この7月26日、厚生労働省の委員会で最低賃金の引き上げが決まったと報じられました。10月から、全国平均で前年より時給で24円高い822円になります。
時給なのでピンとこない人も多いかもしれませんが、2002年に現在の決め方になって最大の伸びだそうです。
そこで、「“最低賃金”ってなに?」という人のために、解説してみましょう。
労働者からの搾取を防ぐ制度?
“最低賃金”とは何かというと、厚生労働省のホームページには「最低賃金法に基づき国が賃金の最低限度を定め、使用者は、その最低賃金額以上の賃金を支払わなければならないとする制度」と説明されています。これはつまり、労働者からの搾取を防ぐ制度、といえるでしょう。
最低賃金には、すべての労働者の最低限の賃金を保証する「地域別最低賃金」と、特定の産業における企業内において、賃金水準を設定する労使の取り組みを補完するための「特定最低賃金」があります。
両方が同時に適用される場合は、金額の高いほうに合わせる必要があります。
一応、全労働者が対象となっていますが、最低賃金を適用することでかえって雇用がなくなってしまうおそれのある、障がい者や職業訓練を受けている人などは除外されるしくみもあります。
中央と地方の“格差”が如実に
「地域別最低賃金」とあるとおり、都道府県によって差がついています。
2016年10月までの最高は、やはり東京都の907円。
次は神奈川県の905円です。
最低は693円で、鳥取県、高知県、宮崎県、沖縄県が該当しています。
10月からは、東京都は932円、神奈川県は930円、693円だった4県は714円に上がります。
それにしても、最高と最低では1時間あたり218円、1日8時間で1744円、1カ月20日として3万5000円近く、年収では40万円以上の差になります。
それだけ生活費が違うということなのでしょうけれど、中央と地方の“格差”が如実に表れていますね。
あなたの住む都道府県の最低賃金を確認しましょう!
厚生労働省のHP「平成28年度 地域別最低賃金全国一覧」はこちらから確認できます↓
http://pc.saiteichingin.info/table/page_list_nationallist.php
「デフレからの脱却」が目的か
ところで、安倍首相は2015年11月に「毎年、最低賃金を3%程度引き上げる」と表明しました。
今回、過去最高の最低賃金引き上げとなったのは、そうした方針を受けてのこと。安倍政権の経済政策のテーマは「デフレからの脱却」ですから、賃金を上げて消費を促進させるのは当然の施策といえるでしょう。
消費税の増税を見送ってまで消費マインドの底上げに力を入れているわけですから、アナウンス効果を含め、“合わせ技”の効果を狙っていることは明白です。
しかし、経営者としては給料を上げなければならなくなるわけですから、反発も大きいように思えます。
それに対しては、政府が助成措置を講じて(つまり税金を使って)抑制しているようです。一方、特に飲食店などの深刻な人手不足ですでに賃金が上昇しており、最低賃金の引き上げは“後追い”という側面もあるようです。
もっとも、最低賃金で働いているのは主婦のパートなどで、全体の1割程度とされています。この増加分も貯蓄に向かうかもしれないので、どの程度の効果があるのか、いまひとつの疑問は残りますね。
≪記事作成ライター:高橋光二≫ フリーライター・エディター。1958年、東京都生まれ。1981年、多摩美術大学デザイン科卒業後、㈱日本リクルートセンター(現・㈱リクルートキャリア)入社。2000年、独立して現職。主に経営者インタビュー、コンテンツマーケティング、キャリアデザインなどの分野で編集・執筆。
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