「貸付型クラウドファンディング」へ大企業が続々と参入


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クラウドファンディング業界への参入に興味を示す企業が昨今、増えている。伊藤忠商事はこのほど、ソーシャルレンディング(貸付型クラウドファンディング)に携わるクラウドクレジットと資本提携すると発表した。

伊藤忠はクラウドクレジットの発行済み株式の約18%を2億円超で取得し、同社経営陣に次ぐ株主となる。同社は「今回の資本提携について、先進的な金融サービスを創造する企業への投資を通じて次世代日本の金融システム構築の一翼を担うと共に、自社のグローバルネットワークを活かして、日本発のテクノロジーやサービスを世界に広めていきたい」と意気込む。
このほか、朝日新聞もクラウドファンディング業界へ参入することを表明。クラウドファンディングはいま、企業から熱い視線を向けられている。それでは今後、どのような企業がクラウドファンディングに参入するのだろうか。これからのクラウドファンディングの流れについて、赤れんが法律事務所の弁護士、杉山央氏にカイセツしてもらった。

今後はインターネット広告のプロが参入?

クラウドファンディングといえば、事業を立ち上げた個人や中小企業が投資家・機関投資家に向けて、インターネット上のプラットフォームで事業詳細を紹介し資金を募るイメージだ。杉山氏は「こうしたプロセスではマーケティング・広告力が必要不可欠」と分析した上で、インターネット広告制作のプロフェッショナルが相次いで参入する可能性があると予想する。

「クラウドファンディングで資金を募る際、共感を生む内容を作らないといけません。そのためにはマーケティングや宣伝力に優れたページを作成する必要があります」。

「それゆえ、インターネット広告に携わる企業がクラウドファンディング業界に参入することが考えられます。例えば、ITのサイバーエージェントの100%出資子会社で、クラウドファンディング事業に携わる『Makuake』などはその一つだと評価できます」。

またクラウドファンディングの種類をみると、出資と引き換えに商品を授与する「購入型」、見返りを期待しない「寄付型」、出資金を失うリスクがあるが高い利回りが期待できる「投資型」などが存在するが、日本の消費者の間ではどの形態が受け入れられていくのだろうか。

日本人に受け入れられやすい貸付型クラウドファンディング

「日本ではクラウドファンディングが上陸して以来、出資すれば製品がもらえる『購入型』が広がりをみせ、そのイメージが定着しました。今後もその傾向は変わらないでしょう。米国ではキックスターターなど投資型のクラウドファンディングが受け入れられていますが、日本では投資型は急速には広がりにくいでしょう。日本人は貯蓄を重視するよう教育されているので、投資型のようなお金を失うリスクを冒してまで投資をしようとするようになるには時間がかかると思います」。

杉山氏はこのように述べた上で、今回の伊藤忠とクラウドクレジットの資本提携で注目されたソーシャルレンディングについて、「これまで投資に保守的だった日本人に対して一石を投じるもの」と位置付けている。

「通常の投資型は収益分配方式で、収益が出なければお金を回収できません。それに対して、ソーシャルレンディング(貸付型)の場合、基本上は投資先が倒産しない限り、出資したお金と利子は戻ってくる仕組みになっています。この方式はハイリスクを嫌う日本人に合っていると考えられ、今後、この形式に慣れた消費者がより利回りの良い投資に積極的になっていく可能性があります」。

実際にこの記事の後、貸付型に参加する企業がいくつか発表されている。日本は現在、「貯蓄から投資へ」と国民の意識改革に取り組んでいる。金融庁が、今年の5月に施行予定の改正金融商品取引法でクラウドファンディングについてこれまでの規制に対して特例措置を設けるなどその普及促進を目指している。ソーシャルレンディングは日本のこうした流れに乗った新しい投資の在り方だと位置づけることができそうだ。

インタビュー先:赤れんが法律事務所弁護士 杉山央氏
記事作成:ライター 藤川健太郎


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