「同一労働同一賃金」の実現で、正規労働者と非正規労働者の処遇格差はどう解消される?


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2017年1月20日、第193通常国会が召集されました。

安倍晋三首相は施政方針演説のなかで、1億総活躍の国創りにとって最大のチャレンジは「働き方改革」であると明言。「同一労働同一賃金を実現する」と言い切りました。
昨年策定されたガイドライン案に沿った法改正に向けて、早期の立法作業を進める構えです。具体的には労働契約法、パートタイム労働法、労働者派遣法の3法を一括で改正し、2019年度の施行を目指します。

それでは、基本給や各種手当といった賃金や、福利厚生における不合理な待遇の格差はどのように是正されるのでしょう。今回はまず基本給の格差解消を事例ごとに検証し、次回以降、各種手当、福利厚生と全3回にわたって、その全貌を説き明かします。

 

職業経験・能力に応じた基本給の支給について

 

ガイドライン案によれば、労働者の職業経験・能力に応じて基本給を支給しようとする場合、無期雇用フルタイム労働者(以下、フルタイム労働者と表記)と同一の職業経験・能力を保有している有期雇用労働者、またはパートタイム労働者(以下、有期雇用労働者等と表記)には、職業経験・能力に応じて、同一の支給をしなければなりません。

言い方を変えれば、フルタイム労働者と同程度の職業経験・能力を持った有期雇用労働者等について、基本給における経験・能力に応じた部分が、フルタイム労働者より低くてはいけない、ということになります。

企業で導入されている一般的な職能給は、従業員の職務遂行能力の評価や資格に応じて範囲が決められ、その範囲内で毎年の給与が決まります。職能資格制度と連動して設定された賃金表の中で格付けされ、給与が支給されるわけです。

この賃金表は、フルタイム労働者と有期雇用労働者等では別に設定されている場合が多く、法律の施行までに各企業は同一の職能給を支給できる制度を再構築する必要があります。

 

業績・成果に応じた、基本給の支給

 

基本給について、労働者の業績・成果に応じて支給しようとする場合、フルタイム労働者と同一の業績・成果を出している有期雇用労働者等には、業績・成果に応じて同一の支給をしなければならなくなります。また、業績・成果に一定の違いがある場合は、その相違に応じた支給をしなければなりません。有期雇用労働者等の業績・成果がフルタイム労働者よりも高い場合には業績に応じて支給される基本給(業績手当として支給される場合も含む)は業績の低いフルタイム労働者よりも当然、高くなります。

業績給とは、労働者の売上高や生産高に応じて支給される給与のこと。労働契約においては、完全出来高制(フルコミッション制)は禁止されていますので、一般的には「能力給≒年功的基本給」+「業績給」という形で運用されています。具体的には、歩合給、出来高給、能率給という形をとることが多く、タクシードライバー、保険の外交員、自動車販売などの業種で多くみられます。

業績給に関しては、同一労働同一賃金の考え方が導入される以前から、フルタイム労働者、有期雇用労働者等の区別なく、同一基準で支払われているケースが多いようです。
例をあげてみましょう。
 

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表をご参照ください。この場合、勤続年数の長いAさんと短いBさんでは習熟度合が異なるため、ルールに基づいて職能給に差を設ける一方、業績給は同一基準の出来高給が支払われているため、問題はないわけです。

 

労働者の勤続年数に応じた、基本給の支給

 

労働者の勤続年数に応じて基本給を支給しようとする場合、フルタイム労働者と同一の勤続年数である有期雇用労働者等には、勤続年数に応じた部分につき、同一の支給をしなければなりません。従って、有期雇用労働者等については、勤続年数を当初の雇用契約開始時から通算して評価し、支給しなければならないのです。

 

勤続による職業能力の向上に応じて昇給を行う場合

 

勤続による職業能力の向上に対応して昇給を行おうとする際、有期雇用労働者等がフルタイム労働者と同様に職業能力が向上した場合、向上に応じた部分について同一の昇給を行わなければなりません。職業能力の向上に一定の違いがある場合は、その相違に応じた昇給を行います。

一般的に、企業における昇給査定は、人事考課の結果に基づいて決められる号数が賃金表のうえで昇号して昇給額が決まります。職業能力の向上が同程度の場合には、フルタイム労働者だろうと、有期雇用労働者等であろうと、その昇給額は同じでなくてはなりません。

── ある会社でフルタイム労働者と有期雇用労働者等の間に賃金の格差があるとします。
賃金の決定基準・ルールの違いが要因である場合、「フルタイム労働者とパートタイム労働者等は将来の役割期待が異なるため」という説明では、主観的・抽象的すぎ、とても十分な説明とは言えません。

職務内容、配置の変更範囲、その他客観的・具体的な実態に照らして、なぜ決定基準やルールに違いがあるのか、客観的・合理的に説明できるようにする必要があるのです。

≪記事作成ライター:山本義彦≫
東京在住。航空会社を定年退職後、介護福祉士の資格を取得。現在は社会福祉法人にて障がい者支援の業務に携わる。ライターとしては、28年間に及ぶクラシック音楽の評論活動に加え、近年は社会問題に関する記事も多く手掛けている。


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