目的地までの「相乗り」。この新しい考え方は日本に定着するか〈その2〉



 

前回、ライドシェア=「相乗り」というサービスがアメリカで生まれ、世界27カ国、450都市に広がっていることをお伝えしました。

「一般の人が自家用車に他人を乗せて目的地まで送り届けて報酬を受け取る」というこのサービス、日本に定着することはあるのでしょうか。その際、どんなメリットがあるのでしょうか。

 

Notteco(のってこ)は利用されているのか?

 
前回、日本にも「割勘による相乗り」というプラットフォームがあることをご紹介しました。国内最大級の相乗りマッチングサービス「notteco(のってこ)」という、長距離移動を安くすませたい、見ず知らずの人同士を結びつけるこのサービス、中年の筆者などは「見ず知らずの人と密室と言えるクルマで長距離移動なんて……」とちょっと尻込みしてしまうのですが、意外や意外、けっこう快適に利用されているようなのです。
同乗者にドライバーの任意保険の内容や、年齢、携帯番号、メールアドレスなど、個人情報をしっかりと開示することは当然と言えますが、それに加えて「同乗者からドライバーに対する評価」やFacebookの友達の数があらかじめ公表されていることが、さらに安心感を高めています。ドライブ後のコメントを見てみると、「非常にていねいな運転で」という運転に対する評価以外にも、「楽しい会話が」「話題豊富で」「すばらしい気配り」など、ドライバーの人柄に対する評価もたくさんあります。利用者の年齢、性別はさまざまで、利用する人々は、単純にコストダウンだけを求めているわけではない様子が見て取れます。

 

タクシー業界は大反対!

 

さて、「長距離ドライブで、しかも割勘でドライバーは利益を上げない」という特殊な環境で細々と存在している、日本の一般ドライバーによるライドシェアですが、なぜ、アメリカやイギリスのように導入が進まないのか、ここには、大きな規制の壁があります。この規制撤廃に対して大きな危機感を持って反対しているのがタクシー業界で、一般社団法人 全タク連のライドシェア問題対策特別委員会は11項目の対応策を発表しています。

タク連のライドシェア問題対策特別委員会による対応策
●1、初乗り距離短縮運賃       ●2、相乗り運賃 
●3、事前確定運賃          ●4、ダイナミックプライシング
●5、定額運賃            ●6、相互レイティング 
●7、ユニバーサルデザイン(UD)タクシー 
●8、タクシー全面広告 
●9、第二種免許の緩和        ●10、乗合タクシー 
●11、訪日外国人等の富裕層の需要に対するサービス(プライベイト・リムジン)

対応策の中には内容がよくわからなかったり、相互レイティングなど、「運転手が客を評価するって!?」と思わず笑っちゃう項目もありますが、まさに、ライドシェアを意識した対策になっていますね。確かに単純に考えると、「一般ドライバーが、プロドライバーの仕事を奪う」という構図に見えますが、日本を取り巻く高齢化、過疎化の流れを考えると、そうもいっていられない事情が見えてきます。

 

北海道・天塩町の事例から見えること

 


 

現在、「天塩町相乗り交通事業」という、天塩町(北海道天塩郡天塩町/人口3217人※平成29年1月末)と、株式会社notteco(のってこ/本社:東京都千代田区)共同の実証実験が行われています。その目的について、専用サイトには以下のように書かれています。

──「天塩-稚内間の移動には公共交通機関がなく、通院や買い物ができずに困っている方がいらっしゃいます。天塩―稚内間相乗り交通事業は、そのような移動できずに困っている方々に相乗りしていただくことで、交通の課題を解決する実証実験です」──

そうなんです。「公共交通機関がない地域」は北海道北部に位置する天塩町だけではありません。高齢化に伴い、全国各地に広がりつつある過疎地域において、住民自身が「空いている座席を提供する」という新たな共助の形は、タクシーのない地域においては必然とも言えます。

さらに、たとえタクシーがあったとしても、実証実験のモデル路線の天塩―稚内間は68キロメートル、タクシーだと軽く1万円以上になります。自家用車を持っていたとしても約1時間を要する距離。バス・電車を乗り継いでも2時間以上かかる距離なのです。
そんな環境下で、1000円以下という相乗り費用が高齢者たちをどれだけ助けるかは想像に難くありません。規制に守られてきたタクシー業界が打ち出した対策を見ても、「ライドシェアの流れを止める」というよりも、むしろそれはあきらめてどう対抗していくか、に重きが置かれているように見えなくもありません。
現在、ライドシェア先進国のアメリカにおいても、会社側とドライバー側の対立など、少なからず問題が出てきているようですが、限りある資源を有効活用し、共助の文化を育てるものであるならば、順調に拡がっていってほしいと思います。
「現役を退いて免許を返上するまでの期間、近所の人々の足になれるなら、相乗りドライバーもいいかな」と筆者もふと思うのでした。

≪記事作成ライター:前田英彦≫
同志社大学工学部(現理工学部)出身。株式会社リクルートに11年間在籍、広報室マネジャーなどを経て独立。数々の起業家、創業経営者との出会いを通して、日々成長中。独立時に設立した会社は現在18期目を迎えている。「レジを打ったことのない人間に小売りの何がわかる!」と流通業の顧客に言われたことがきっかけで、たい焼き屋も展開。大学を卒業して30年。突如理系仕事に目覚め、最近では製造業の職人になってしまったという噂も。ダルメシアン、テニス、ゆで卵を愛す。


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