誰もが避けて通れない老化……。 介護施設に入ったら、いくらかかるの?


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誰もが直面する介護の問題……。
もし自分が歳をとり介護が必要になったら、いったいいくらかかるのでしょう? 若い方にはピンとこないかもしれませんが、ある年齢以上の人には、一抹の不安が横切るテーマですね。

家族制度が崩壊する以前、わが国では同居する年老いた親を子どもが介護するのが一般的でした。しかし、近年は核家族化が進むとともに、子どもが親の老後の面倒をみるということは、実態としても考え方としてもなくなりつつあります。
 

最近よく耳にする「介護難民」とは?

 
まず、介護保険のおさらいから始めましょう。
平成9年に介護保険法が制定され、40歳以上の人はすべて介護保険の被保険者となりました。被保険者は介護保険料を負担し、介護が必要になったときに各市区町村の自治体から“要介護認定”を受けることで介護サービスを利用できる、というしくみです。

介護保険のしくみがスタートした平成12年、218万人だった要介護認定者数が12年後の平成24年には538万人、さらに平成26年10月には600万人を突破しました(厚生労働省ホームページより)。
入居施設や介護職員の恒常的な不足によって、介護が必要にもかかわらず介護を受けられない高齢者が増えています。

介護制度の中心的役割を担う特別養護老人ホーム(以下、「特養」と略します)は長期の順番待ちをしなくては入居できず、介護保険の財政悪化が顕著になったことから、在宅での介護サービスも次第に受けづらくなっているのが実情です。

このところ、新聞の紙面をにぎわせている「介護難民」という言葉がありますね。
特養に入れず、有料老人ホームの費用も払えないため、行き場を失った高齢者たち。
簡単に言えばそれが「介護難民」というわけです。
そう聞くとこの先、いったいどうなるのか……なんとも心配になりますが、では介護費用はいったいいくらくらいかかるのか、例をあげて説明しましょう。
 

介護保険制度で個人が負担する費用

 
■介護保険料
まず、40歳以上の人は誰もが支払わなければならないのが、介護保険料です。
財政の悪化に加え、高齢化の急激な進行で上昇傾向にあり、その金額は自治体ごと、年齢や所得によっても異なります。

港区の例でみると、65歳以上の場合、平成27年度~29年度の年間の保険料は15段階に分けられます。(広報みなと 平成27年4月11日号参照)
・第1段階:所得80万円以下かつ世帯全員が住民税非課税の人 ⇒ 2万9776円
(略)
・第15段階:所得金額3千万円以上の人 ⇒ 27万3531円
介護保険料ひとつをとっても、これだけの違いがあるわけです。

■介護サービスを受ける際の自己負担金
次に、実際に介護が必要となり要介護認定を受けて介護サービスを受ける場合の自己負担金はどの位でしょうか。
特養への入居を例にとると、相部屋か個室か、また要介護の度合いによっても異なりますが、おおむね「月額8万円強から14万円程度」となります。年間にすると「約96万円から168万円程度」です。

内訳としては「居住費」「食費」「その他費用」「特別養護老人ホーム・サービス費」「サービス加算」で、世帯全員が生活保護の対象である場合など、居住費や食費が低く設定されたり、介護サービス費に自治体から補助金が支給される場合もあります。

いずれにしても、介護保険料に加え、自己負担金を月々支払わなくてはなりませんので、運よく特養に入居できたとして「年間約99万円程度から195万円程度」かかることになります。それなりの費用負担を覚悟する必要がありそうですね。
 

介護付有料老人ホームを選んだ場合

 
特養に入居を申し込んでから入居できるまでの待機年数は年々長くなり、平均で数年、最長では10年近くになると言われています。これを待ち切れない高齢者やその家族は、民間が運営する「介護付有料老人ホーム」を選ぶことになります。

川崎市での入居者殺人容疑による元介護職員の逮捕で社会の注目を浴びるようになった介護付有料老人ホームですが、民間企業が勝手に運営している施設ではなく、れっきとした介護保険の在宅サービスに含まれます。

ここでは杉並区にある介護付有料老人ホームを例にとり、
● 居室面積18平米の部屋
● 年齢70歳以上90歳未満
● 要支援・要介護の人
上記の条件で入居する場合の、概算費用をご紹介します。
※費用・料金については、設備や居室面積、サービスのグレード、入居者時の年齢等によって千差万別です。

■入居時は一時金もしくは年払いが必要
入居する際は利用権として代金を支払います。「一時金」で一括して支払うか、一年ごとに契約を更新して毎年支払い続ける「年払い」が選択できます。
・一時金の場合:約2800万円
・年払いの場合:約400万円

一時金払いの場合、入居後ほどなく死亡するなど、あらかじめ設定された償却年数(例えば7年)を下まわって退去した場合、一部が返還されます。
上記の一時金を払って入居後3年で退去した場合、具体的には下記の計算式で返還されます。
・一時金の85%(2380万円)×(償却年数7年《84ヶ月》 ― 入居月数36ヶ月)÷ 84ヶ月 ⇒ 約1360万円(返還される額)

■その他、利用料がかかる
次に毎月のコストとして次の費用がかかります
・管理費、食費:約25万円
・介護保険サービスの自己負担金:約2万4000円
・介護費用(年払いの場合のみ):要介護3の場合 約3万6000円(介護度によって異なる)
年間にすると「約370万円」になる見込みです。

この施設は比較的ラグジュアリーな設備であるとはいえ、極めて高額の支払いといってよいでしょう。これに前述の入居時費用(年払いの場合)の約400万円が加わると、「合計約770万円」となります。
毎年このような金額を払い続けられる人は、はたしてどれだけいるでしょうか。

その他、施設の快適性や介護サービスの質は異なりますが、高齢者が介護を受けながら入居する施設としては、次のものがあります。
・サービス付きの介護型高齢者住宅:初期費用:数十万円~数百万円、月額費用約30万円
・地域密着型施設のグループホーム:初期費用:なし~数百万円、月額費用約30万円
いずれも収入の限られた老後の支払いとしてはかなり高額です。

── 「介護難民」にならないためにはどれだけの準備をすればよいのか……。
“備えあれば憂いなし”といいますが、元気なうちからよく考え、しっかり準備する必要があるといえるでしょう。

≪記事作成ライター:山本義彦≫
東京在住。航空会社に勤務し、定年退職後、2年間専門学校に通う。現在は介護福祉士として障がい者の施設で勤務中。航空会社在職中より、音楽評論の執筆を始め、現在も続けている。


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