「大改革の改正案」株式型クラウドファンディング実現へ新たな一歩。


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金融庁は2015年2月13日、平成26年度金融商品取引法等改正(1年以内施行)等に係る政令・内閣府令案等を発表した。

今年5月27日をめどに同法を施行することを目指し、現在多くのパブリックコメントを求めている。
この改正案は、インターネット上で個人と企業の株式取引を行うプラットフォーム、クラウドファンディングの普及促進をねらったもの。今回はこの詳細について、日本クラウド証券の大前和徳氏に解説してもらった。

より多くの企業に資金調達の機会を

金融庁が発表した改正案の内容をみると、資金調達を求める企業と個人・機関投資家との取引を増やすため、多くの規制緩和の内容が盛り込まれている。具体的にはインターネットを通じたクラウドファンディングを取り扱う金融商品取引業者(少額電子募集取扱業者)の最低資本金について、株式を取り扱う場合(第一種少額電子募集取扱業者)は5000万円から1000万円へ、ファンドを取り扱う場合(第二種少額電子募集取扱業者)は1000万円から500万円へ、それぞれ引き下げる。さらに、兼業の規制も緩和した。資金調達の上限については、1社(あるいは1ファンド)当たり1年以内に1億円未満かつ投資家一人当たり50万円以下に定めた。こうした改正で資本金や兼業規制がネックとなりクラウドファンディング事業に参入できなかった企業が投資型クラウドファンディング事業に参入できるようになると共に、多くの企業にとって、クラウドファンディングを利用した資金調達の可能性が拓かれることになる。

大前氏は今回の金融商品取引法改正について、「企業にとって新たな資金調達の方法ができた」と述べた上で、「大改革だ」と位置づける。インターネットを使って非上場企業の株式による資金調達ができるようになるのは大きな前進であるという。これまで銀行借り入れ以外に資金調達の手段がなかった中小企業にとって、株式による資金調達への道が拓かれたことは大きな朗報だ。

「法の改正によって今後、多くの企業がクラウドファンディングに関心を持ち、活発に取引を行うことになると思います。クラウドファンディングの取引がきっかけとなって成長した企業が最終的に上場するケース、大手企業が好条件で企業を買収するケースが増加するといった成功事例が出てきてほしいですね」。

投資型クラウドファンディングのリスク

しかし、投資型クラウドファンディングの利用が想定される全国の中小企業やベンチャー企業は監査法人の監査を受けていなかったり、ディスクロージャー等の企業情報が少なく、取引にリスクがつきまとう。大前氏は今後の日本クラウド証券の方針として以下のように答える。

「非上場企業の株式投資には上場企業の株式投資以上にリスクがありますので、企業の審査をしっかりとやるのはもちろんのこと、リスクの説明をしっかりしていきたいです」。

クラウドファンディングで投資できる企業の数が増えれば、その分、優良な企業を見抜く個人の「目」も必要になってくる。これまでなら証券取引所の取引の流れをみながら、株式売買をするのが一般的なイメージだった。しかし今回の法改正で、インターネットを通じて、情報開示が限定的な非上場企業の株式に投資できるようになる点が今までとは大きく異なる。

「株式取引をそもそもしたことがない人たちにとってだけではなく、上場株式の取引経験のある人にとっても、株式投資型クラウドファンディングは全く新しい体験となります。投資しようと思う企業の事業内容、魅力、展望などについて慎重に考えた上で投資するかどうかを判断してほしいですね」。改正案では個人の投資上限額は50万円に定められているが、十分に検討した上で決定することが望ましい。

まだまだ制約も

一方、大前氏は今回の改正案について、規制が緩和された部分があるものの、規制が強化された部分もあると指摘する。

「改正案はインターネット以外の場所で、金融商品取引業者がクラウドファンディングを取り扱うことを禁止しています。つまり、電話、直接会って話し合うことや、セミナーでの勧誘行為はできません。また、メールのやり取りやYouTubeなどで動画を見せることはOKですが、Skypeを使ったコミュニケーションもできません。インターネットの取引だけではどうしても投資家と企業との信頼関係を築くことに限度があり、取引件数の伸び悩みにつながるかもしれません。その点を最も懸念しています」。

一般の人々がインターネット上で、見ず知らずの企業の呼びかけに応え、投資をする―――。これまでになかった真新しいモデルに対して万能な法令を敷くことは難しい。今後のクラウドファンディングの方向性に合わせて、これからの法令は変容していくといっていい。いずれにしても、金融商品取引法施行令の改正でクラウドファンディング業界は大きく前進する。この業界の今後の行方に注目したい。

インタビュー先:日本クラウド証券 代表取締役社長 大前和徳
記事作成:ライター 藤川健太郎


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