年金制度〈超〉入門 その6 ── 年金制度は本当に「改革」されているのか?


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ひんぱんに繰り返されてきた年金制度改革。
特に大きな改正がされたのが2004年の年金制度改革でした。

この改革が本当に「改革」の名にふさわしいものであったかには、疑問の声も上がっています。
では早速、その実情を具体的に見ていきましょう。
 

2004年の年金制度改革

 
2004年の年金制度改革は、「100年安心プラン」と銘打たれたものでした。
この際に、年金制度を安定化させるための仕組みとして導入されたのが「マクロ経済スライド」という仕組みです。

これを見ていく前に、これまでの回の繰り返しになる部分もありますが、まず改革全体の主な内容を確認しておきましょう。

●保険料水準固定方式を導入し、2017年までに段階的に引き上げてその後は固定する(厚生年金では所得の18.3%、国民年金では一律1万6900円)。
●マクロ経済スライドの導入
●所得代替率の下限設定(50%)
●基礎年金国庫負担割合の引き上げ(1/3から1/2へ)
●積立金の活用 ── 有限均衡方式の導入

さて今回検証する「マクロ経済スライド」は、年金制度の自動安定化の仕組みであるとされていますが、これは何も年ごとに何もしないでいても年金制度は破綻しない、というハッピーな制度ではありません。実質的には年金額の伸びを抑える仕組みです。

本来、年金額は物価と賃金の上昇を勘案して算定されます。公的年金の支給額は、前年の1月から12月の物価や賃金の水準に合わせて4月分から金額が決定されます。
「マクロ経済スライド」は、この賃金上昇と物価上昇をそのまま年金に反映させるのではなく、一定の調整率によって年金給付水準の上昇率を抑制する仕組みです。
この制度によって、年金の世代間格差を解消し、将来の年金受給者である現役世代の給付水準を確保しようとしているのです。
 

「マクロ経済スライド」の計算方法

 
具体的には賃金上昇率と物価上昇率から約0.9~1%(スライド調整率)を差し引き、それを年金の給付額に反映させるという計算になっています。

本来であれば、たとえば物価上昇率が3%だとしたら、そのまま3%年金給付額が上がるはずですが、「マクロ経済スライド」によってそこから約1%分差し引いた数値を年金額の伸びとして設定するのです。

ところが、この制度は賃金や物価がある程度上昇する場合には、適用されますが、賃金や物価の伸びが小さく、この仕組を適用すると年金が減ってしまう場合には、この制度が適用されないことになっています。
 

10年も適用されなかった「マクロ経済スライド」

 
ご存じの通り、日本経済は賃金も物価も上がらない、デフレ状態が長く続いてきました。
したがって2004年に導入されたにもかかわらず、「マクロ経済スライド」は10年も適用されてこなかったのです。
これにはデフレが長く続いたため、給付額が減額されたはずだったのに、「物価スライド特例措置」として年金額が減額されてこなかったことも関係しています(つまり「もらい過ぎ」です)。これもあって「マクロ経済スライド」が適用されてこなかったのです。
2014年には消費者物価が上昇したため(これも消費税増税の影響が大きいものでした)、マクロ経済スライドがはじめて適用されることになり、上昇率は抑えられました。実際の年金給付水準は0.9%に抑えられたのです。

そして2015年には物価は0.8%上昇しましたが、賃金上昇率はマイナス0.2%であったため、「マクロ経済スライド」は再び適用されませんでした。
 

依然として横たわる、年金制度の矛盾

 
「マクロ経済スライド」は特にすでに給付が始まっている世代にとっては、年金減額の制度として、評判がよくないようです。制度がわかりにくいなどの他にも、今後の少子化の進展にまったく対応していない、などの批判もあります。しかも年金制度の安定のために導入されたこの制度が、経済の低迷が原因で適用することもできない状態です。
中にはデフレ状態でも、将来の水準維持のために「マクロ経済スライド」を適用すべきだ、という意見もあり、年金制度の矛盾は根本的に解決するのはなかなかむずかしいようです。
 
 

≪記事作成ライター:帰路游可比古[きろ・ゆかひこ]≫
福岡県生まれ。フリーランス編集者・ライター。専門は文字文化だが、現代美術や音楽にも関心が強い。30年ぶりにピアノの稽古を始めた。生きているうちにバッハの「シンフォニア」を弾けるようになりたい。


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