過去最高の売上高を記録。「プライムデー」が世界の常識を変えていく? 


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米アマゾン・ドット・コムは2017年7月に実施した「プライムデー」において、1日あたりの売上高が過去最高を記録したと発表しました。

前年と比較して世界で6割以上、米国では5割以上の増額です。日本も例にもれず、過去最高の注文数を記録したといいます。アマゾン(以下Amazon)は売上額を発表していませんが、いったいどんな商品が売れたのでしょうか? 
このたった1日の大規模セールがいまや米国の人々の買い物習慣に変化をもたらし、小売業界に大きな影響を与えています。世界を代表するインターネット通販の最大手、Amazonの“今”に迫ります。

 

「プライムデー」とは?

 
プライムデー(Prime Day)は2015年にAmazonの創業20周年を記念して始められたセールのことで、年に1日限りのプライム会員限定の特売イベントです。会費(日本では3900円/年、もしくは400円/月)を払って会員登録した人が参加できますが、「30日間の無料体験」が用意されているので、このプランを利用すれば、会費を払わずにプライムデーに参加することも可能。そのせいか、米国でプライムデーが開催された今年の7月11日には、プライム会員の1日あたりの新規登録数も過去最高となりました。

プライムデーの開催は今年で3回目を数え、これまで24時間だったセール時間が今年は30時間に延長されたことも売上増に結びついたと考えられます。開催国は日本を含めた13カ国(米国、日本、中国、インド、メキシコ、イギリス、スペイン、イタリア、ドイツ、フランス、カナダ、ベルギー、オーストリア)。セール開始直後にはAmazonのトップページが一時ダウンするというトラブルが発生したものの、全世界で注目を浴びたことは間違いないようです。 

 

世界的に売れたアイテムは、日本未発売の「Echo Dot」

 

プライムデーにおいて世界でいちばん売れた商品は何かというと、「Echo Dot(エコー・ドット)」というBluetoothで接続できる小型の人工知能スピーカーです。通常49.99ドル(約5700円)のところ、30%OFFの34.99ドル(約4000円)で販売されましたが、残念ながら日本では未発売商品です。

ベストセラー商品であるEchoシリーズのうち、通常179.99ドル(約2万円)のスピーカー型音声アシスタント「Amazon Echo」が、プライムデーでは半額の89.99ドル(約1万円)の特価で登場。音声認識のAIデバイスとして、Echo関連商品の売り上げは前年の7倍になったといわれています

この通称Alexa(アレクサ)と言われるEcho端末はまだ日本語非対応のため、日本ではなじみが薄く、日本でのベストセラーランキングには入っていません。ただ、イギリス・ドイツなどをはじめとした全世界ではすでに大人気の商品で、1分間に数千台が売れているのだとか。今後も世界的にEcho端末への関心は高まるとともに、日本でも注目を浴びるアイテムになりそうです。  

 

ベストセラーは国ごとに違う。日本ではプロテイン!?

 

日本で最も売れた商品は、Amazonデバイスでは「Fire TV Stick」(3480円)でした。これは、テレビにさし込むだけで映画や動画、ゲームなどを楽しめる装置で、いわゆるメディア・ストリーミング・デバイス。さらにAmazonデバイス以外では、明治乳業の「ザバス ホエイプロテイン100」(4125円)と、Happy Bellyの「岐阜・養老 天然水(2ℓ×6本)×2箱」(988円)でした。

ちなみに、他の国では何が売れていたのかをチェックしてみましょう。
■米国:電気圧力鍋(130ドル)、遺伝子検査キット(199ドル)
■英国:Alexa対応スマートプラグ(59ポンド)、プレイステーション4(224ポンド)
■フランス:プレイステーションプラスのメンバーシップ(74ユーロ)、ゲーム・オブ・スローンズ1-6のブルーレイパック(99ユーロ)
■イタリア:食洗機用洗剤(17ユーロ)、ネスプレッソ用エスプレッソカプセル(15ユーロ)

見事に各国でバラバラですね。国ごとにモノに対するとらえ方が違うことがよくわかります。もちろん、売れ筋商品だからといって、アメリカ人がみな遺伝子検査に夢中で、イタリア人は食器洗いを好み、日本人はプロテインで筋肉ムキムキになりたい……ということにはならないわけで、単純に欲しいものが安かった、というのが理由でしょうか。 

 

米国のセール時期が、今後変わる!?

 

米国では近年、このプライムデーに対抗して、大規模なセールを実施する店舗や大幅値下げを敢行するネットストアが出現しています。
今年は、ニューヨークに本部がある百貨店「メイシーズ(Macy’s)」が、サイト上のすべての商品を60%OFFにするセールを開催したほか、世界展開している玩具大型量販店「トイザらス」や、ウォルマートと並ぶ米国で人気大手スーパーマーケット「ターゲット(Target)」、米国を中心にスーパーマーケット等の小売店を経営する「シアーズ(Sears)」、米国ミネソタ州に本社を構える世界最大の家電量販店「ベストバイ(Best Buy)」などが、値引きセールに加えて「プライスマッチ(最安値保証)*」も行うなど、便乗セールともいえる対応に出ました。

*プライスマッチ(最安値保証):商品がプライムデーで販売されていた場合は同じ価格で提供すること。

 
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米国で大規模なセールといえば、11月の感謝祭の翌日に行われる「ブラックフライデー」や、翌週月曜日にオンラインで開催される「サイバーマンデー」を指します。プライムデーはいまやそれらに匹敵する規模のセールになったといえるでしょう。

全体で見ると、米国でのプライムデーの売り上げはブラックフライデーの売り上げにはまだ及びませんが、2016年の両日のAmazonの設定価格を比較したところ、お買得商品が多いのはプライムデーだということが判明しています。(Best Black Friday.com調べ)。
そのうち、“米国における最大規模のセールは7月開催”という習慣ができるかもしれませんね。

── 米国において「7月はセール時期」という新たな認識を人々に植えつけたAmazonのプライムデー。
消費者にとって欲しいものが安く手に入るならば、セールが増えるのはウエルカムですが、プライムデーにおけるAmazonの狙いは、新規プライム会員の獲得にあります。
無料会員体験に登録し、プライムデーに欲しい商品が安く買えてラッキー! ……ならばよいのですが、気づいたら会費が請求されていた、ということになりませんように。普段、Amazonで買い物をせず特典も必要ない、という人は会員資格の解除をお忘れなく。そのままにしておくと自動継続となり、たった1日のセール参加料が高いものについてしまいますから。

参考URL:日本経済新聞、ビジネスインサイダージャパン、ほか

≪記事作成ライター:山本義彦≫
東京在住。航空会社を定年退職後、介護福祉士の資格を取得。現在は社会福祉法人にて障がい者支援の仕事に携わる。28年に及ぶクラシック音楽の評論活動に加え、近年は社会問題に関する執筆も行う。


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