電力の自由化が昨年春にスタートしてから1年。
新規参入した電力会社から電気を契約できるようになったことで、プランの比較検討、仕組みやデメリットなど、ネット上や雑誌、新聞などで比較検討されてきましたが、みなさんは既存の電力会社のままですか? それとも新電力に切り替えましたか?
そして今春4月からは、都市ガスの小売り全面自由化が始まりました。
おもな新規参入企業は、東京電力など大手電力会社。電気・ガスのセット販売も可能になり、エネルギー事業争奪戦の幕開けとなりそうですが、消費者にとって何が変わるのでしょうか ──。
都市ガスも規制解禁。小売り全面自由化がスタート!
これまでの都市ガス事業は、東京ガス、大阪ガス、東邦ガス、西部ガスの大手4社と、各地域をテリトリーとする約200社から成り立っており、ガス小売事業は地域独占により守られていました。つまり、大手4社が都市ガスの8割を供給していたのです。
そして4月からの小売り全面自由化により、これまでのガス小売事業の地域独占が完全に撤廃され、さまざまな企業が独自の価格サービスを提供できるようになりました。
ちなみにガスの種類は、都市ガスやLPガス(プロパンガス)などがありますが、病院やホテルなどの大口需要家に供給される都市ガスや、LPガス全般はすでに自由化されており、都市ガスの小口需要家分のみ規制されていました。ところが今回の自由化によって、家庭や商店、事務所などに供給される都市ガスも規制解禁となったことで、「全面」の呼び名にふさわしい「小売り全面自由化」がスタートする運びとなったのです。
新会社と契約しても、使用料の支払先が変わるだけ
新規参入するガス会社は既存のガス導管を使い、各家庭にガスを供給していきます。
よって、新会社と契約しても工事やガス器具を替える必要はありません。かんたんに言えば、使い方が変わるわけではなく、使用料の支払先が変わるだけ、ということになります。
●ポイント1/新会社と契約しても工事やガス器具を替える必要なし
●ポイント2/使用料の支払先が変わるだけ
こうした点は消費者にとってありがたい限りですが、とはいえ、いちばんの心配は安全面ですね。
安全の観点から言うと、新ガス会社に切り替えた後も、ガスの定期保安点検はガス小売業者(あるいは委託事業者)によって行われますし、導管事業者(既存のガス会社)── たとえば東京ガスの導管エリアであれば、導管の内管緊急保安と漏えい検査義務は東京ガスに課せられています。
顧客奪還に向けた激しい“つばぜりあい”が幕開け
しかし、電力に比べてガスは安全性の確保や調達の難しさという高いハードルがあり、なかなか登録が増えない現状にあります。そのため、新規に小売事業者登録したなかで家庭向けにガスを供給するのは、東京電力、関西電力、中部電力、九州電力の4社にとどまっています。
さらに、昨春にスタートした「家庭用の電力小売り自由化」をみても、新電力に切り替えた世帯はわずか3%程度。こうした点も新規企業がガス小売り参入に踏み込めない要因となっているようです。
とはいえ、勢力を誇っていたガス会社も楽観できない状況にあります。昨春から開始した電力の小売り自由化により、大手電力会社の顧客が大量に大手ガス会社に流出。
東京電力の場合で見ると、155万件の顧客が新電力に流れ、うち4割が東京ガスに流出しているのです。新電力に切り替えた世帯はわずか3%程度といえども、これは大きな脅威です。
そして、今回のガスの全面自由化により、電力会社も「ガス・電気のセット割」で対抗するとされており、顧客奪還に向けた激しい“つばぜりあい”が幕開けするのです。
電力会社の巻き返しなるか?
ここで、意外と知られていない事実があります。
それは、電力会社がガス会社よりガスを多く持っている点です。数字にするとわかりやすいのですが、東京電力のLNG調達量は約2300万トン※。その調達量は、東京ガスの2倍以上にのぼるのです。※2015年度実績
“つばぜりあい”“巻き返し”の初戦として、東京電力は日本瓦斯(ニチガス)やTOKAI、関西電力は岩谷産業との提携を発表しました。これらの企業はいずれもLPガスの販売を手がけていることから、今後、保安義務を担っていくことになります。また、新電力にも参入したKDDIは、関西電力のガスの代理販売を行うことになる、と報じられています。
── エネルギー販売をめぐる電力会社とガス会社のサービス・価格競争は、今後より激しさを増していくと予測されていますが、一方でこうした自由競争は、消費者にとってはうれしい限り。自由化によりどのような恩恵がわたしたちにもたらされるのか、ぜひ注目していきたいですね。
≪記事作成ライター:ナカムラミユキ≫
千葉出身。金沢在住。広告制作会社にて、新聞広告を手がける。映画、舞台からメーカー、金融まで幅広い記事広告を担当。著名人インタビューや住宅関連、街歩きコラム、生活情報まで興味の赴くまま執筆しています。
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