近年、モノやサービスを交換・共有する「シェアリングエコノミー」という新しいマーケットが、欧米を中心に拡大しています。
最近は日本でも、カーシェアリングや民泊、フリマなどのシェアビジネスが注目を集め、時代のニーズにフィットしたサービスとして、私たちの暮らしの中でますます広まりを見せています。
いまや世界的な潮流となったシェアリングエコノミーの新たな可能性について、市場拡大の背景や多様なサービスをご紹介しながら、連載シリーズで詳しく見ていきたいと思います。
そもそもシェアリングエコノミーとは?
シェアリングエコノミーとは、主にインターネットを通して「個人が保有する遊休資産の貸し出しを仲介するサービス」のこと。使っていないモノやリソースなどを貸し出すことで、貸主(貸す側)は保有資産を有効活用して収入を得ることができ、借主(借りる側)は余分なモノやスペースを所有することなく、手軽に安く利用できるという仕組みです。
たとえば、空き部屋や住宅を活用した民泊サービスをはじめ、一般ドライバーの自家用車で目的地まで移動できるサービス、個人の所有するモノやスペースを利用するサービス、個人の専門的なスキルを空き時間に提供するサービス、空いている駐車スペースを提供するサービスなど、多種多様な形態のサービスが登場しています。
また、個人間での貸し借りには、信頼関係の構築が重要なポイントとなります。そのため、多くのシェアリングエコノミーサービスでは、Facebookなど既存のSNSとの連携や、ユーザー同士のレビュー評価制度を導入して信頼性の確保に力を入れています。さらに一歩進んで、アメリカではネットワーク上での活動履歴や利用サービスから、ユーザーの信頼度を総合的にスコア化するサービスも登場しています。
このように、ソーシャルメディアの特性である「情報交換によるコミュニティ機能」を活用し、従来の経済形態では得られなかったメリットや、Win-Winの関係を両者(貸主・借主)にもたらすのが、シェアリングエコノミーの最大の特徴といえるでしょう。
国内外で急速に拡大するマーケット
シェアリングエコノミーのビジネスモデルを生み出したのは、2008年に民泊の仲介サービスを始めた米カリフォルニア州のAirbnb(エアビーアンドビー)といわれています。その後、アメリカではタクシーやハイヤーの配車アプリを運営するUber(ウーバー)をはじめ、さまざまなモノ・リソース・スペースを仲介するサービスが登場し、またたく間に世界中へ広まっていきました。大手コンサルティングファーム PwCの推計によると、2013年に約150億ドルだったシェアリングエコノミーの市場規模は、2025年に約3350億ドルまで成長すると見込まれています。
AirbnbやUberなど米国発のサービスが上陸した日本でも、この数年で国内発のシェアリングエコノミーサービスが次々と登場。今年(2017年)6月の民泊新法(住宅宿泊事業法)成立を追い風に、急速な市場拡大と多大な経済効果が見込まれています。矢野経済研究所の推計によると、来年2018年度のシェアリングエコノミーの国内市場規模は、2014年度の2倍(約462億円)に拡大すると予測されています。
シェアリングエコノミー普及の背景と要因
世界的にシェアリングエコノミーが拡大した背景には、インターネットやスマートフォン・タブレット端末の普及など、情報通信テクノロジーの発展があります。たとえば……
◆インターネットの普及により、個人間の取り引きが容易(かつ低コスト)になった。
◆スマートフォンの普及により、場所や時間を問わず、いつでもどこでもサービスを利用しやすくなった。
◆サービスを提供する側も、スマートフォン・タブレットからアクセスして、ユーザーや情報を手軽(かつスピーディー)に管理できるようになった。
◆ソーシャルメディアの普及により、個人間のニーズのマッチングや信頼性の確保が可能になった。
また、21世紀に入って過剰生産・過剰消費の経済活動が見直され、人々の消費スタイルが所有から共有へと変わってきたことも、シェアリングエコノミーが受け入れられた大きな要因といえるでしょう。一つの資産を多くの人で共有すれば、それらを最大限に活用することができ、モノ・スペース・お金も節約できる……その考え方は、現代社会のキーワード「エコロジー」と深くつながっているような気がします。
―― 以上、シェアリングエコノミーの基本的な仕組みや、急速に拡大する市場について見てきました。次回はシェアリングエコノミーのさまざまなサービスについて、国内外の事例を取り上げながら詳しくご紹介していきたいと思います。
※参考/総務省情報通信白書、シェアリングエコノミーラボ
≪記事作成ライター:菱沼真理奈≫
約20年にわたり、企業広告・商品広告のコピーや、女性誌・ビジネス誌などのライティングを手がけています。金融・教育・行政・ビジネス関連の堅い記事から、グルメ・カルチャー・ファッション関連の柔らかい記事まで、オールマイティな対応力が自慢です! 座右の銘は「ありがとうの心を大切に」。
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