ミレニアル世代とはあまり聞きなれない言葉だが、「Millennial Generation 千年紀の世代」という意味だ。
厳密な区分けがあるわけではないが、1987年から1995年あたりに生まれた現年齢が24~32歳くらいの若者たちのことを指す。平成が終わろうとする中、誕生してまもなく30年が経過する若き彼ら彼女たちの考えや行動は、従来の大人たちのそれとは、さまざまな面で明らかに異なるという。
いったいどんな価値観を持っているのだろうか。今回はその生き方について探ってみよう。
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ミレニアル世代って、どんな人たち?
上に記したMillennial Generationと呼ばれる現在24~32歳の人たちが生まれ育ったのは、いったいどんな時代だったのだろう。
時代的には、彼らが生まれる前後にバブルが崩壊していて、それまでの華やかで金余りの世相、株や不動産が青天井に上昇したお祭り騒ぎは終わり告げ、以後、世の中は大きく勢いを失っていく。バブル期終焉後の1990年代前半から経済が低迷した期間を「失われた20年」あるいは「失われた25年」というが、まさに、そうした日本低迷期に育ったのがミレニアル世代ということになる。
いい学校を出て、いい会社に入り、頑張れば収入が増えて欲しいものが手に入るという、それまで当たり前とされていた人生の方程式も幻想的で、過去のもの……。そうした価値観を子どもの頃から刷り込まれて育ったのがミレニアル世代だ。
一方で彼ら彼女たちは、デジタル・ネイティブの世代でもある。子どもの頃からパソコンや携帯電話などのモバイルが身近にあり、情報ツールとしてインターネットを駆使し、友人との交流やビジネスでのやりとりはSNSを通して行うのが当たり前となっている。
昭和に生まれ育った世代とは、明らかにものの見方や考え方、また、消費行動やビジネスシーンでも違った動きをしている。では、具体的に彼ら彼女たちはどんな生き方をしているのだろうか。
ミレニアル世代の特徴/ダメならさっさと見切りをつける
バブル崩壊前後に誕生し、経済の低迷期に育った彼ら彼女たちは、会社への帰属意識が低い。就職戦線を勝ち抜いて入った会社であっても、そこで定年まで頑張ろうという気持ちをもっている者はほとんどいないと考えてよく、2~5年以内に転職を考えている人が半数近くにのぼる。
社内でも、課長や部長を目指して頑張るというよりは、仕事の中身に興味が持てるかどうが大切で、面白くない仕事なら、さっさと見切りをつけて会社を辞めてしまうことに、抵抗感などもっていない。
もちろん収入は高いに越したことはないが、身を削って働く努力や、たくさんのことを犠牲にしてまで稼ぎたいというような考え方をもっていないのが、この世代だ。
ミレニアル世代の特徴/クルマにも飲酒にもあまり興味がない
もうひとつ、ミレニアル世代がそれまでの世代と異なる大きな特徴は、彼ら彼女たちがものの消費に重きを置いていない点だ。
図を見てほしい。この図は総務省がまとめた「若年層の消費動向」をもとにまとめたものだが、1996年と2016年を比較した30歳未満の勤労単身世帯の消費性向を見ていくと、若者の消費離れが顕著になっていことがわかる。
たとえば「クルマを趣味とするか」とその年の30歳未満に問うと、1996年には38.6%の人がクルマを趣味にしていたが、2016年には17.6%にまで減っていて、多くの人がクルマへの興味を失っている傾向がわかる。同じく飲酒にしても76.6%から67.7%へ減少し、消費性向全体で見ると、82.7%から73.5%へと落ち込んでいる。
ミレニアル世代の特徴/ものの消費に重きを置かない
昭和の世代なら、その多くがお金をためてマイカーを買いたいと思ったものだ。クルマが欲しいのも事実だが、それがかっこよさや成功の証という意味づけもあった。しかし彼ら彼女たちは、クルマにステイタスなど感じてはいない。もし彼ら彼女たちが車を使うとするなら、レンタカーやシェアリングカーで十分ということになる。余分なお金は使わず、クルマは必要なときに必要な道具として利用するツールでしないのだ。つまりは、わざわざ家の敷地に駐車場を造ったり、また、大金をはたいてクルマを停めるスペースを借りることは無駄な費用、という考え方なのだ。
このように、Millennial Generationと呼ばれる現在24~32歳の人たちを見ていくと、昭和世代が抱いていた幸せや満足は別のところにあり、クルマや家など物欲を満たすことが人生の目的、幸せの証ではない……と考えなくなった世代といえるだろう。
ミレニアル世代の特徴/人見知り傾向で、SNSを好む
1981から1995年生まれの彼ら彼女たちは、子どもの頃からパソコンや携帯電話が身近にあった。情報の入手方法は、それまで新聞や雑誌などではなく、画面上のインターネットだ。また、友人をはじめとする他人との交流は、メールやラインなどSNSが中心で、電話もあまり使用しない。そのため、リアルな人間関係を保つことが苦手な若者も多い。会わなくても用は済む。会えば余計なあつれきを生む可能性もある。結果として人付き合いが下手、異性に興味を持てない、あるいは興味があってもうまく交際できない、という若者も増えている。バーチャルは得意だが、リアルは苦手、という人々が増えているのだ。
ミレニアル世代の特徴/夫婦は平等
この世代は、学校で家庭科を男女一緒に学んだ世代だ。男は外に出て働き、女は家で家事、などという固定観念はハナからもっていない。学校を卒業すれば、女性でも特別な理由がない限り、ほぼ100%働き始める。彼女たちは結婚しても、また子どもが生まれても仕事を辞めない。その結果、当然家事は男性にもまわってくる。朝の出勤前にゴミを出したり、風呂掃除を夫が担当するのは当たり前。夫自ら積極的にキッチンに立ち、凝った料理に取り組むケースも増えている。子どもができれば、保育園への送り迎えなどは、夫婦のどちらか、できるほうが行う。つまり、男女の共同意識や平等意識が、これまでの世代とは比較にならないくらい強くなっている。
ミレニアル世代の特徴/世の中をよくしたい意識が強い
この世代はまた、災害や事件、事故をたくさん経験している。1995年に阪神淡路大震災を間近に見て、地下鉄サリン事件を知り、そして2011年には東日本大震災を経験している。彼ら彼女たちにとってこうした災害や大事件は、自分の周りでもいつ起こっても不思議ではないという認識をもっている。そのため、政治や社会に対しての関心も高く、SNSなどで盛んに意見を発信し、また、積極的にボランティア活動に従事する若者も増えている。少しでもよい世の中にしたい……という意識を強くもった世代でもある。
ミレニアル世代を取り込むことが企業生き残りのカギ
上に記したような特徴が、もちろんすべての若者にあてはまるわけではないが、昭和に生まれて育った世代とは明らかに異なる価値観を持っていることがわかるだろう。
クルマは所有せずに借りたいときだけ安価で利用する。スマホのフリーマーケットアプリで古着やグッズなどを売ったり買ったりして、安く仕上げる……。さらに、定額制のフレンチレストランで元をとるまで食べつくす……。
そして企業は、この“奇態な”ミレニアル世代や、その次の世代を見据えて商品やサービスをこれから提供していかなければならない。そこに乗り遅れた企業は確実に滅ぶことになるだろう。日本の文化や伝統の継承も大事だが、新しい時代の価値観に対応した企業努力が必要ということだ。
新世代と呼ばれる「Z世代」が、すでに台頭している?
昭和世代の筆者からすれば、同じ日本人でありながら、まるで異星人のように感じる“奇態な”「ミレニアル世代〈1987から1995年生まれ〉=デジタル・ネイティブ」だが、ちまたでは「Z世代〈1996から2012年生まれ〉デジタル・パイオニア」と呼ばる次の世代が台頭し始めている。
この「Z世代」は、米国の人口の4分の1を占めるほどの人口グループとされ、ミレニアル世代が占めていたポジションは、新たな消費者グループ「Z世代」に取って代わられようとしているらしい。
そんな2000年前後に生まれた「Z世代」が、まもなく成人しようとしている。彼ら彼女たちが社会に出て、世の中の第一線に立つようになったとき、いったい世の中にどんな変化が生じるのか。それはまだ想像もできないが、気になる「Z世代」の価値観や生き方については、またあらためて報告しよう。
≪記事作成ライター:小松一彦≫
東京在住。長年出版社で雑誌、書籍の編集・原稿執筆を手掛け、昨春退職。現在はフリーとして、さまざまなジャンルの出版プロでユースを手掛けている。
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