今後のFRBの金融政策と米金融市場



FRB(米連邦準備理事会)は、今月1日FOMC(米連邦公開市場委員会)を開き、政策金利(フェデラルファンドFF)金利の据え置きを決定しました。
現在FF金利の誘導目標は1.00~1.25%です。今回はイエレンFRB議長の記者会見はなく、市場の予想通りでした。
10月に開始したFRB保有資産を暫時縮小の効果を見ることが必要でしょう。当初月額100億ドルを上限として縮小し、段階的に上限額を月額500億ドルまで引き上げると言われていました。米国債金利利回りが急上昇すれば、FRBの資産は含み損を抱えるリスクがあります。
本音の所ではそれを避ける行動に出たのではないのかと筆者は推測します。声明文では、底堅い経済の拡大が続き、物価は中期的にはFRBのインフレ目標である2%付近で安定すると予想されています。
また金融市場では、来月13日開催のFOMCでは利上げが予想されています。筆者が注視するドル短期金利先物ユーロドル(3ヶ月物)12月限1.53%となっていて、FF金利の上限が1.50%になることを織り込んでいると言えます。
問題は「来年何回利上げがあるか」ということを市場は色々と憶測しています。
筆者の見立てを金利先物から紹介します。

下記は短期金利先物来年12月限のチャートです。

これを見ると現在98.065と利回りベースは、1.935%です。金融市場では、来年は0.25%の利上げが3回実施されると考えています。
しかし、金利先物市場では、年2回利上げされて達するFF Rateの水準2.00%にはまだ到達していません。チャート上では緑丸で囲んだ98.00の水準となっていて、3回利上げ水準を織り込む水準は2.25%ですから、金利先物価格は97.75ということになります。筆者はまだまだその水準に達するには時間を要するのではないのかと考えています。

これには現在、下記の3つの要因が主にあると思っています。
1.米景気の先行き
2.次期FRB議長の人事
3.米税制改革法案の先行き不安
順次見ていきましょう。

1.米景気の先行き

本当に米経済は順調に経済成長とインフレ目標を達成できるのでしょうか?
確かにFOMCの議論のたたき台ベージュブックを読むと、経済活動は全ての地区で拡大していると謳われています。米国を襲った二つのハリケーンの影響は一時的であり、大きく影響を及ぼすものではないとしています。
しかし、雇用統計のひとつ非農業部門雇用者数の12ヶ月移動平均線(出所:ウォール・ストリート・ジャーナル紙)を見て驚きました。

非常に悲観的になってしまいます。
確かに失業率は直近では4.1%とほぼ完全雇用状態ですが、非農業部門雇用者数の傾向を見ると、2015年をピークに下方傾向にあります。金融市場では、20万人を下回らなければ、米経済は好調を維持していると言われています。
今月上旬に発表された10月の数字は26.1万人増、しかし9月はハリケーンの影響が出て僅か1.8万人増です。その意味では、来月発表の11月の数字に市場は関心が集まります。グラフの右肩下がりの傾向を止める動きになるのかについて注目が集まります。

そしてインフレ指標にも注目が集まります。9月消費者物価指数2.2%前年比、コア1.7%前年比と、概ねFRBのインフレ目標2%に近い所に位置しています。

しかしFRBが注目するPCE(Personal Consumption Expenditure 個人消費支出)コアデフレーター1.3%前年比と、今年前半から下降傾向にあることから、1月1.7%がピークであった印象を持ちます。
これでは、経済が好調に推移していても、個人の消費が一向に上向かないことを印象付けます。FRBは今年12月に更に利上げに踏み切ったとしても、来年の利上げには不透明感が漂うのではないのかと思います。

2.次期FRB議長の人事

FRB次期議長にパウエル現FRB理事が就任することをトランプ大統領が発表しました。
来年2月に就任する予定となっています。
パウエル氏は、財務次官を務め、共和党主流派に近いと言われています。トランプ政権閣僚の多くと同様にウォール街の投資銀行の経験もあるようです。
但し学者肌ではなく、金融の実務経験が長いと言えます。ボルカー、グリーンスパン、バーナンキ、イエレンの諸氏のように、金融理論を振りかざして、論破するタイプではないようです。
現理事と言うことで、イエレン現議長の路線を踏襲すると思われていますが、ウォール街と対話することを重視するのではないのかと思われます。従ってハト派に色分けされます。一時対抗馬に上ったテイラー・スタンフォード大学教授は、テイラー・ルールに基づいた金融政策であり、理論的には政策金利を3%前半までには引き上げることを主張するタカ派と思われていました。
従って、急速な利上げセッションに入ることを嫌っていたウォール街の投資家にとっては、パウエル氏は歓迎のようです。
また、ダドリー・ニューヨーク連銀総裁が来年半ばまでに退任すると発表しました。NY連銀は日々の金融操作実務を担当する重要な連邦銀行であり、その総裁にはFOMCの議決権が常に与えられています。
この重要ポストに来年半ば、誰が就任するのかについても注目が集まります。それによってフィッシャーFRB副議長の退任予定であり、来年のFRBメンバーは大幅に入れ替わることになります。
経済、金融市場に大きな変化が起きた場合に、どのように対応して行くのか不透明になります。よって、これはリスクと言えます。早く新しいメンバーの金融政策方針の理論とでもいうものを把握する必要があるのではないのかと思います。こんなことで、素直に来年は利上げセッションが続くのには疑問符を付けているのではないのかと思います。
それが債券利回り、短期金利の素直な上昇に至っていない要因ではないのでしょうか?

3.米税制改革法案の先行き不安

トランプ政権の公約である税制改革案により、大幅に法人税などの減税が実施されるという期待感から、米株式市場は、トランプ政権発足以来好調を維持してきました。

先月から今月にかけては、法人税減税が5年間の段階的な導入を検討していて、そして法人税の実施は2019年に先送りされるなどとの報道が飛び交っています。減税するには、歳入を確保しないといけないのです。メキシコとの国境税の導入、オバマケアの廃止などが必要ですが、この二つの法案が上手く行っていないようです。
そのために法人税の実施を先送りしないといけないという雲行きです。
減税を見越して来年度の予算を組む米企業ではないものの、先行き不安に駆られる企業は多いのです。
そのような理由から、来年以降の企業の業績がこれまで程順調ではなくなってしまい、投資家の懸念が出てき始めているのではないのかと推測しました。
このことから、ダウ平均株価に反映しているのだと言えます。

以上の3つの要因が米金融市場には不安材料と言えます。これまで程日米株価が上昇するとは言い切れませんが、クラウドファンディング商品であるミドルリスク、ミドルリターンな投資商品を組み込むことは皆さんの資産管理、つまりポートフォリオマネジメントと言う観点で、今後益々注目を集めることになると思います。

«記事作成ライター:水谷文雄»
国際金融市場に精通するInvestment Banker。
スイス銀行(現UBS銀行)にて20年余に亘り外国為替および金利・債券市場部門で活躍、
外銀を知り尽くす国際金融のプロフェショナル。新興の外国銀行(中国信託商業銀行 )の
東京支店開設準備に参画しディーリング・ルームの開設を手掛ける。
プライベートではスペインとの関わりを深く持つ文化人でもあり、
スペインと日本との文化・経済交流を夢見るロマンティスト。


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