犬のマイクロチップ ── いくらくらいかかるの? 法律で決まっているの?


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無類の動物好きの筆者は、ときおりペットショップをのぞきます。

あるときは、ちょっと大きくなりすぎたワンちゃんの値札が「値下げしました!3万円」となっています。しかし、値札のすみのほうに書かれた小さな文字をよくよく見ると、このワンちゃんには3万円のほかにパック料金が4万7,000円かかると記載されています。
ここで、可愛いワンちゃんであることはいったん置いておいて、「3万円の商品を手に入れるのに、加えて4万7,000円の費用って!これっておかしくない?」と思ってしまったところから、今回の「犬のマイクロチップ」のお話の始まりです。

 

もしかしたら、抱き合わせ商法!?

 

早速、4万7,000円の内訳をみていきましょう。このペットショップでは内訳を明らかにしていませんが、どうやら以下のようなものが含まれているらしいのです。

● 獣医師による健康診断・混合ワクチン(1回目のみ)
● マイクロチップ本体代金+装着代+登録料
● 寄生虫予防
● 3ヵ月の生命保障
● ◯◯ペットクリニックの会員登録料、割引券各種など
「無類の動物好き」と書いた筆者は、直感的にこの価格を「高い!」と感じます。

ワクチン代は種類にもよるでしょうが、1万円はしません。マイクロチップ(後述しますが問題ありだと思います)は、登録料まで含めても5,000円ほどです。
さらに生命保障なんて、ペット好き(飼い主)からしたら、万一亡くなってしまったときに代わりをもらっても仕方がないでしょうし、そのための掛け金なんてわずかなものでしょう。
何より、ほかの項目もほとんど「原価」とは認められないような代物です。そして、「このパック料金を受け入れない限り、ワンちゃんは売りません」と言うのであれば、独占禁止法の「抱き合わせ商法」に該当するような気すらしてきます。みなさんはどう感じるでしょうか。

 

1,000億円のマーケットをにらんだ義務化!?

 

ではここで、もう少しマイクロチップについて掘り下げてみましょう。

検索してみるとすぐに、環境省の「犬猫のマイクロチップの義務化について」というサイトに行きあたりました。表題からして、環境省としては努力義務から義務化の方向にもっていきたい意図を持っていることがわかります。現在の法律と、そこに示されている解説は以下の通りです。

動物の愛護及び管理に関する法律(昭和48年法律第105。以下「動愛法」
という。)では、第7条第3項に所有明示の努力規定がある。この規定に基づく「動物が自己の所有に係るものであることを明らかにするための措置(平成 18年環境省告示第 23 号)」では、家庭動物に装着・施術する識別器具等として、首輪、名札、マイクロチップ、入れ墨、脚環等が示されている。

上記の一文を読んでわかることは、「所有者がわかるようにする努力義務がある」ということだけです。
どこにも「マイクロチップでなければならない」とは書いていませんし、あくまで「努力義務」なのです。

 

マイクロチップには賛否両論ある

 

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なるほど、業界団体や獣医師会は東日本大震災のかわいそうな犬たちの例を出すなどして、さかんにペットへのマイクロチップの埋め込みを推奨しています。さもマイクロチップさえ装着していれば、迷子になったとしても、すぐに愛犬が出てくる(発見できる)よう記述しているサイトも見受けられます。

現在、マイクロチップの装着が義務づけられているのは、特定動物に指定されている危険が伴う動物だけですが、そこには「なんとかこれをペットの犬猫にまで拡大したい」という、ある種の意図を感じずにはいられません。

それはそうでしょう。1頭5,000円としても、大雑把にいって日本にいる犬猫が2,000万匹ですから、1,000億円のマーケットが、犬猫にマイクロチップの装着を義務化するだけで生まれるのですから……。

 

犬猫のマイクロチップ装着には、賛否両論ある

 

ですが、筆者はここで冷静にならなければならないと思います。
未曽有の大災害は別にするとして、通常の迷子犬は迷子札が首輪等についていて、飼い主が捜す気にさえなれば、ほぼ見つかるはずです。そして「マイクロチップを装着していたから見つかった」という事例は、ネット上にはほぼ見つけられませんでした。

それどころか、マイクロチップに反対する立場の人のページには、欧米では「マイクロチップ装着が原因でがんになった犬の飼い主さんが裁判を起こしている」等の記述が見受けられ、犬猫のマイクロチップ装着には、賛否両論あることがわかります。

「本当に必要なものならペットのために装着するけれど、いらないものなら体を痛めてまで入れたくない」……、これが多くの飼い主さんの切実な意思ではないでしょうか。ペットを飼っている方は、どう考えますか?

また、ペットショップによっては、「法律で決まっている」というように誤解させるニュアンスで広報しているところもあります 。ペットを取り巻く世界には、まだまだ不可思議なお金が動いているようですが、「あふれる情報や感情に流されず、何事も冷静に自分で見て判断する」ことがますます必要だと筆者は感じました。

«記事作成ライター:前田英彦»
同志社大学工学部(現理工学部)出身。株式会社リクルートに11年間在籍、広報室マネジャーなどを経て独立。数々の起業家、創業経営者との出会いを通して、日々成長中。独立時に設立した会社は現在18期目を迎えている。『レジを打ったことのない人間に小売りの何がわかる!』と流通業の顧客に言われて悔しかったことがきっかけで、たい焼き屋も展開。大学を卒業して30年。突如理系仕事に目覚め、最近では製造業の職人になってしまったという噂も。ダルメシアン、テニス、ゆで卵を愛す。


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