カーシェアリングが急成長する理由と、車を取り巻く変化


クラウドファンディング,ソーシャルレンディング,マネセツ

いま、経済の世界でもっとも熱いキーワードのひとつが、シェアリングエコノミーだ。

シェアリングエコノミーは、住まいでも家具でも洋服でも、あらゆるものを自分で所有するのではなく、他人と共有してコストを削減しようという新しい概念。なかでも、急激に成長を遂げているのが、車に関するシェアだ。
ひと昔前は、マイカーは自分自身のライフスタイルやステイタスを誇示するものであり、運転席に座ってハンドルを握れるのはオーナーだけ……という考えが一般的だったが、その概念も様変わりしている。
大枚をはたいて車を所有するのではなく、他人と安価にシェアして使いこなそうというライフスタイルには、いったいどんなメリットがあり、なぜ急成長を遂げているのか。今回は2回に分けて、シェアリングエコノミーを多面的に見ていこう。

日の出の勢いのカーシェアリング

ご存じのとおり、車の購入者(所有者)は年を追うごとに減り続けている。中でも、30代から下の若者層が、どんどん車を買わなくなっているという。ひと昔前のように、車を所有することがステイタスになるような時代はとっくに過ぎ去り、わざわざ高額な車を持って、ランニングコストを払う必要はなく、もっとほかの実用的な価値のあるものにお金をまわそうという若者が増えているのだ。
一方で、自分の車は持たないものの、その便利さは捨てがたいのも事実。ならば、他人とシェアして、必要なときにだけ使いこなそうという考えが、いま急速に増えている。
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図(出典/交通エコロジー・モビリティ財団)を見てほしい。
ここ8年ほどの日本のカーシェアリングの会員数と車両数の推移だ。2010年には会員数1万5894人、稼働している車両数は265台だったものが、2017年には会員数108万5922人、車両台数は2万4458台と、それぞれ100倍にもなっている。これは驚くべき急成長だ。

たとえば、カーシェアリングで大きなシェアを誇っている、業界最大手の「タイムズ24」。
本業の駐車場経営を強みに、9年前にこの事業に参入。商業施設や住宅街、それに地方の駅前などに所有する駐車場を拠点に、一気に規模を拡大させ、いまでは47都道府県すべてでサービスを展開している。会員数はおよそ90万人、利用できる車の数は2万台にのぼっている。

カーシェアリングは、なぜこんなに勢いを増して成長を続けているのか。次の項ではその理由を検証しよう。

15分206円。この安価で車が借りられる?

流行のカーシェアリング、いったいどんな点がお得なのか。

まず、従来のレンタカーなどと比べて、何しろ手軽に車が借りられることに大きなメリットがある。たとえば「タイムズ24」の場合でいえば、事前に登録手続きさえしておけば、手元のパソコンかスマホアプリを使ってすぐに予約の連絡が可能。近くのタイムズパーキングに常駐している車が空いていれば、その場で簡単に借りることができる。面倒な対面での書類手続きはいっさいない。誰とも接することなくスマホを使ってドアを開錠し、ダッシュボードなどに入ったエンジンキーを取り出してスタートということになる。

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カーシェアリングはこうして手軽に車が借りられるだけでない。まだまだメリットはある。

まず、15分で206円から、という相当細かい値段設定も大きな特長だ。そのため、ちょっとした用事などに使え、その分レンタカーなどと比べ割安になる傾向がある。また、この料金にはガソリン代や保険料が含まれるため、設定料金以外に費用は発生しない。車検やメンテナンスの費用が必要ないことはいうまでもない。
さらに、従業員との対応もないため24時間、いつでも予約と借り出しができるうえ、支払いもあらかじめ登録したカードでの引き落とし。いざ乗車して用事をこなしていると、どうしても時間のことを忘れがちだが、カーシェアの終了時間が迫ると「あと○分で契約時間が終了になります」とスマホにアラームメールが届く便利さも! まさに、従来のレンタカーとは、一線を画した新しい車貸し出しのシステムなのだ。

ちょっとしたドライブや買い物、また、子どもの送り迎え、友人との待ち合わせなどに、とても便利。車をもたなくても、車をツールとして利用できる、新しいシステムである。こうした点から日の出の勢いで需要が高まっていることがよくわかる。

個人だけではない。急速に増える法人需要

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こうしたカーシェアシェアリングの新しいしくみを活用しているのは、一般の個人消費者だけではない。
実は、このブームを後押ししているのは法人の需要なのだ。

たとえば、ある大手の不動産会社を例にとると、昨年から全国の営業所で、カーシェアリングの利用を始めたという。約2000人の営業マンが、各地域の用途に合わせ、車種や時間、場所などを必要に応じてインターネットで予約し、営業活動に活用しているという。

その会社では約600台の営業車を所有しているが、車のリース代や駐車場代、さらにはガソリン代などを含めると、1台あたり毎月7万円の維持費がかかるという。カーシェアリングだと、これらの経費をかなり圧縮できるとのこと。
たとえば、地方への出張などの場合、最初から車で出向くのではなく、まずは電車で移動し、現地でカーシェアリングする方法をとることもできる。法人にとっても非常に使い勝手のよいシステムなのである。

商売敵も、カーシェアリングに参入?

個人にとっても、法人にとっても、非常に使い心地のよいカーシェアリング。

この急成長に目をつけ、意外なことに既存の自動車メーカーも参入を始めている。カーシェアリングが増えればマイカーは売れなくなるだろう……普通はそう危惧しがちだが、実際のところホンダなどの大手が続々参入をスタート。一見、商売敵(がたき)のように受け取れる自動車メーカーでさえ、時代の潮流の変化に乗り遅れまいと、多様な販売チャネルを求めていることになる。いままさに業界全体が大きな変化を遂げているのだ。

── 次回は、カーシェアリングにまつわる大手自動車メーカー参入の動き。加えて、カーシェアリングが持っている意外な落とし穴、デメリットなどについて解説しよう。

≪記事作成ライター:小松一彦≫
東京在住。長年出版社で雑誌、書籍の編集・原稿執筆を手掛け、昨春退職。現在はフリーとして、さまざまなジャンルの出版プロでユースを手掛けている。


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