訪日外国人旅行客が、ここ数年爆発的に増えていることは、皆さんご存じのとおりです。
日本を訪れた外国人観光客の数(2015年)は、過去最高の1974万人。2008年の観光庁発足以来、ビザ要件の緩和、免税対象拡大などの政策が施行され、さらに民間企業の取り組みや円安の追い風が加わり、日本は「遠い国」から、「近くて魅力のある国」へと様変わりしています。
今年1月、政府は「2020年に年間3000万人の訪日外国人観光客を目指す」と発表。
インバウンドという言葉が流行語になった今、その実態に迫ります。
ひと月で、200万人超の旅行者が日本に!
インバウントとは「訪日外国人旅行」、あるいは「訪日外国人旅行客」のことを指し、これまでの傾向は日本人の海外旅行者に比べ、圧倒的にインバウンドが少ないことが日本の実情でした。
その傾向が長らく続いた大きな要因が物価高です。つまり、宿泊、移動、買い物どれをとってもお金がかかるうえ、外国人にとって日本は「よくわからない国」という認識だったのです。
この実情に対し、国交省は「ビジット・ジャパン事業」を展開。大々的に海外での日本PRをスタートさせます。さらに、ビザの緩和や免税対策などの成果もあり、2003年には521万人だったインバウンドが、10年後の2013年に1000万人を突破。
今年3月には、初の200万人以上(単月)の外国人が訪れ、その勢いはさらに増しています。
一方で、昨今のホテル不足によって「民泊制度」が話題になるなど、観光客受け入れに対する新制度がスタートしていますが、今後ますます増加が見込まれるインバウンド需要に対し、日本はどのように変化していけばよいのでしょうか。
消費額は3兆4771億円。うち40%は中国人観光客
観光の楽しみはやはりショッピング。中国人の「爆買い」に代表されるように、インバウンドのもたらした恩恵はその消費量ともいえるでしょう。
昨年の外国人旅行者の消費額は3兆4771億円。初めて3兆円を突破。
うち中国が1兆4174億円で全体の4割を占め、次いで台湾5207億円、韓国3008億円、香港2627億円、アメリカ1814億円と続きます。
ちなみに、外国人旅行者の一人あたりの日本国内での支出は17万6168円。
観光庁は、2014年10月1日から一般物品だけでなく消耗品も免税対象にしましたが、今年5月1日から、外国人の免税金額を、現在の1万円超(一般物品)から、すべて5000円以上に引き下げ、さらに消費をうながしています。
インバウンド消費の流れを読み取ることは、もはやビジネスに欠かせないものになっています。
インバウンド観光は、地域活性化に貢献
街角で見かける外国人旅行者を見てみると、「ガイドブック的」なものを手にする人から、SNSなどから得た情報をもとに、行きたい店やスポットを検索する人など、その手法は多様化しているようです。つまり最近の海外旅行者は、日本人には想像しがたい「オリジナルの旅」を楽しむ傾向にあり、日本人にとって予想外のスポットに多くの旅行者が訪れていることから、地方都市もインバウンド観光へと力を入れて始めています。
東京都、大阪府、千葉県、京都府といった大都市以外の地方都市で、インバウンド観光に成功しているのが、九州方面です。
大都市圏の福岡県や長崎県はもちろん、全国でも上位に入る訪日観光客が訪れる大分県は、日本有数の温泉地。「おんせんけん」の名で、海外での認知度は非常に高く、別府などの町を歩けば、驚くほどの数の外国人とすれ違うことでしょう。
このほかにも、ウィンタースポーツを楽しめる北海道や長野県。
関西圏であれば、ダントツ人気の京都府、そして兵庫県、奈良県。
世界文化遺産に登録された富士山が望める静岡県、山梨県。
さらに、広島平和記念資料館、原爆ドーム、厳島神社への来訪を望む外国人も非常に多く、ある機関が実施した「旅行満足度の高い都市」のランキングでは、広島県が上位にランクイン。
インバウンドが日本経済を活性化させる
外国人観光客の日本でしたいことの上位は「日本食、日本酒を味わうこと」「ショッピング」「繁華街の街歩き」「自然・景勝地観光」「温泉入浴」など……。そして、次回の来日時にしたいことには「四季の体感」も。
こうしたリピーターを狙い、JRグループ6社は「ジャパン・レール・パス」なる共同パスを、外国人観光客に向けて販売(購入条件あり)。
JRグループの全線・新幹線から特急列車、急行、快速、普通列車まで全国のJRの鉄道、バス、フェリーを使えるパスで(※一部利用できない列車、区間あり)、たとえば、7日間パスなら、おとな2万9110円 こども1万4550円で期間内を全国各地で乗り放題。日本中を旅行できるオトクなパスとして、インバウンドからの評判も上々のよう。
── 最後に。熊本県、大分県も海外旅行者にとって、非常に人気の高い観光地です。
日本を旅行する外国人の満足度をより高めるためにも、インバウンドのこれからに着目し、官民一体となって受け皿を整えていくことが求められますが、何より、先の震災によって甚大な被害がもたらされた熊本県、大分県の一日も早い復興は、日本人のみならず訪日外国人観光客の願いでもあるでしょう。被災地に、平穏な日常が戻ることを心より願ってやみません。
≪記事作成ライター:中村深雪≫
ライター。千葉県出身。4月より金沢在住。
映画、舞台、飲食、住まいについての広告・取材記事や、著名人インタビュー、街歩きコラム等を手がける。
関東から北陸に来て、日本の魅力を再発見。現在は幅広いジャンルで執筆中。
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