楽天「第4の携帯キャリア」参入へ──大手3社に挑む戦略とその勝算は?


 

昨年末(2017年12月14日)インターネット通販大手の楽天が、自社の通信回線を持つ携帯電話キャリア事業に参入すると発表。今年春にも新会社を立ち上げ、2019年中にサービス開始を目指す方針を明らかにしました。

楽天の新規参入が実現すれば、NTTドコモ・KDDI(au)・ソフトバンクグループの3社と競合する「第4の携帯電話会社」が誕生することになり、各社の競争によって携帯料金が下がる可能性も考えられます。通信料の引き下げを業界に求めてきた安倍政権も、楽天参入に期待感を示していますが、新事業のインフラ構築に巨額を投資し、後発でキャリア参入するリスクを不安視する声も少なくないようです。大手3社が寡占する携帯市場に挑む楽天に、果たして勝ち目はあるのでしょうか?

 

格安SIM事業から自社回線を持つキャリア事業へ転換

 

すでに楽天は、2014年にNTTドコモから回線を借りる格安SIM事業に参入し、「楽天モバイル」のブランド名で低価格のスマートフォンサービスを展開。現在、昨年11月に買収したフリーテルの件数と合わせて、約140万件の契約を獲得しています。ただ、国内の携帯電話全体の契約数は約1億6000万件で、その9割以上のシェアを自社回線を持つ大手3社(NTTドコモ・KDDI・ソフトバンクグループ)が占めており、楽天のシェアはわずか1%未満にとどまっています。

 

 

そもそも他社から回線を借りる格安SIM事業は利幅が少なく、ここ最近は大手も攻勢をかけて顧客の獲得競争がますます激化。現状で契約数を伸ばすのは限界があることから、楽天は自社回線を持つキャリア事業への切り替えに踏み切ったとみられています。
新事業に向けて楽天は、今年1月に総務省が割り当てる4G(携帯電話用)周波数帯の割り当てを申請。承認後に新会社を設立して基地局などの設置を進め、2019年中にサービスを開始するとしています。

 

安倍政権も楽天の新規参入に期待を表明

 

いまや私たちの生活に欠かせない携帯電話ですが、やはり気になるのが通話やネットなどにかかる通信費です。とくにスマートフォンが普及した近年は、家計に占める通信費の割合がジワジワと増加。総務省の家計調査によると、一般家庭における通信費の支出額は月1万3000円超となっており、10年前と比べて10%以上アップしています(2016年調査/2人以上の世帯の平均額)。

かねてより安倍政権は高額な通信費を問題視し、端末の値引きを制限して通信料の引き下げに充てるよう携帯事業者に求めてきました。しかし、その実質的な効果はほとんど見られず、大手3社の料金体系もほぼ横並びの状態……。各社が探り合って割安プランを打ち出しつつも、プラン適応にはさまざまな条件(データ量や通話時間に制限がある、他のオプションサービスのセット加入が必要など)が付いており、結局のところ高い料金を支払わざるを得ないのが現状です。

 

 

こうした状況を受け、菅官房長官は昨年末の定例記者会見で「楽天参入によって各社が競い合い、利用者にプラスとなる料金・サービスが実現することを期待する」と発言。大手3社の寡占状態を崩す第4の新勢力として、楽天のキャリア参入を歓迎する意向を示しています。

 

多角的な事業と顧客基盤を生かした戦略で大手に挑む

 

新規参入を目指す楽天の最大の強みとなるのが、自社のネット通販や格安SIM、旅行予約サイト、オンライン銀行、クレジットカード、決済サービスなど、多角的な事業で得た顧客基盤とビッグデータです。そこで狙うのが、顧客のスマートフォンを楽天ブランドにして取り込み、シームレスなネットワークサービスでユーザーを囲い込むこと。とくに主力のネット通販サイト「楽天市場」は、スマートフォンなどのモバイル端末経由の取引が年々増加し、いまや6割以上を占めるといいます。今後のサービス拡充や新規展開において、モバイル端末がユーザーとの最も重要なタッチポイントになるというわけです。

また、新事業の携帯電話サービスでは、買い物で貯まった「楽天スーパーポイント」を携帯料金に充てられる楽天モバイルのシステムを継続するほか、楽天のクレジットカードで携帯料金を支払うと、割引やポイント付加などが受けられる会員特典も検討。こうしたノウハウをフルに活用することで、先行する大手3社よりも低価格でサービスを提供し、楽天モバイルの10倍超となる1500万件の契約を目指すとしています。

 

ゼロからインフラ構築する巨額の設備投資が課題に……

 

一方で、後発の楽天にとって大きな課題となるのが、自社回線の整備にかかる巨額の設備投資です。楽天は2025年までに最大6000億円の投資資金を調達するとしていますが、全国に基地局などを設置するためには莫大な初期コストがかかり、さらに事業運営には年間あたり数千億円の整備費も必要となります。すでに全国エリアに4Gネットワークを構築している大手3社に対し、ゼロからインフラを構築しなければいけない楽天は、相当なハンディとリスクを背負ってのスタートとなるのです。

巨大資本の通信事業者が母体のNTTドコモとKDDI、ボーダフォンを買収して一気に設備と顧客を手にしたソフトバンクグループ……その大手3社の壁は高く、かつてキャリア事業に参入したイー・アクセスも設備投資と顧客獲得につまずき、ソフトバンクグループに買収される結果となりました。ゼロからインフラを立ち上げて、鉄壁の既存キャリアと競っていくことがいかにハードであるかは、楽天も十分承知のうえでしょう。
もちろん、楽天は多角的な事業ポートフォリオと顧客基盤を構築しており、企業としての体力・競争力という面で一定の優位にあることは間違いありません。「第4のキャリアは多難」という業界の通説をくつがえすべく、楽天がどのような参入計画を打ち出して大手3社に挑んでいくのか……今後の新たな展開に大きな注目が寄せられています。

※参考/楽天HP、朝日新聞、日本経済新聞

≪記事作成ライター:菱沼真理奈≫  
約20年にわたり、企業広告・商品広告のコピーや、女性誌・ビジネス誌などのライティングを手がけています。金融・教育・行政・ビジネス関連の堅い記事から、グルメ・カルチャー・ファッション関連の柔らかい記事まで、オールマイティな対応力が自慢です! 座右の銘は「ありがとうの心を大切に」。


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