「東洋のラスベガス」といわれているマカオ。きらびやかなイメージでみられるマカオのカジノであるが、昨今、活気が低下している。
中国メディアの華爾街見聞が2015年4月5日にリリースした記事によると、今年3月におけるマカオのカジノの総収入が2億1,487万マカオパタカ(約3204億94,83万7,740円)となり、前年同月と比べて約39.4%減少した。記事によると、10カ月連続で前年同月を下回り続けているという。今マカオに何が起きているのか。またこの現象から何が分かるのか。今回はこの詳細についてカイセツする。
2015年のカジノ月別総収入(粗利ベース)、前年同月比較
単位:100万マカオパタカ
出典:マカオ特別行政区政府博彩監察協調局
http://www.dicj.gov.mo/web/cn/information/DadosEstat_mensal/2015/index.html
中国が汚職撲滅キャンペーンを本格化、マカオのカジノに打撃
マカオのカジノの収入が減少の一途をたどる主な理由として、中国政府の汚職撲滅運動、「反腐敗キャンペーン」が挙げられる。同国政府は3年前から中国共産党の汚職の根絶を目指し、役人たちに目を光らせている。「ハエも虎も一緒にたたく」と鼻息は荒い。これまでマカオは、中国本土から来た役人の公金流用や、不正に手に入れたカネのマネーロンダリング(資金洗浄)の温床となっていると言われてきたため、中国政府はマカオに対し、カジノ中心の産業から脱却するよう構造改革を求めたという。その一方で、本土で倹約令や汚職撲滅強化路線を敷いて役人にプレッシャーを与えたため、本土から「豪遊」に来る観光客は減少した。さらに最近の経済停滞やカジノ内禁煙ルール、マカオ入境許可証発行の際における審査の厳格化も、それに拍車をかけているようだ。
専門家は今後のマカオのカジノ産業について、中国政府の汚職撲滅の流れはしばらく続くため、マカオのカジノ産業もしばらくは低迷するだろうと見ている。
中国政府は依然として厳しい姿勢、汚職撲滅の流れは今後も続く
それでは、マカオの主要産業を圧迫する中国の反腐敗キャンペーンの最近の流れをみてみたい。
中国最高人民検察院(最高検)が4月27日に発表したところによると、今年1~3月、立件した汚職件数は7556件9636人だった。このうち賄賂額5万元(約95万8527円)以上で公金流用金額が10万元(約191万7055円)以上だったのは全体の88%に当たる6649件だった。反汚職賄賂総局の徐進輝局長によれば、政府は今後も国家の幹部に対する取締りを強化するなど、反腐敗に向けて、厳しい姿勢で臨むかまえだ。
一部のメディアでは中国の富裕層を中心とした汚職がらみの総収入が中国国内総生産(GDP)の12%を占めると報じられているほど、中国共産党の汚職は深刻な問題となっているため、政府は汚職撲滅に対して手を抜くことはないだろう。
取締り強化の影響!? 韓国の中国人ショッピング客にも波及
不正を根絶する、というのは非常に良いイメージなのだが、こうした動きは別のところでも影響を及ぼしている。
中国広播網は1月26日、昨年の国内ぜいたく品消費総額が低迷していると発表。中でも男性向けぜいたく品の売れ行きがよくないと指摘した上で、反腐敗キャンペーンが影響していると指摘した。
また3月31日付の韓国連合ニュースによると、今年の春節(旧正月)期間(2月18日~22日)に韓国ソウル小公洞のロッテ百貨店本店を訪れた中国人観光客の1人当たり消費額は、前年比14%減の56万ウォン(約6万円)にとどまり、13年比では38%減だったという。記事はこれらの消費低迷について、中国国内で大々的に汚職撲滅キャンペーンが展開されていることを要因の1つとして挙げていた。
汚職の取締り強化が中国人の国内外の消費に影響を及ぼしている。だとすれば、反腐敗キャンペーンがさらにエスカレートすると、日本で「爆買い」するなどして注目されている中国人たちの消費構造も変化するのだろうか。いずれにしても、中国の汚職が非常に深刻なレベルであることが、記事から垣間見える。
ライター 藤川健太郎
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