアノ売ってちょーだい」のメロディで知られる某企業のCMを見たことがない人はいませんね。
ロングセラー(?)ともいえる長寿CMに、「そんなに儲かってるの?」という声もちらほら聞こえてきますが、それはここでは置いておくとして……。
人気のテレビ番組『マツコの知らない世界』の中でマツコさんが、「CM枠が埋まらなかった時、同社社長に頼みに行くと、『おおそうか』と言ってCMを出稿してくださる。そのおかげでテレビ業界は助けられている」と話していました。

このマツコさん一言は、きっと筆者の同級生が言った「視聴率買い」と同じことではないでしょうか。「視聴率買い」とはその名の通り、スポンサーがテレビ局の視聴率に応じてCM枠を買うもの。
たとえば、視聴率を30%買ったとすると、テレビ局には30%に達するまでCMを流す義務があります。例えば視聴率1%の深夜枠なら30回。10%の夜間枠なら3回という具合です。ここは筆者の想像にすぎませんが、「♪ピアノ売ってちょーだい」の社長さんは、たくさん視聴率を買ってくださる方なのでしょう。

 

“視聴率買い”は、悪循環の始まり!?

 

そして、ここで思い出してほしいのが、筆者の同級生の「“視聴率買い”はテレビ局にとって不利」という言葉です。これをもう少し詳しく説明すると、
「視聴率が取れない → スポンサーがつかない → CM枠が余る → “視聴率買い”で無理して買ってもらう → 約束を果たすために何度もCMを流す → CM枠単価が下がる → 売り上げが下がる → 制作予算が削減される → 番組が面白くなくなる → 視聴率が下がる」
という見事な悪循環に陥る恐れがあるということ。この傾向は、在京キー局より地方局でより顕著だそうです。

消費者金融の業者に、何度も何度も「ご利用は計画的に」と言われた後、司法書士法人に「あなたは利息を払いすぎ」と何度も何度も過払い金を回収しなさいとCMで催促される……なんていう、悪い冗談としか思えない事態は、まさにこの“視聴率買い”の悪循環が為せる業でしょう。
テレビ局に良心があるならば、あんなに節操のないCMを流し続けることをよしとはしないはずですから、それだけ「背に腹は代えられない」ということなのでしょうね。
 

マネセツ144(前田)テレビ局は斜陽産業か/サブ画像① 

 

テレビを取り巻く環境が激変するなか……

 

もちろん、筆者はテレビが嫌いなわけではありません。大河ドラマ『真田丸』は欠かさず見ますし、火曜ドラマの『逃げ恥』も大好きでした。
でも、同じ顔ぶれの俳優や芸人がとっかえひっかえ登場する様は、毎日同じ料理を出されるのと同じこと。テレビをつけるといつも食傷気味の気分に陥る……という人も多いことでしょう。
とくに、アラフィフ世代以上にとっては、「これは観逃せない!」というドラマも非常に少なくなってきていますし、テレビの前にかじりついて番組放映を待つ若い世代が少なくなってきていることも確かな事実。

さらに、「2時間枠、3時間枠が増えて、出ている人は同じ芸人、アイドルばかり」「手抜き番組や低俗番組、内輪受けしている番組が増えた」と、大手テレビ局のあり方や番組編成、内容について最近よく話題になりますが、そこはまぁ筆者としては「いやなら見なければいい」に一票を投じたいと思います。

昨今では、ネット専用番組や、オンデマンドで過去に放映された名作ドラマや映画、バラエティ、ライブ、アニメ、スポーツ番組が24時間365日見られますし、2016年10月にはテレビ番組のネット同時配信を全面解禁する方針を総務省が打ち出しています。今後、テレビを取り巻く環境は加速度的に変化していくことでしょう。

── ということで本題です。「埋まらなければ話にならない」のはホテルの部屋もCM枠も同じこと。
このままどんどんCM枠が埋まらなくて無理に埋める事態が続くなら、やはり「テレビ局は斜陽産業」ということになるのではないでしようか。

≪記事作成ライター:前田英彦≫
同志社大学工学部(現理工学部)出身。株式会社リクルートに11年間在籍、広報室マいわネジャーなどを経て独立。数々の起業家、創業経営者との出会いを通して、日々成長中。独立時に設立した会社は現在18期目を迎えている。「『レジを打ったことのない人間に小売りの何がわかる!』と流通業の顧客に言われて悔しかったことがきっかけで、たい焼き屋も展開。大学を卒業して30年。突如理系仕事に目覚め、最近では製造業の職人になってしまったという噂も。ダルメシアン、テニス、ゆで卵を愛す。


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