Amazonとスーパー「ライフ」がタッグを組み、生鮮食品配達を本格稼働!


クラウドファンディング,ソーシャルレンディング,マネセツ

いわずと知れたネット通販の巨人「Amazon」が、いよいよ日本国内での生鮮食品マーケットに力を入れ始める。

それは、食品最大手のスーパーマーケット「ライフ」と組んで、総菜や野菜などの生鮮品をネットで販売するというもの。
年内は都内の一部地域に限定されるとのことだが、今年に入って新鮮さが命の商品を即日配達(最短2時間)すると発表した、Amazonとライフそれぞれの思惑は!? 
今回は、私たち消費者はもちろん、スーパーや青果店などの業界が注目する提携が、市場や競合にどのような影響を与えるのかについて考察する。

8000品目超の食品を、最短2時間でお届け!

5月末、Amazonジャパンと、食品スーパー大手のライフコーポレーションから業務提携の発表があった。その内容は、Amazonの有料会員向けサービス「プライムナウ」を通して、ライフの店頭で販売されている生鮮食品をネット販売するというもの。

ポイントは以下の通り。
●すでに生活用品などで浸透している会員向けサービスの一環。
●スマホやパソコンで注文を集め、プライムナウ専用の配送システムで自宅に配達。
●注文から自宅に届くまで最短で2時間。
●商品点数は、とりあえずスタート段階で8000点。
●1回ごとの配送料は、現時点では未定。
●今年中に東京都内の一部店舗でサービスを始め、順次対象地域を広げる。

プライムナウは、雑貨類や美容用品などを中心にすでに3万5000品目を取り扱っているが、食品スーパーを出店企業に加えるのは初めて。ライフは単独の食品スーパーとして売上高1位の規模を誇り、大都市圏を中心に計273店舗を持つスーパーチェーンだ。

クラウドファンディング,ソーシャルレンディング,マネセツ

Amazonとライフが提携するメリット

今回の提携によって、Amazonサイドとしてはライフの実店舗を活用し、一気に生鮮食品の扱いを強化したい思惑がある。
一方のライフも、食品スーパー大手とはいえ、実店舗中心では販売網の拡がりには限界があり、Amazonと組むことで、ライフにあまりなじみのなかった地域にも市場を広げることができるメリットがある。

Amazonジャパン社長ジャスパー・チャンは、「ライフがプライムナウに出店してくださることで、生鮮食品をオンラインでお買い求めいただく機会を、より多くのお客様に提供できることになります。Amazonは利便性をさらに高めていきたいと考えています」と、前向きな抱負を語っている。

伸びしろが期待できる生鮮食品のネット通販

最近では、日常生活で使うたいていのものがネットで購入できるようになり、実店舗に出向く必要のない商品も増えている。しかし、そのなかでネット通販が立ち遅れているといわれていた商品群のひとつが、生鮮品を筆頭とした食品市場だ。

クラウドファンディング,ソーシャルレンディング,マネセツ

まず「EC(電子商取引)の市場規模とその割合」を示した、青い棒グラフで構成された図を見てほしい。
これは、商品カテゴリー別のEC(電子商取引)の市場規模とその割合を示したもの。

「雑貨、家具、インテリア」と「生活家電、AV機器、PC・周辺機器等」「衣類、服飾雑貨等」が30%を超えているのに対し、「食品、飲料、酒類」は市場規模こそ1兆5000億円に達する規模であるものの、「EC率」の割合(赤い折れ線グラフ)化にすれば2.6%に過ぎない。極論すれば「食品、飲料、酒類」はほとんどネットで食品は購入されていないことを表すことになり、実際に化粧品や医薬品などよりも割合が低いことに驚かされる人も多いだろう。

食品をネットで購入する人は、圧倒的に少ない25%以下

クラウドファンディング,ソーシャルレンディング,マネセツ

次に、グラフ「ネットと実店舗での購入比率」は、消費者の意識や動向がはっきりうかがえるものになっている。「本・音楽等」はすでに60%以上の人がネットで購入していて、多くの人が実店舗は利用していないことを示している。

それに対して、項目の最下部に位置する「食品」は、他の項目と比較して圧倒的にネットで購入する人が少ないことがわかる。ネットで買う人は25%以下ということはつまり、70%以上の人が実店舗で購入していることを表していることになる。

食品が“おいてきぼり”にされた理由とは?

これほどネット通販が普及しているのに、なぜ、生鮮食品が“おいてきぼり”にされているのだろう。
その理由はいくつか考えられるが、もっとも大きい理由は、生鮮食品はその名の通り「鮮度が命」だからだ。要は、家電や本のように配達までにじっくり待てる商品ではなく、野菜や総菜などは注文してから一刻も早く届けてほしい……というニーズが顕在化している商品だからだ。

「スピード×鮮度」が命の生鮮食品を通販で売るために重要な点は、流通システムの整備だ。翻れば、その点がこれまでの国内通販業者の最大の弱点だったわけだが、今回の提携によってその弱点を米国出身のAmazonが切り崩していくことになる。

ご存じの方も多いと思うが、今回のような大手スーパーの店舗網を活用した配送サービスは、本家・米国でAmazonがすでに実績をつくっている。
2017年に米国大手のスーパーマーケットチェーンの「スーパーホールフーズ」を137億ドル(約1兆5000億円)でAmazonが買収し、「スーパーホールフーズ」の実店舗で販売している生鮮食料品や雑貨を、Amazonの通販サイトアプリで注文できるようになっているのだ。今回は、その米国Amazon版のノウハウを、日本で踏襲することになるわけだ。

クラウドファンディング,ソーシャルレンディング,マネセツ

国内通販サイトも、生鮮食品市場拡大に必死

黒船Amazonに対し、既存の国内ネット通販サイトも、だまって手をこまねいているわけではない。

大手通販サイトの「楽天」は、米国ウォルマートの子会社「西友」と共同で、ネットスーパー「楽天西友ネットスーパー」を立ち上げ、すでに協働運営している。「楽天西友ネットスーパー」では、西友の店舗から生鮮食品や日用品を配送するほか、専用の配送センターを設置。カット野菜や半調理食品・食材がセットになったすぐに調理できる点が魅力の「ミールキット」など、品ぞろえを強化している。

また、Yahoo傘下の「アスクル」は、「セブン&アイホールディングス」と組んで、生鮮食品の通販サイト「IYフレッシュ」をすでに立ち上げており、アスクルの配送システムを利用して、セブンイレブン商品の宅配を進めている。
そのほかローソンなども、ネット通販サイトでの宅配に力を入れ始めている。

単独ではなく、協業という選択をとったライフ

国内の小売業者の多くは、これまで独自のネット通販事業を展開してきたところが多い。
ただ、それらはシステム開発を担うエンジニアの獲得競争が激しくなっている現状に加えて、配達にかかる人出不足によって計画通りに商品を配達できないなど、いざサービスをスタートさせたものの、オペレーションの段階で順調に稼動できないケースが多いのも現実だ。
その一例として、食品スーパー大手「サミット」が2014年にネットスーパーから撤退している。このケースも、単独で事業を軌道に乗せるのは難しい側面が多かったから、といえるだろう。

そこで、Amazonと競合するより、強大な配送網を活用するメリットのほうが大きいと判断したライフ。Amazonもまた、日本企業の合併や買収ではなく、協業という形で米国のモデルをスタートさせる選択をとったことになる。

── 前述のように、食料品のネット販売事業は、他業種と比べて大きく立ち遅れているのが現状だ。巨人Amazonの積極的な事業展開は、国内のネット事業者や流通事業者を大いに刺激するはず。そして今後、競合他社がどのような動きを見せるのか……。私たちの日常に直結するサービスだからこそ、市場拡大が見込まれるジャンルの動向に注視していきたいものだ。

≪記事作成ライター:小松一彦≫
東京在住。長年出版社で雑誌、書籍の編集・原稿執筆を手掛け、昨春退職。現在はフリーとして、さまざまなジャンルの出版プロでユースを手掛けている。


クラウドバンク

Leave a Reply

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です