イエレンFRB議長緩やかな利上げ確認


今週水曜日にFRB(米連邦準備理事会)はFOMC(米連邦公開市場委員会)を開催し、利上げを決定しました。政策金利であるフェッド・ファンド・レート(FF Rate)の誘導目標現行0.50~0.75%を0.25%引き上げ、0.75~1.00%としました。引き上げは市場の予想通りでしたため、市場の関心は今年何回利上げがあるかどうかという点にありました。

市場では今月に入り、ひょっとして0.25%毎の利上げが年内4回あるのではとの観測が強まりました。それはFRBの重視している2つの指標が共に良好に推移していたからです。
ひとつは雇用統計です。米失業率は2月4.7%と引き続き良い状況と言えます。5%以下は完全雇用状態と言えます。そして非農業部門雇用者数2月23.5万人と予想を上回る良い数字となりました。1月の数字も上方修正され23.8万人となっており、共に20万人を上回っています。
そして、二つ目のインフレ率の数字を見てみましょう。2月消費者物価指数2.7%前年比、コア2.2%前年比となっています。共にFRBのインフレ目標2.0%を上回っています。過去の数字を見ても、昨年夏以降は1.0%以上の数字であり、12月からは2.0%を上回る数字が続いていますので、消費者物価指数だけを見ると着実にインフレ率は高まっていると言えます。そしてFRBが重視しているPCE(Personal Consumption Expenditure)つまり個人消費支出1月PCEコアデフレーターは、1.7%前年比となっています。こちらはFRBインフレ目標2.0%からは下回っていますが、今後のFRB内部の調査資料を見ると予測は今年1.9%、そして来年以降は2.0%と出ています。PCEの数字もFRBのインフレ目標に近く、そして今後2%前後に落ち着くと見ているようです。このことから市場関係者の間では、年4回の利上げ方向を見ることになった訳です。

しかし調査資料内のドットチャートと呼ばれるFRBメンバーの今後のFF Rateの数位予想表をみますと、今年年末までの見通しは平均で1.375%となっています。これは年2回実施の場合の1.25%と年3回実施の場合の1.50%の範囲内です。年4回となると1.50%と1.75%内に位置しないとなりません。このことから、市場はFRB内の年内の利上げコンセンサスは年3回であると推測することになった訳です。
イエレン議長は、記者会見の場で、緩やかな追加利上げが今後数年の間適切であると語りかけました。(あくまでも緩やかにとの文言を強調されたことが印象的でした。)市場の先走りが目についたわけです。
債券相場は10年債2.60%から2.50%に急落しました。筆者が重視する短期金利先物(3ヶ月物)12月限1.705%と直前の利回り水準から0.075%と大きく利回り低下の動きとなったようです。下記はそのチャート(出所:CME(シカゴ金融先物取引所))です。この動きを見ると興味深いことが分かります。
金利先物では価格低下は利回り上昇を意味します。左丸部分は昨年12月15日の利上げ時の動き、そして右が今回の利上げ時の動きです。まず先程述べました年内4回の利上げ観測と言う点について説明します。4回利上げであれば、98.25(利回りベース1.75%)まで価格が下落しないといけないのですが、短期金利ディーラーはそこまでは予想していなかったようです。株式、為替市場のディーラーが一方的に先走り、そのようなコンセンサスが出来上がってしまったのではと思います。短期金利ディーラーは冷静に判断していたと推測します。そしてトレンドラインを参考にしてください。「噂で売って、事実で買い戻す」という相場の格言通りの動きになっていることに注目しましょう。
前回12月の利上げ観測が強まると、およそ1ヶ月ほど前から価格が低下(利回り上昇)し、そして発表が行われると買戻しの動きが強まります。そして一定の流れが続き、再度3月の利上げ観測に向けて、価格低下の動き、そして買い戻される動きをします。今後年内2回は最低実施されるという利上げ観測に対しても、同様の動きになると経験的に予測できるため、今後6月または9月に利上げが実施されると予想されます。そして利上げ観測の盛り上がりと共に、価格低下の動きが見られるのではと予想されます。短期金先物の動きは、明確に為替市場の動き、そして株式相場にも影響を与えるのではと筆者は思っています。皆さん参考にしてください。

そして来年以降の動きについても言及しておきましょう。ドットチャートでは、来年の予測平均2.125%、19年3.00%そして中期的予想3.00%となっています。今年が年3回と見ると1.50%となります。従って来年は3回利上げがあるとFRBメンバーは予測していますが、この点もイエレンFRB議長の「あくまでも緩やかな利上げが今後も行われる」という言質に一致していると言えます。
下記のグラフ(出所:ウォール・ストリート・ジャーナル紙)は過去10年間のFF Rateの推移を表しています。リーマンショック直前のFF Rateは5.25%でした。そしてリーマンショックから立ち直るために、FRBは0.25%までFF Rate引き下げを実行しました。そして一昨年12月にやっと重い腰を上げ、FF Rateを0.50%としました。昨年12月に更に0.25%引き上げ0.75%としたことは記憶に新しいです。そして今後FEBが正常な経済状態に相応しいFF Rateに引き上げることを目論んでいます。
現状では3%が目標、景気の過熱感が出てくると3~4年後には4~5%のFF Rateも想定しないといけないことが、このグラフからは読み取れます。

そしてFRBの保有資産残高が積み上がっていることも、イエレン議長にとって悩みの種であると言えます。
現在4.5兆ドルに積み上がっている資産(米国債、住宅ローン担保証券)を減らす動きになるのではと思います。目標として1.5兆ドルまで減らすのではとの観測があります。特に住宅ローン担保証券はリーマンショックの負の遺産と言えます。現在は償還期限が到来すると再投資に回しているようです。
今後再投資を止めて、徐々に減額する正常な保有資産の状況に持って行くかにも注目しないといけません。それは良い経済状態では必然的に金利上昇の動きにつながるのではと思います。長期債の歴史的動きを見ても、現在は低水準に位置すると思います。今後、トランプ政権のインフラ投資に重点を置くという政策とはどうしてもぶつかるような動きになることを筆者は懸念しています。
FRB債券保有の正常化の動きになっても、反対にインフラ投資から債券発行の動きになっても、米国債利回りは上昇過程の軌道に乗っていくのではと思います。
皆さんのポートフォリオ管理において、債券を償還期限まで持つという意味では、米国債は今後利回り期待の上昇と共に魅力的に映るのではと思います。適時組み込むことが良いのではと思います。

«記事作成ライター:水谷文雄»
国際金融市場に精通するInvestment Banker。
スイス銀行(現UBS銀行)にて20年余に亘り外国為替および金利・債券市場部門で活躍、
外銀を知り尽くす国際金融のプロフェショナル。新興の外国銀行(中国信託商業銀行 )の
東京支店開設準備に参画しディーリング・ルームの開設を手掛ける。
プライベートではスペインとの関わりを深く持つ文化人でもあり、
スペインと日本との文化・経済交流を夢見るロマンティスト。


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