2016年5月、マクドナルドの前CEOエド・レンシ氏が、「米国で広がる最低賃金上昇の動きはロボット革命を引き起こすだろう」と、某ニュース番組で断言。
さらに「フライドポテトを袋に詰めるだけで時給15ドルも払わなくてはならない労働者を雇うより、3万5000ドルのロボットアームを買うほうが安いのです」とも。
ロボット社会の到来を暗示するような氏の発言からは、米国の今後の失業者数増大を暗喩させますが、一方で、残業・休日が少なく、世界と比較しても過酷な労働環境に置かれる日本人。
意外と知らない、日本国内の都道府県別最低賃金と、平均年収、転職事情とは?
キホンのキホン、地域別最低賃金
まず、日本では労働基準法(労基法)があり、同法では「この法律で賃金とは、賃金、給料、手当、賞与その他名称の如何を問わず、労働の対償として使用者(雇用主)が労働者に支払うすべてのものをいう」と定義されています。
また、日本では地域別最低賃金が設定されており、それは毎年改定されていることをご存じでしょうか? この最低賃金はパートタイマー、アルバイト、臨時、嘱託など雇用形態や呼称に関係なく、セーフティネットとして各都道府県内の事業場で働くすべての労働者とその使用者に適用されるもの。ただし、【18歳未満または65歳以上の人】【雇い入れ後、一定期間未満の技能習得中の人】【その他当該産業に特有の軽易な業務に従事する人】は対象には含まれません。
気になる地域別最低賃金 上位&下位ランキングは?
地域別最低賃金 上位ランキング データ出典先:厚生労働省
■第1位/東京都 907円 ■第2位/神奈川県 905円 ■第3位/大坂府 858円
■第4位/埼玉県 820円 ■第4位/愛知県 820円 ■第6位/千葉県 817円
■第7位/京都府 807円 ■第8位/兵庫県 794円 ■第9位/静岡県 783円
■第10/三重県 771円 ■第11位/広島県 769円 ■第12位/北海道 764円
※最低賃金時間額【円】 ※平成27年度改定状況
地域別最低賃金 下位ランキング データ出典先:厚生労働省
■ 第1位/鳥取県 693円 ■第2位/宮崎県 693円 ■第3位/高知県 693円
■ 第4位/島根県 693円 ■第5位/沖縄 693円 ■第6位/大分県 694円
■第7位/長崎県 694円 ■第8位/熊本県 694円 ■第9位/佐賀県 694円
■第10位/秋田県 695円 ■第11位/岩手県 695円 ■第12位/青森県 695円
※最低賃金時間額【円】 ※平成27年度改定状況
最新の地域別最低賃金改定状況は、厚生労働省HPで確認を↓
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/minimumichiran/
これまで800円台後半を維持してきた第1位の東京都は、平成27年度に初めて900円を突破。もちろん、最低賃金は都道府県の経済状況によって異なるものですが、第1位の東京は総じて家賃も物価も高く、地方より生活費がかかるゆえ第1位に。
この記事を読んでいる人がアルバイトやパートに従事する人であったり、息子さんや娘さんがアルバイトをしている場合は、最低賃金を下まわっていないか確認してくださいね。
あなたの隣にいる人の懐事情は?
日本国内では消費低迷により、消費税増税に対する議論が昨今盛んですが、日本人の平均年収はおおむね400万円くらいといわれています。
あるデータによると、2009年以来マイナス傾向にあった平均年収は、13年に一度プラスへ転じたものの、14年には再度マイナスへ転じ、さらに15年度の結果も前年を割ることに。
そこで、2015年度の5歳ごとの平均年収(年齢別性別)を見てみると……、
■25歳 : 337万円(男 350万円/女 321万円)
■30歳 : 420万円(男 441万円/女 377万円)
■35歳 : 469万円(男 503万円/女 383万円)
■40歳 : 530万円(男 567万円/女 424万円)
■45歳 : 588万円(男 629万円/女 441万円)
■50歳 : 658万円(男 694万円/女 483万円)
■55歳 : 730万円(男 746万円/女 564万円)
■59歳 : 835万円(男 858万円/女 451万円)
※ 年齢別と性別の平均年収(手取りではなく支給額)
上記はあくまで平均ですが、職種別の平均年収ランキングを調べたところ……。
9年連続1位の「投資銀行業務」(779万円)を筆頭に、営業系の「MR」(731万円)が2位、「経営企画/事業企画」(695万円)が3位、次いでファンド・マネジャー/ディーラー/アナリスト(687万円)が4位に。
以下、電気・電子・機械系の技術職であるセールスエンジニア、FAE、開発・製品企画、プロセスエンジニア、回路・システム設計が600万円台〜500万円台後半で推移。
同様に、企画・管理系である法務・財務・医療系営業、知的財産・特許、人事、広報・IRに携わる人の平均年収も600万円台〜500万円台後半で推移。
お金を扱うエキスパート、もしくはその道に精通した専門職が高収入を得ている傾向にあることは確かであり、ここ数年の顕著な傾向としては、営業企画、人事、財務、不動産企画/プロパティマネジメントといった職種が、前年度より50万円以上アップしているようです。
離職はやっぱり「悪」でしょうか?
さて、クラウドファンディングのサイトに入ってきているあなたは、就職活動中ですか?
それとも、これから転職しようと考えている最中ですか?
あるいは、新たな事業を始めようと思案中でしょうか?
転職はもとより、新卒での就職活動など、心機一転職探し中の人は、新たなステージで得られる賃金(賞与、手当等)が気になるところですが、ひとつのバロメータとして「離職率」に着目するのもよいでしょう。事業を始めようと考えている人であれば、、収益・売り上げ見込みはもちろん、同業他社の離職率に着目してみることも手です。
離職率とは、ある期間内でどれだけの割合の社員が辞めたかを示すもの。
でも、「離職率0%」を謳っている企業でも、わずか1カ月の間で算出した離職率かもしれません。よって、どれくらいのスパンのデータなのかを、きちんと精査することも重要です。
最近では新卒入社だけを見ても、このような数字が報告されています。
● 新卒社員の3人に1人以上の人が、3年以内には離職
● 入社1年以内でも、平均15%程度の人が離職
これほどまでに高い離職率の理由をひもとくと、
〈予想していた仕事と違った〉やりがいがなかった〉〈給料が低かった〉〈残業が多い/休日が少ない〉〈業界の先行きが不安〉〈専門知識・技術力を習得したい〉〈会社の環境に慣れなかった〉〈職場の人間関係がつらい〉と、理想と現実のギャップに心折れて、離職の道を選択せざるを得なかった人が多いよう。でも、これらの多くは就職前にある程度は情報収集できたことは確かです。次の転職活動では同じ轍を踏まないようにしたいものですね。
新卒入社の人であれば、就職・転職活動時から精度の高い情報を収集し、ミスマッチのない職選びが何より大切に。さらに就労者であれば、自分の仕事が正当に評価されているか、ライバル会社で働く同職種の人の平均年収はどれくらいか、あるいは「離職は悪であり、継続することが大切」と、不満の多い現職に固執しすぎていないか……といった第三者の視点をもつことも大切。
── アルバイト、パート、新卒入社、転職、会社設立……。百人百様悩みは尽きないでしょうが、偉人、成功者はいくどもの人生の転機を迎えながらも、生来の勘と独自の情報によって、ピンチをチャンスに転じています。
私たち市井の人も、日本人を取り巻く労働実情を把握し、自らが置かれた立ち位置を客観的にみつめる機会を定期的に作ることで、よりよい労働環境を手に入れられることは間違いないでしょう。
≪記事作成ライター:岩城枝美≫
横浜出身。東京在住。大手情報サービス企業を29歳で退社後フリーランスに。教育、結婚、通信、金融、IT、住宅、ゴルフ系の出版物、Web、社史、社内報など、20年にわたりあらゆるジャンルの取材・執筆、ディレクションに携わる。
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