2020年に迫った、東京オリンピック・パラリンピック開催。
この一大ムーブメントを前に、観光庁がスポーツ・観光立国戦略のひとつとして打ち出している、スポーツツーリズムが注目されています。
スポーツツーリズムとは、「観るスポーツ」「するスポーツ」「支えるスポーツ」の3つのスポーツ+観光のこと。簡単に言えば、スポーツで日本を楽しもうというものです。
日本はスポーツを「観る」にしても「する」にしても、とても恵まれた環境にあり、インバウンド需要や地方創生の一端を担うとして、スポーツムーブメントが、ひとつの経済効果を生み出しているのですね。
今回は、「する観光」にスポットを当てます。
新たな観光資源となる市民マラソン
2007年に東京マラソンが開催されて以来、圧倒的に競技人口が増えた市民マラソン。現在、日本全国のフルマラソンとハーフマラソンだけで300程度開催されており、さらに距離の短いマラソンも含めれば、相当数の数が開催されていると言われています。人気の大会では、参加者数が2万人前後に達するため、その交通費、宿泊代や飲食代等、地域に波及する経済効果も大きいと言われているのですね。
また、地域独自のカラーを出すことで、新たな観光資源となっている例も。
たとえば、富山県黒部市で行われる「黒部名水マラソン」の今年のエントリー数は1万人以上。山あり川あり海ありの自然あふれるのどかな町を駆け抜けるマラソンであり、レース終了後には、名水ポークやズワイガニの鍋、名水だんご、ますの寿司もいただけるというサービスも人気です。
高橋尚子選手など元オリンピック選手もゲストに招待されるという豪華な顔ぶれも魅力となっています。
これは一例ですが、イベントごとに走る+αの楽しみがあるのが、多くの市民マラソンの特徴となっているようです。
市民マラソンだけではなく、サイクリング、トレッキングから、スキーや登山、パラグライダー、さらにラフティングやダイビングなど多種多様なアウトドアが楽しめるのが、日本の自然環境の素晴らしい点と言えるでしょう。
スポーツと観光を合わせることで、これまで観光地化されていなかった地域にも、新しい人の交流が生まれているようです。
パウダースノーが、外国人観光客を虜に
外国人旅行者に人気のスポーツといえば、やはりウィンタースポーツ。
海外に人気といえばニセコが有名ですが、訪日回数が増えるなかで他の地域にも来訪が広がっています。
とくに長野県白馬村は、6万人を超える外国人が訪れており(うち3万4000人強がオーストラリアから来日)、高い人気の地となっています。
オーストラリアやニュージーランドは南半球のため季節が反対になり、しかも時差がないので、気軽に来訪できるというわけ。
人気の理由は、雪質と豊富なバリエーションのゲレンデ、そして温泉と地元の人との交流。
やはりスポーツ+αの楽しみが、観光客を惹きつけているのですね。
長期滞在型のインバウンドに歓迎ムード
白馬村は90年代前半のスキーブームの後、観光客は激減したこともあり、長野オリンピック以降、外国人観光客の受け入れに積極的でした。
当初は韓国に的を絞り誘致展開を行っていましたが、幅広くインバウンド事業を進めるなかで、オーストラリアから東南アジア方面まで、多くの観光客が訪れる場所となったのです。
とくに外国人は1週間〜10日前後と長期滞在する富裕層も多く、採算がよく、受け入れ側にしても、インバウンド需要の増加はありがたいと言えるのです。
スポーツを通して都市の知名度やイメージを押し上げ、日本のみならず世界に発信していく──。
日本の気候風土にあった地域活性化のあり方が、新しい観光スタイルとして、定着していくことは間違いないでしょう。
≪記事作成ライター:中村深雪≫
ライター。千葉県出身。4月より金沢在住。映画、舞台、飲食、住まいについての広告・取材記事や、著名人インタビュー、街歩きコラム等を手がける。関東から北陸に来て、日本の魅力を再発見。現在は幅広いジャンルで執筆中。
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