昨年は、外国人観光客の数が1974万人と過去最高を記録し、消費額は3兆円を超えるなど、インバウンド景気に沸いた日本。
その外国人旅行者、とくに中国人の買い物代が減っているとニュースで見かけることが多くなりました。
10月19日に、観光庁が2016年7―9月期の訪日外国人消費動向調査を発表しましたが、中国人一人あたりの買い物代金が10万1964円で、3四半期連続で減少していることが判明。
「モノ」から「コト」へシフトしている、その背景を紹介します。
「モノ(爆買い)」から「コト(観光・体験)」にシフト
爆買いブームのピークとなった2015年。
中国人観光客が日本で消費した額は1兆4174億円にのぼり、ビジネスのビッグチャンスを迎えた小売り業では、軒並み店舗の軒先に「免税」「タックスフリー」「銀聯カード使用可」の表示を掲げ、来日観光客をターゲットにしたビジネスも次々と登場。
そうした世相を反映し、「爆買い」は2015年の流行語大賞にもノミネートされましたが、一転、一人あたりの買い物代金が3四半期連続減少……。
その理由は様々ですが、わかりやすい現象として、購入品が高級品から化粧品などの日用品にシフトしてることも減少の一因となっているようです。
さらなる要因の一つとして、ことし4月に中国で税改正が行われ、国外で買い物したものを中国に持ち込む際の税率が引き上げられたことにあります。
たとえば、高級腕時計は税率30%から60%にアップ。電気製品も20%から30%に引き上げられました。
そこに追い打ちをかけたのが、円高人民元安。昨年に比べて約20%の円高となったことで、日本製品に割高感が出るようになってしまったのです。
こうしたことから高級腕時計や宝飾品の売り上げは落ち、とくに百貨店のダメージは強いといわれています。
しかし、中国人観光客の数は、決して減少しているわけではなく、ことしも大きく伸びています。また、現地通貨ベースでみると旅行消費額は、前年同比で増加しています。高額商品を買いあさるといった今までのイメージから、楽しみのあり方が広がっているようです。
日本製はネットで!? 急速に広まる「越境EC」
日本国内での買い物は今までより控えめになりましたが、やはり日本製が人気であることに変わりはありません。
そんな中国で、爆買いブームと重なるように2014年から火が付き、急激に人気が高まっているのが、越境ECです。
越境ECとは、インターネット上の通販サイトを通じた国際的な商取引のこと。簡単に言えば、海外商品を直接買えるショッピングモールサイトです。
経済産業省の6月の報告によると、中国のEC小売業者上位7社の合計売上高は1兆1048億元で、中国の小売業界を牽引する形になっているとか。
この陰には、日本から商品を中国に送った際、最短3日ほどで届く物流システムを構築した大手物流会社の功績も大きな追い風になっていますが、PCやスマホの画面に表示された商品を「クリック」するだけで数日後に日本から商品が手元に届くのであれば、日本で買い込んだ大量の荷物を、苦労して自国に持ち帰る必要はありませんね。
特に中国人は、知人などの周りの人の口コミや体験談を重視する傾向が強いとされています。こうしたことから、日本で買い物した人や、旅行中にいいモノを見つけた人が発信したSNSの情報をもとに、越境ECで日本製品を購入するという流れが急加速。
当然ながら、国外で買い物したものを中国に持ち込む際の税率が引き上げられたことに比例して、ことし4月にネットショッピングで買った海外商品に対しても課税される法改正がなされたのですが、その便利さから、現在、越境ECは驚くべきスピードで躍進しているのです。
── いずれにせよ、「爆買い」という一つのブームは終焉を迎えつつありますが、消費の多様性は、新たなビジネスモデルが生まれる始まりとも言えるでしょう。
今後の訪日観光客の消費のあり方を見守りたいですね。
≪記事作成ライター:ナカムラミユキ≫
千葉出身。金沢在住。広告制作会社にて、新聞広告を手がける。映画、舞台からメーカー、金融まで幅広い記事広告を担当。著名人インタビューや住宅関連、街歩きコラム、生活情報まで興味の赴くまま執筆しています。
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