FRB:予想通りの金利据え置き、資産購入縮小路線を米金融市場好感 


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9月20日FRB(米連邦準備理事会)はFOMC(米連邦公開市場員会)を開催し、政策金利(フェッド・ファンド・レート(FF Rate)の誘導目標金利)を1.00~1.25%の据え置きと、10月から資産購入縮小を開始すると発表しました。

共に概ね予想通りでした。政策金利は、年内の11月1日もしくは12月13日開催のFOMCで利上げが決定される観測が非常に強いと言えます。金利で物事を判断する習慣が身についている筆者は、短期金利先物ユーロドル(3ヶ月物金利)12月限(9月28日現在で1.48%)となっています。これは、現在の政策金利上限1.25%に利上げ予想幅0.25%を加えた1.50%にほぼ近いものです。
では、来年はどうでしょうか?声明文の付属説明の中にドットチャートと言うFRBメンバーのFF Rateの予想利上げ時期について記述したチャートがありますが、それによると来年は3回(0.25%×3)つまり0.75%、従って2.25%に来年末まで引き上げるようです。
そして19年から20年にかけては2.75%まで引き上げ、最終的にこの水準が「政策金利の天井」とのシナリオを描いているようです。このシナリオで来年の予想をしたいと思います。
下記チャートは金利先物ユーロドル来年9月限チャート(出所:CME)です。現在98.25(利回りベース1.75%)で、丁度来年1回の利上げを織り込んだ水準にあります。年内1回と来年前半1回の利上げは織り込み済みです。問題は今後どのようにFRBは利上げを進めて行くかにかかっています。来年はイエレンFRB議長が再任されるかどうか、また多くの現在投票権のあるメンバーの交代があり、これまでの通りの利上げが実施されるかどうか不透明と言えます。
しかし米景気がリーマンショックから立ち直り、景気が順調に回復し、経済成長を押し上げる構図にあります。FRBが注意して見ているPCE(個人消費支出)コアデフレーターの7月の数字は1.4%(前年比)と今年年初水準の1.6~1.8%からは低下傾向にあり、不安材料となっています。
しかし雇用はしっかりとしています。メンバーの交代があっても、大きな景気変動がなければ、これまで通りの利上げシナリオは継続されることになるのではと筆者は思い描いています。
来年9月限チャートからは今後2.00%方向に追加利上げを織り込む、つまり価格で言えば98.00方向に売られる展開が予想されます。FRBが緩やかな利上げを繰り返す方向を示しており、米企業はそれに即応した資金繰りを行えるために、企業への金利負担と言う悪影響は軽減できるのではないのかと思われます。
従って、米株式市場は好感することになります。事前に金融市場にFRBは利上げセッションを続けるということを流布しておけば、それに企業は対応することができます。賢明なイエレン議長だと評価します。

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もうひとつの注目点は、FRB保有の資産縮小の開始を10月から始めるということでした。これまでの当レポートで説明してきましたが、改めて振り返りましょう。現在FRB保有の資産は約4.5兆ドルと言われています。保有資産の明細は、米国債とMBS(住宅ローン担保証券)がほとんどです。そして今回の発表では、当初月額100億ドル(米国債:60億ドル、MBS:40億ドル)を上限としています。
そして段階的に上限額を増やし、いずれは月額500億ドルまで引き上げるとしています。アナリストの試算として、1年で3,000億ドル、2年目は5,000億ドルの縮小となります。下記グラフ(出所:ウォール・ストリート・ジャーナル紙)では、今後の予想を示しています。2年で8,000億ドル縮小するということは、2019年10月には3.7兆ドルになる資産となります。グラフでは、2020年以降の早い時期に2.5兆ドル近辺まで資産縮小を実施するということを示しています。こちらの資産保有でもリーマンショックからの負の遺産の解消を急ぎたいというFRBの意向を反映したものです。
今後ドル金利上昇のシナリオを想定すれば、債券の価格下落が予想され、資産の含み損を抱えるが容易に予想され、そのような損失を少しでも軽減したいとの意向も反映しているのでしょう。出来るだけ早く保有資産を縮小したいというのがFRBの本音ではないのかと思います。

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FRBは利上げと保有資産縮小の動きを強めていることを前提に、米金融市場を眺めてみましょう。緩やかな利上げ、そして保有資産縮小の動きは、市場金利上昇の動きを強めます。前段でも説明した通り、FRBは事前に利上げヒントを出し、しかもその利上げ速度は緩やかにおさめたいと思っています。それは株式市場では好感されている、利上げがあるということを事前に察知し、それに対して企業が対応します。大きなリスク回避の材料がなければ、今年、来年と株式市場の好調さは持続されることでしょう。
そして、不人気なトランプ政権が、減税と言う政策を打ち出してきました。法人税をこれまでの35%から20%に引き下げるといっているようです。オバマケアの廃止、メキシコとの国境税を設けることにより、財源捻出と言う目算は頓挫しそうで、当初の15%減税とはいかないようです。
しかし主要先進国の中では、ほぼ競争的な税率におさまりそうです。また、個人減税についても簡素化するとの内容です。FRBの緩やかな利上げ政策にも関わらず、減税と言う景気刺激策により、米株式市場は引き続き上昇を続けるのではないかと予想されています。

為替市場について少し触れますが、日本では日本銀行の大規模金融緩和政策が継続されることが、9月21日開催の日銀金融政策決定会合で確認され、当面円金利は低位で安定することになります。10年日本国債はゼロ近辺の水準で固定されています。反対に米国は利上げモード、そしてFRB資産縮小開始と、金利は上昇気味に今後推移しそうです。米10年債金利は2.30%水準から今後2.50%目指して利回り上昇が予想されます。それは日米金利差拡大へと必然的に繋がります。
そして金利差拡大は、ドル上昇の勢いを強めることになります。ドル/円は今後上昇する動きを強めるのではと思います。リスク回避の要因、つまり北朝鮮問題など地政学リスクにより、時々変動はするものの、ドル/円は110円が固いサポートとなり、115円方向に向かうのではないのかと筆者は思い描いています。海外株式市場、そして日本株式市場が活況、そして円安基調が進むという金融市場を考えて、皆さんのポートフォリオ管理を考えましょう。ミドルリスク、ミドルリターンなクラウド商品はどうしてもそれを考える上では外せない魅力的な金融商品と言えます。リスク回避の金融相場は必ず来ます。

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«記事作成ライター:水谷文雄»
国際金融市場に精通するInvestment Banker。
スイス銀行(現UBS銀行)にて20年余に亘り外国為替および金利・債券市場部門で活躍、
外銀を知り尽くす国際金融のプロフェショナル。新興の外国銀行(中国信託商業銀行 )の
東京支店開設準備に参画しディーリング・ルームの開設を手掛ける。
プライベートではスペインとの関わりを深く持つ文化人でもあり、
スペインと日本との文化・経済交流を夢見るロマンティスト。


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