ここ最近、何かと世間を騒がせている仮想通貨「ビットコイン」。昨年末(2017年12月)の価格急騰に沸いたのもつかの間、わずか1ヵ月あまりで半値以下に大暴落。
さらに、仮想通貨取引所「コインチェック」で不正流失のトラブルが発生するなど、ショッキングなニュースが立て続けに舞い込みました。
そうした中、主要国ではビットコイン取引のリスクを懸念して、国際的な規制を訴える声が広まっており、各国の今後の動向に注目が集まっています。乱高下する相場とともに、世界中で目まぐるしく展開するビットコイン狂騒曲……その直近の動きを追いながら、国際社会に波紋が広がる仮想通貨について考えてみたいと思います。
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価格急騰から一気に大暴落&不正流失も発生!
昨年(2017年)ビットコインの価格は急激に上昇し、年末の12月には一時1コイン=230万円の最高値を更新。同年1月時点の10万円前後から1年あまりで約20倍に膨れ上がり、まさにバブルの様相を呈しました。
ところが年明け以降、韓国や中国でのビットコイン規制強化の検討が報じられて価格が急落し、今年1月17日には一時100万円を切る水準にまで下落。アンビリーバブルなスピード展開に、ツイッターやブログ上は投資家たちの悲鳴であふれ返り、市場は一時騒然となりました。
さらに追い打ちをかけるように、その数日後の1月26日には、国内の仮想通貨取引所「コインチェック」で顧客資産(仮想通貨NEM・約580億円分)の不正流失が発生。このトラブルを受けてビットコインの価格はさらに下がり、2月に入ると昨年11月以来の安値水準にまで下落しました。
投機ムードが過熱して相場価格が乱高下
ビットコインの価格が乱高下する背景には、公開株式やFX(外国為替証拠金取引)のように、元手の数倍の額を取引する投資家の存在があります。以前は、海外への低コストな送金システムとして注目され、大きな値動きは見られなかったビットコインですが、金融緩和であふれた資金の受け皿として、今後の値上がりに期待する投資マネーが一気に流入。投機目的の売買が広がって価格が急上昇し、1億円以上の利益を得た「億り人」なるビットコイン長者も出現しました。
また、ここ最近は大手取引所が大々的に広告を打ち出し、一般の個人投資家や若い人も気軽に売買するようになったことから、ビットコイン市場は一攫千金を狙う投機ムードがヒートアップ。そんな折に飛び込んだ中韓の規制強化のニュースが不安材料となって、損失の拡大を避けたい大口投資家や高値で購入したビギナーの売り注文が殺到し、1月の大暴落につながったと見られています。
警戒感が強まる中、将来性に期待する動きも……
こうした仮想通貨の取引リスクに対して、世界各国はますます警戒感を強めています。すでに中国は昨年秋、仮想通貨取引による海外への資本流出を懸念して、国内すべての仮想通貨取引所を閉鎖。さらに中韓両国では、企業での仮想通貨を使ったIOC(資金調達)も全面禁止しています。
また今年1月18日には、ドイツとフランスの経済閣僚が共同で記者会見を行い、ビットコインの国際的な規制を検討すべきと声明。両国はビットコインの取引リスクを詳細に分析したうえで、今年3月に開催されるG20財務相・中央銀行総裁会議に規制を提案し、各国間で議論したいとしています。
一方で、仮想通貨が新たな金融サービスや、社会的イノベーションにつながると期待する動きも見られます。たとえば、IT先進国のエストニアでは、国家として独自の仮想通貨「エストコイン」の発行を検討。スイスではビットコインでの納税を認める自治体が登場し、アメリカでは昨年12月から、大手先物取引所でビットコインの先物取引が開始されました。そもそもビットコインなどの仮想通貨は、円やドルといった法定通貨のような発行主体がないため、取引ルールや是非の判断は各国でまちまちなのが現状のようです。
仮想通貨を容認してきた日本は、やや甘かった……?
日本では2017年4月に改正資金決済法を施行し、世界に先がけて仮想通貨取引業者に登録制(免許制より規制がゆるい)を導入。金融庁の管理・監督のもと、仮想通貨の取引を国として容認してきました。麻生太郎財務・金融相も今年1月12日の記者会見で、相場の乱高下が続くビットコインに関して「何でもかんでも規制すればいいわけじゃない。利用者保護とイノベーションのバランスを注意しながらやっていく」と述べ、当面は静観する姿勢を示しました。
しかし、今回のコインチェック不正流出を受け、国内での状況は大きく変わってきています。金融庁はコインチェックのシステム管理態勢に問題があったと見て、同社に業務改善命令を出し、緊急の立ち入り検査を実施。他のすべての取引所に対しても、報告徴求命令を出してシステム管理態勢の報告を求め、社内のリスク管理態勢や顧客保護に万全を期すよう、さらに強く求めていく方針を示しました。
ルールがなければ「悪」にも「無」にもなる
とはいっても、他国よりマネーロンダリング(資金洗浄)対策が遅れている日本で、単に「システムの安全を確保すればOK」とする政府の対応は、まだまだ甘いと言わざるを得ません。犯罪やテロ集団に悪用されやすい仮想通貨が、国際社会を巻き込んでモンスター化している現状を考えると、国際的な業界共通のルール整備が進むまでは、一時的な取引制限などの規制措置も検討する必要があるのではないでしょうか。
いずれにせよ、ビットコインなどの仮想通貨はネット上のバーチャルなガジェットであり、その実体はどこにもありません。だからこそ使い方によっては善にも悪にもなり、ある日、突然消滅してしまう可能性さえあるのです。仮想通貨をめぐっては「もうかる・損する」「便利・不要」「安全・危険」「面白い・怖い」「リスクは自己責任・補償は必要」……等々、賛否両論さまざまな意見が聞かれますが、さて皆さんはどう考えるでしょうか。
※参考/BITCOIN相場in日本、金融庁HP、朝日新聞、日本経済新聞
≪記事作成ライター:菱沼真理奈≫
約20年にわたり、企業広告・商品広告のコピーや、女性誌・ビジネス誌などのライティングを手がけています。金融・教育・行政・ビジネス関連の堅い記事から、グルメ・カルチャー・ファッション関連の柔らかい記事まで、オールマイティな対応力が自慢です! 座右の銘は「ありがとうの心を大切に」。
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