数億円もの名器・ストラディヴァリウスは、それだけ価値ある音色を奏でるのか? ②


Violin, rose and music books

前記事では、ヴァイオリンの代名詞、ストラディヴァリウスについてご紹介しましたが、ストラディヴァリウスという特別な楽器は、世界レベルのソリストか、リッチな演奏家が愛用する限定品……と言っても過言ではありません。

ベルリン・フィルなどの特別なヴィルトゥオーゾ・オーケストラのコンサートマスターなどを例外として、一般の楽団員はそれほど高価な楽器を使っていないのが実情です。
 

ストラディヴァリウス以外のヴァイオリンは

 
では、日本のプロ・オーケストラに所属する団員はいくらくらいのヴァイオリンを使っているのでしょう。
現在、日本で制作されているヴァイオリンはヤマハの最高級品で160万円ほど。プロの楽員でも日本製を使っている人はいますが、主流はイタリアやドイツで制作されている現代楽器です。ヴァイオリン産地として名高いイタリア・クレモナの新作ヴァイオリンが300万円から400万円程度ですから、一般の奏者は国産高級車クラスの楽器を持っていることになります。
ソロ・コンサートマスターなど一流どころになると19世紀から20世紀にかけて作られたモダン楽器を使っている人が多く、そのプライスは1000万円から2000万円と高級外車なみ。さらに弦楽器に必須の弓は、楽器の3割程度が相場です。したがって、普通のヴァイオリン奏者でもプロであれば、楽器に500万円程度は費やしているわけです。
 

ヴィオラやチェロなどの弦楽器はどうか

 
同じ弦楽器であるヴィオラやチェロも一般的価格はヴァイオリンと同じ傾向にあり、ヴィオラで200万円~300万円、チェロは少し高く500万円~3000万円といったところです。また、一番大きいコントラバスについては楽団が保有していることが多く、よほどのことがなければ団員が持ち込んで演奏することはまずありません。こうしたオーケストラ保有の楽器が老朽化することをふまえ、オーケストラを運営する団体では年間数千万円を楽器購入の設備投資として予算に計上しています。オーケストラ運営には数億円とはいかずとも、それなりの維持費がかかるわけです。

ちなみに、ストラディヴァリウスはヴァイオリンだけではなく、ヴィオラやチェロ、ギターも制作していました。ストラディヴァリ制作による楽器で構成されたクァルテット(ヴァイオリン2挺とヴィオラ、チェロが1挺ずつの4挺セット)は、世界で6セットが存在します。
日本音楽財団ではパガニーニが所有していたことでも有名な「パガニーニ・クァルテット」を保有しています。そのセットは40年以上にわたって活躍し惜しまれながらも2013年に解散した東京クヮルテットに貸与した後、現代最高の弦楽四重奏団として名高いハーゲン・クァルテットに貸与中。楽器の価格はともかく、300年も前につくられたストラディヴァリウスが常に4挺揃って奏でられる弦楽四重奏曲は、なんとも贅沢なアンサンブルです。
 

音色と価格との関係

 
モーツァルトやバッハなどの協奏曲や交響曲に欠かせないヴァイオリンやチェロ。
その価格について、ストラディヴァリウスを主に取り上げましたが、楽器の価格と音の関係についてははっきりいって解明されていません。
高額な楽器を使っているから素晴らしい音が出るわけでは決してなく、あくまで演奏者の技術によるところが大きいと言えます。

また、ヴァイオリンは繊細な楽器ですから、天候や湿気などに影響を受けやすく、常に一定の音が出せるとは限りません。ましてや、ヴァイオリニストの体調や力量による音の高低や響き、CDに録音した曲と生演奏の違いなど、毎回違うこともありえます。

さらに、ストラディヴァリウスの一部はすでに楽器の限界を超え、いまやガルネリ・デル・ジェスやアマティのほうが音がよいとする声もあり、一概にはわからないのが実情です。
どんな価格のヴァイオリンを用いても素晴らしい音が出せる演奏家が出現するかもしれませんし、ストラディヴァリウスを超える現代のヴァイオリンが頭角を現すのも時間の問題かもしれません。いえ、もしかしたらすでに存在するのかも……。
楽器にまつわるエピソードを知っていても先入観にとらわれることなく、実際に耳にする音を直接確かめ、楽しむことが大切なのではないでしょうか。

参考URL:日本音楽財団HP
 
 

≪記事作成ライター:山本義彦≫
東京在住。航空会社を定年退職後、学校に通って介護資格を取得。現在は介護福祉士として勤務する日々。オペラをこよなく愛し、航空会社在職中より始めた音楽評論の執筆も継続している。


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