多方面に広がるサブスクリプション・ビジネスは、従来型ビジネスモデルを変えるか!?


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「2時間飲み放題」を掲げ、低価格で飲食を提供する居酒屋は、もうはるか昔から私たちにとって当たり前の存在になっている。

さらに最近は、「月3000円でドリンク飲み放題」の居酒屋、「月約7万円で食べ放題」のステーキレストランなど、その日だけではなく月単位で客の獲得を狙ったサービスも多くなり、さまざまな「定額制の飲み放題・食べ放題」サービスが増えている。
また、飲食店に止まらず、いろいろな分野で「定額で○○放題」のサービスが目立つようにもなっている。
「サブスクリプション・ビジネス」といわれるこの「定額制」サービス。ここにきてなぜ急速に増加し、広がっているのだろうか?

そもそもサブスクリプションとはいったい何だ?

「サブスクリプション(Subscription)」とは、もともとは雑誌の「予約購読」「年間購読」を意味する言葉。「(クラブなどの)会費」や「寄付」といった意味もあり、ビジネスでは「定額サービス」の意味で使われることが多く、「有限期間の使用許可」といった意味合いで使われる言葉だ。

ネット上では、定額の動画配信、音楽配信、あるいはソフトウェアの使用許諾などでおなじみの手法だ。一定額の料金を支払えば、一定期間に限り、音楽を「聞き放題」、動画を「見放題」、ソフトを「使い放題」となる。これがわれわれもよく知っている、一般的なサブスクリプション・ビジネスの代表例だ。

このサブスクリプション・ビジネスが、最近はネット上の音楽やソフトウェアにとどまらず、飲食、自動車、コスメなど、さまざまな業態にも広がっている。新しい店舗をオープンさせ、新規顧客を獲得することによって拡大してきたこれら従来型の業界スタイルが、「定額サービス」で業績拡大を狙おうと、営業戦略に変化が生じてきているのだ。

サブスクリプション・ビジネスのメリット

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どうして多くの業界にサブスクリプション方式が広がっているか考えるとともに、サブスクリプション・ビジネスのメリットとデメリットを整理してこう。

【メリット】
●確実に安定した売り上げが得られる。
サブスクリプション方式は、定額制で先払いのシステムが一般的。毎月、一定額を確実に得られることが最大のメリットだ。

●新規顧客を獲得しやすい。
サブスクリプション方式は、事前に支払う金額が分かる。利用者にとっては気軽に手を出しやすく、企業側にとっては新規の顧客を獲得しやすい。

●サービスの利用回数を増やせる。
利用者にとっては定額で使い放題なので、利用した分だけ得をする。それだけ利用回数を増やすことができ、これは企業側にとってはそのサービスのブラッシュアップへのヒントを得られる機会が増えることになる。

●顧客データを収集できる。
サービスを利用する利用者の年齢や性別などの会員情報に加え、どのようなサービスが人気なのかなどのデータ収集ができる。

サブスクリプション・ビジネスのデメリット

【デメリット】
●ある程度のコストがかかる。
使い放題にできる商品やサービスを準備するため、あるいは定額を上まわった分をまかなうために、一定以上のコストが発生する。そのため、小規模経営では参入しにくい。

●自社ブランドの価値を下げる危険性がある。
せっかくのサービスも、定額・使い放題とするがために安価なものだと認識され、自社のブランドの価値を下げてしまう危険性を秘めている。

●利用者にとっての“お得さ”を持たせ続けなくてはいけない。
利用者に“お得さ”を感じてもらう価格設定を維持しなくてはならないうえ、提供する商品やサービスに新鮮味を持たせ続ける必要がある。利用者に早々に解約されないよう、さまざまな努力が必要となる点は、“一回売ってしまえば終わり”という従来型ビジネスモデルとの大きな違いだ。

食、クルマ、レジャー……、多方面に広がる新サービス

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それでは、実際にどのようなサブスクリプション・ビジネスがあるのか、具体的な事例を見てみよう。
※下記に紹介するさまざまな内容は、価格、サービス内容、期間に変化が生じる可能性がありますので、あらかじめご了解ください。

●月額定額制ドリンク飲み放題サービス
「柚柚」「北六」「酒と和みと肉と野菜」「竹取の隠れ家」など、アンドモワ居酒屋30店舗で販売する「ONE MONTH MOWA PACK(ワンマンスモアパック)」は、居酒屋業界初の試みとしてスタートした月額定額制ドリンク飲み放題サービス。
購入したカードの提示で、期間内はドリンク全250種類(生ビール含む)、120分飲み放題となる。
料金は1カ月3000円〜6カ月1万3000円までの4種類がある。

●月額制ステーキ食べ放題
ザ・ステーキ六本木で行っている「ステーキ定額パスポート」は、専用アプリからこのパスポートを購入し、入店時に提示すると、看板メニューの「1ポンドステーキ」や「ハーフポンドステーキ」を、1営業日1枚×1カ月間食べることができるサービス。
1ポンドステーキ用パスポートは 6万4800円(先着15名)、ハーフポンドステーキ用パスポートは 2万9800円(先着30名)。
1ポンドステーキは定価3700円だから、1カ月最大31枚食べれば最大4万9900円、ハーフポンドステーキは定価2200円で、31枚食べれば最大3万8400円のお得になる。

●月額制ラーメン食べ放題サービス
首都圏に展開する野郎ラーメンが行っているのは「1日一杯野郎ラーメン生活」。
専用アプリを購入し、店頭で提示すれば、看板商品の「豚骨野郎」(780円)、「汁無し野郎」(830円)と「味噌野郎」(880円)の3つのラーメンの中から、1日1杯月額8600円の定額で提供するというものだ。「豚骨野郎」なら、12杯食べればもとが取れる。

●車の定額乗り換え放題サービス
中古車買い取り・販売チェーン「ガリバー」を運営するIDOMが提供する「NOREL(ノレル)」は、月額制の自動車乗り換え放題サービス。
公式Webサイトで約600台の中古車の中から好きな車を予約し、近隣の「ガリバー」でレンタルできる仕組み。
月額料金は、保険料込みで1万9800円〜9万9800円(いずれも税別)の5種類あり、料金と比例して選択可能な車種の幅が広がる。

●高速道路乗り放題
NEXCO西日本が行っているドライブパスは、周遊エリア内の高速道路が、定額で乗り放題となるサービスだ。
NEXCO西日本管内のエリアによっていくつかの種類があるが、例えば「九州よかよかドライブパス2018」は、九州内の高速道路が乗り放題となるお得なパス。
普通車の全日4日間プラン8000円、全日3日間プラン6500円などとなっている。インターネットから申し込むことができる。

●定期購入サイト「サブクリ」
全国の注目ショップが厳選したアイテムを、“毎月1回・定額”で届けてくれる定期購入専門のオンラインショッピングモール。
ご当地グルメ、スイーツ・お菓子、コーヒー・紅茶、花・雑貨、酒、エンタメ・ホビーまで、幅広いジャンルから多くの品種が揃っている。

上記以外にもアメリカでは、月額8ドル99セントで毎月1本の映画を見ることができるサービス、月額1ドルで髭剃りを提供してくれるサービスなども登場している。そう遠くない将来に、日本にも登場してくることは容易に想像できる。

行き詰まる従来型ビジネスモデルの救世主となりうるか

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1回売ってしまえば終わり……そんな従来型ビジネスモデルが確実に行き詰まりつつある現代社会。眼前の現実問題として、これまでと同じ手法で業績拡大することに限界を感じている業態も多くある。それらの業態が、サブスクリプション方式のビジネスモデルを取り入れ、生き残りを図っていこうとしているのが昨今の動きといえる。

── サブスクリプション・ビジネスがこれからさらに広がっていくかどうかは、デメリットの項で紹介したいくつかの項目をいかにクリアするかにかかっている。利用者がお得さを感じる価格設定であることに加え、会員だからこそ得られるサービスなど、特別感を与えることができるかどうかが、今後の広がりに大きく影響してくるのではないだろうか。

≪記事作成ライター:三浦靖史≫
フリーライター・編集者。プロゴルフツアー、高校野球などのスポーツをはじめ、医療・健康、エンタメ系など、幅広いジャンルで取材・執筆活動を展開。好物はジャズ、ウクレレ、落語、自転車などなど。新潟県長岡市在住。


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