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正しいキャリア選択とは
「仕事の内容が合わない」、「想像していた会社と違っていた」―――。就職面接を突破し、意気揚々と入社したものの、職場が想像していたものと違っていた。そんな経験を持つ社会人は多い。職場で自分の長所が生かせない、好きな仕事内容を見いだせない。そう悩んだ彼らは転職に踏み切る。
昔、最初から自分の好きなことを見出し、それを仕事にするよう奨励する「啓発本」がベストセラーになった。さまざまな職種が溢れている現在、多くの若者が自分に向いていて興味がある仕事を追い求める傾向になるようだ。
今回は日本クラウド証券代表取締役、大前和徳氏からキャリアの選択について、自身の経験を踏まえながら、カイセツしてもらった。
仕事ができる人にそもそも迷いは存在しない
「自分に合った仕事かどうか、間違ったキャリアを築こうとしているのか、単純に判断するのは難しいと思います。人はそれぞれ違いますから、仕事の向き不向きはあるとは思います。しかし私の周りの仕事ができる人はみんな、仕事が好きかどうか、向いているかどうかなどの迷いがそもそもありません。自分が持っている仕事を精一杯取り組んで、結果を出しています」。
向いているかどうかを考える以前に、まず目の前の仕事に全力で取り組み、結果を出すことが重要だと、大前氏は強調する。
「もし、結果が出せていないなら、一生懸命やっているかどうか吟味する必要があるではないでしょうか。そうでないと、いつまでも『青い鳥』を追い求めて、次々転職を繰り返すことになると思います」。
「好きなことを仕事にする」ことの幻想、まずは目の前の課題に全力で取り組め
「好きなことを仕事にしたいという気持ちは分かります。しかし経済的な対価として報酬を得ようと考えるなら、嫌なことを目の当たりにすることもあります。例えば映画が好きで、それをビジネスにしようとした場合、料金の交渉や、自分が勧められない作品に対してもビジネスとして関わらなければなりません。『好きだ』という理由だけで仕事を続けるのは難しいと思います」。
「仕事をする以上、『気に入らない』『無駄だ』と思うようなことが出てくるのは当然のことです。しかし、そこで立ち止まらず、どんなことでも圧倒的な結果を出してやろうと、すべてのことに全力で取り組むことが大切です。そのプロセスで自分のスキルが不足していると感じたら、一生懸命勉強してスキルを高めてほしい。全力を出すことで、先が見えてくるものだと思います」。
圧倒する結果を出そうと努力するうちに先が示される
「今思えば、私自身、当時の理想とはまったく違った仕事をしています。これまで、その時その時にやるべきことに集中してきた結果、その分野の経験や知識を習得し、それがその次の仕事につながり、そこでまた新しい難題に取り組むうちにさらに新しい経験と知識が加わり、その積み重ねの結果としてクラウドファンディング事業に出会うことができました。がむしゃらに取り組むなかで学んできたことが、当初は思いもよらなかった場所に自分を導いてくれたと思っています」。大前氏は今の仕事こそ、充実したもので、自分に向いたものだと実感している。
アップルの創業者でCEO(最高経営責任者)だったスティーブ・ジョブズ氏は2005年、スタンフォード大学のゲストスピーカーとして招かれた際、「Connecting the Dots(点を繋げること)」という有名なスピーチを行っている。同氏は大学中退後に潜り込んだCalligraphy(西洋書道)の講義がその後、アップルの事業で大きな役割を果たしたことを挙げ、「後で振り返れば、点と点が一本で結ばれていた」と振り返り、「いまやっていることがどこかでつながると信じてください」とエールを送っている。
先のことはまったく予測できない。だからこそ、目の前にあるすべてのことに集中し、最善の結果を出すことだけを考えればよい。そして後になって「点と点が一本で結ばれていた」と実感できた時になって、初めて「最高の仕事に出会えた」と確信できるのかもしれない。
インタビュー先:日本クラウド証券 代表取締役社長 大前和徳
記事作成:ライター 藤川健太郎
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