中国経済に変調の兆しはあるのか? 


今年10月、5年に一度の中国共産党大会が開催されました。
この大会では共産党の指導体制、基本方針、そして党規約の見直しなどが決定されました。
この中で、人事に関しては、次世代リーダーと目される50代の幹部登用があるかどうかに注目が集まりました。結果、目立った若手登用とはならなかったようです。
そして身内で組織を固めた感が否めません。習近平(しゅうきんぺい)国家主席が長期政権を確立したと言えます。そして李克強(りこくきょう)首相が留任となりました。

李首相も経済担当とは言え、習近平主席との権力差は歴然のように思えます。
もし中国経済が、再びリーマンショックのように大きな経済変調があった場合、習近平主席は前回同様に財政出動と言う手段を打ち出すことができるのかもしれません。
中国が再び経済危機になった場合、世界経済にとって救世主になり得ると判断できます。
そのことを前提にして中国経済について考えていきましょう。

今年3月の全国人民大会では、国内総生産(GDP)の目標値を前年の6.5~7.0%から、17年度は6.5%前後に引き下げました。大都市の不動産バブルと金融リスクの高まりなどの副作用が膨らんでおり、その退治に注力するために、経済成長率の低下目標もやむなしとの結果になったのではと推測します。
中国は、大都市を中心に不動産価格の上昇が続いています。また負の面で、周辺都市のマンションのゴースト化も進んでいます。不良債権化しているマンションは意外と多いのではないでしょうか。

大都市では、一般市民にとってマンションが次第に手に入りにくいとも言われています。IT関連で財を成した起業家、中国共産党とのつながりで景気の良い企業の幹部など富裕層には手の届く不動産でも、庶民には手が届かなくなってきているのです。

習近平主席は、徹底して汚職など不正を許さない姿勢であり、今後は社会格差と言う面も着手していくのではないかと思います。それが、建前としては共産党の考えなのではないでしょうか。
また金利は徐々に上昇し、株式市場はやや下落傾向にあるのではと思います。

中国株式市場の指標である上海総合指数(出所:ウォール・ストリート・ジャーナル紙)を下記に載せました。チャートは1年の期間で示しています。現在は3,290ポイントと言った水準です。中期的に見ると2年前には5,000ポイントを示していましたから、バブル期からの調整とも言えます。
ここ1年の動きを見ると、11月中旬の高値3,350ポイント水準から下落していることが分かります。5月中旬の3,030ポイント水準(緑線)にまで下落すると、中国株式市場はどうしたのという声が出てきます。

先進国の株式市場を見ると、米ダウ平均は史上最高値更新、欧州でも英株式、独株式等軒並み高値更新となっています。そして日本の日経平均も1990年代のバブル崩壊後の最高値を更新しています。
中国政府が経済成長率を引き下げたとは言え、直近の数字、第2四半期GDP:6.9%で前年比と良い数字を維持しています。そうした状況の中で、中国の株式市場の下落は変調と言えます。
投資家の投資スタンスに変化があるのかも知れませんので注意していきたいですね。
 

 
中国経済の実態はどうであるかを見てみましょう。
中国政府発表の統計を信頼して良いかは経済学者の間で意見が分かれます。
民間の調査会社財新が集計した統計が中国経済を表しているとも言われます。
下記は財新のPMI(Purchasing Managers Index 購買担当者の購買意欲についての調査結果 出所:ウォール・ストリート・ジャーナル紙)です。50を上回ると良い、下回ると悪いという統計です。
2006年からの統計であり、2008年、2009年とリーマンショックの影響を中国経済も直接受け、そして急回復を遂げていることが分かります。

そして2015年からの動きとしては、製造業(Manufacturing)、サービス(Services)、総合(Composite)共に、一時期50を下回っていたものの、過去2年間は好調を維持しており、少なくとも景気後退局面には陥っていないと言えます。
そして現在は、中国政府が大規模な財政投入により強制的に景気を立ち直らせた2009年、2010年のような景気の良い時代ではないのではと思います。2010年から今日まで、55を上回る景気状態には達していません。巡航速度の中国経済と言えます。
これを、「新常態」と中国政府は位置づけています。

そして中国政府指導部も、もはや発展途上国のイメージは持っていなく、先進国の仲間入りが近いと確信しているのではないのでしょうか。そのため、先進国の現在の経済成長率(2~3%前後)をやや上回る程度の経済成長率でも良いのではと本音では思っているのかもしれません。
沿岸部は既に成熟し、そして西部の農村部に経済の発展を追求する姿勢ではないかと思います。そして個人の所得を上げ、国内で経済が帰結する社会構造(需要と供給の均衡)を目指すのではないかと思います。

そこには、これまでの経済成長で無視されてきた社会的問題、例えば公害問題(北京のスモッグ問題は有名)、食品の安全問題、品質が悪い商品が売れる時代から、良品を製造しないと売れないという意識改革が必要です。
そのような諸問題を解決して、初めて名実ともに先進国の仲間入りが出来るのではないかと思います。勿論対外的には、「一帯一路」の西欧へ陸と海上をつなぐ経済構想は堅持する中国指導部です。
 

 
最後に金利の動きを見ましょう。中国人民銀行は、1年物貸出基準金利というものを設定しています。
これは米国で言えば政策金利(FF Rate)、日本で言えば、日銀に銀行が開設する当座預金に適用するレート(現在-0.10%)です。
現在の中国人民銀行の貸出基準金利は4.35%です。2015年1月には5.6%と高かったのですが、昨年、今年と低下し安定していて、筆者は不思議に思っています。
景気循環論から言えば、現在は金利上昇しても不思議ではないと思います。そこで2年債の動きの直近3年間のチャート(出所:ウォール・ストリート・ジャーナル紙)を参考にします。現在は3.77%です。
これを見ると2年金利は、今年は大きく上昇していると言えます。中国政府が、景気落ち込みに対して財政政策で資金供給する姿勢を強めるため、今後も上昇を続けそうです。その前兆が現れているとも言えますね。
 

 
全体を纏めてみましょう。
現在の中国の経済は、株価は不安定であるものの、概ね良好と言えます。そして産業構造の変化が次第にグローバルエコノミーに組み込まれる結果、今後大きくは成長が見込めないのではと思います。
習近平主席が強い指導力を発揮されることから、今後も強力な景気刺激策が景気後退期に見られると推測されます。
大きくは後退しない中国経済であれば、世界的に政治的不安定要因が散見されない、という条件のもと、世界経済は来年も上昇へと向かうのではないかと思います。

«記事作成ライター:水谷文雄»
国際金融市場に精通するInvestment Banker。
スイス銀行(現UBS銀行)にて20年余に亘り外国為替および金利・債券市場部門で活躍、
外銀を知り尽くす国際金融のプロフェショナル。新興の外国銀行(中国信託商業銀行 )の
東京支店開設準備に参画しディーリング・ルームの開設を手掛ける。
プライベートではスペインとの関わりを深く持つ文化人でもあり、
スペインと日本との文化・経済交流を夢見るロマンティスト。


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