ドル金利高がどうしてドル安相場を招くのか?


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ドル金利高にも関わらずドル安相場が続いています。為替相場理論から考えれば、この動きにこれまで為替・金利の世界に従事してきた筆者は違和感を持ちます。ドル円で言えば、ドル金利が上昇し、円金利が低位安定であれば、必然的に日米の金利差が拡大することから、ドル円はドル高/円安の為替相場が演出されるというのが為替理論と言えます。
それでは今回の円高/ドル安はどのような理由で演出されているのか、考察してみたいと思います。

金利差がキーポイントの為替相場。そのためにドル円に限定して、日米の現状の金融政策を検証してみましょう。

米国:FRB(米連邦準備理事会)は、利上げセッションに入っていると言えます。現在の政策金利(フェッド・ファンド・レートの上限金利)は1.50%です。今年は0.25%毎の利上げが、3回か4回実施されるのではと市場関係者の多くは予想しています。筆者は短期金利先物から政策金利の予想を算出しています。現状から見ると、ユーロドル(3ヶ月物)12月限2.48%です。(下記グラフ参照(出所:CME))
このグラフを見ると、昨年後半以降、2月初旬のダウ平均の株価乱高下にも関わらず(緑丸部分)、ほぼ一直線の金利上昇を示しています。(金利先物では、価格下落=金利上昇を示しています。97.50の水準は100-97.50=2.50%となります。)現在の政策金利とは約1%上値水準に位置します。つまり0.25%毎に年末までに4回の利上げをほとんど織り込んでいる水準と言うことが分かります。
筆者は現時点で年4回の利上げがあるのではと予想しています。そして短期金利ディーラーと企業の資金調達担当者に間接的にアドバイスをする資金ディーラーも同様な考えであると思います。今年は利上げのスピードが速いというアドバイスを得ることになる企業の資金調達担当者は企業の経営幹部に対しても、資金コストが上昇するとの報告書を上げることになります。
この報告書に基づいて、企業幹部は今年の経営計画とその資金繰り計画を立案することになります。金利上昇のスピードが速まると、企業の経営計画にも影響を与えることになります。企業の売上高、そして利益計画を軌道修正する必要が出てくることになります。
今後企業は売上高、利益予想を下方修正する可能性があると言えます。それが、投資家の心理的不安となり、株価に影響を及ぼしてくることになります。それが、2月上旬の株価下落となったのではと推測されます。かなり前倒しとなり、負の連鎖が続いたと言えます。
 
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このため、ドル金利上昇にも関わらず、市場全体にリスク回避の動きとなり、ドル安を演出することになりました。長期金利の指標となる10年米国債は2.90%前後の動きにあります。そして短期金利先物は利回り上昇の一途にあります。長期金利は現在の金融市場が楽観的であるか、それとも悲観的であるかの心理的リトマス紙となっています。そして金利高を悪い金利高であると解釈しています。
短期金利先物では、そうして心理的金利相場とは別に、冷静に企業の資金需要、市場の需給の関係を反映した金利水準を示しています。筆者は、長期金利と短期金利のこのような関係性を示していることから、短期金利の動きを為替相場との関係で見る上で、どうしても重視しています。皆さんも参考にしてください。

もうひとつ悪い金利高を演出している要因は、米財政赤字が膨張することになるのではと言う懸念からです。これについては、前回レポートでも報告しています。今後2年間で連邦政府予算歳出上限を3000億ドル(約33兆円)で引き上げることになります。一方FRBは金融緩和縮小(テーパリング)を景気拡大に伴い、粛々と実施することになります。
トランプ政権は減税を大々的に実施するとしており、どうしても財政赤字拡大懸念を演出します。米債券の買い手が不足してくることから、金利上昇懸念が出てきます。それが、悪い金利高を演出することに結果なります。

短期金利上昇からくる米企業の資金調達コスト上昇が引き起こす業績低下懸念、そして結果反映されるダウ平均低下、そして米財政赤字懸念からの悪い金利上昇からと、二つの要因が演出するドル安傾向が今後懸念されます。

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日本:黒田日銀総裁が主導する異次元の量的・質的緩和は継続されています。そして今年年初から、緩和策からの出口戦略を模索する動きにあるのではと、金融市場が勘ぐりました。日々行われる日銀の債券オペの購入額を縮小させたことで、日本の金利の指標である10年国債利回りが一時0.10%を上回る状況となったようです。
しかし、市場に対して強力なメッセージ、つまり指し値オペという0.10%以上の国債を無制限に買うという金融政策を打ち出して、金利を絶対に上昇させないという意思を明確にしました。
また、副総裁の人事に関しても、リフレ派(デフレーションから抜け出したが、本格的にはインフレーションに達していない状態をリフレと呼び、市場に資金供給する政策を基本とすることが景気回復の金融政策を是とする。)の若田部氏と、日銀一筋で金融市場に精通する雨宮氏を起用する人事を固めました。また黒田総裁自身の再任も確認されたようです。
このことから、量的緩和政策は継続され、さらに日本の金利の上昇の余地が封鎖されたことで、日本の株価にも良い影響を、そして円安傾向を強力にバックアップされた体制が確立されたのではと伺えます。

結論:米国が悪い金利上昇をどの様に解釈し、今後の米株価にどのように織り込んでくるかに注目したいと思います。イエレン前FRB議長は、利上げペースは緩やかになると市場にメッセージを発してきました。パウエル新議長も同じようなメッセージを発することになるのでしょう。
年4回の利上げペースは市場予想以上のペースであり、これが米企業にどのような負の影響を与えるかに注目したいところです。筆者は、利上げコストがそれ程大きな業績に変化をもたらすことにはならないと思います。
そしてこれまでの所、その兆候は米経済指標には表れていません。米株価が大きく下落すると、リーマンショック時のようなサブ・プライム・ローンの焦げ付きのような事態が出現することになりますが、現状そのような兆候は見られません。

米サイドから見ると、それ程米株下落のドル相場下落のシナリオにならないのではと思います。シカゴ金融先物市場の為替のドル円での2月13日時点のポジションを見ても、107円台のドル安になっても、円ネット・ショート115,509枚と、引き続き10万枚以上の円ショートポジションを保有しています。シカゴのヘッジファンドはまだまだドル高が続くと読んでいるようです。
そして日本は引き続き金利が上昇しない緩和政策を続けると確信しているようです。筆者は、今後、米企業業績が大きく悪化する局面に陥らなければ、引き続きドル高傾向が続くのではと予想しています。
 
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上記はドル円のウィークリー・チャートです。これを見ると2016年末に大きく上昇した局面(緑丸部分)があります。この時期はトランプ新大統領期待が主な要因です。もし、この期待感からの上昇を崩すドル安局面があるとすれば、ヘッジファンド等市場参加者が焦ってくることになります。前段までの分析から、これを大きく打ち崩す局面までには至らないと筆者は楽観しています。本来の日米金利差拡大から、今後のドルの戻り相場を予想します。

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«記事作成ライター:水谷文雄»
国際金融市場に精通するInvestment Banker。
スイス銀行(現UBS銀行)にて20年余に亘り外国為替および金利・債券市場部門で活躍、
外銀を知り尽くす国際金融のプロフェショナル。新興の外国銀行(中国信託商業銀行 )の
東京支店開設準備に参画しディーリング・ルームの開設を手掛ける。
プライベートではスペインとの関わりを深く持つ文化人でもあり、
スペインと日本との文化・経済交流を夢見るロマンティスト。


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