度を超した、信仰の表れとほど遠い御朱印ブーム?なかには27万円で転売も!


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神社やお寺を訪ね、参拝の証としていただく御朱印。10年ほど前からブームとなって、朱印帳を持参して有名無名の寺社の御朱印を収集する人が増えている。

ところが最近になって、度を超すとでもいうべきマニアが増え始め、各地の寺社で弊害が起きているようだ。特にこのたびの改元フィーバーでは、各寺社から力の入った希少な御朱印が配布されたことから、取り合いの騒動となったところも現れた。早速、その実態をみてみよう。

本来は、信仰の証として寺社からいただくもの

御朱印は本来「御収印」と呼ばれ、寺院への参拝者が写経を収めたときに、信仰の証としていただくもの。お寺とご本尊の名前をしたため、当日の日付けを入れて半紙に朱で押印してもらうことから、「御朱印」と呼ばれるようになったのだが、現代では納経(写経を収めること)をしなくても、お参りした人と仏様・神様との御縁の証として御朱印がいただけるようなっている。

ブームのきっかけは、2013年のこと。
20年に一度の「伊勢神宮の式年遷宮」と、60年に一度の「出雲大社の平成大遷宮」が同じ年に重なったことから各地の有名神社に注目が集まり、メディアなどが縁結びのパワースポットなどと取り上げ、そこでいただける御朱印が急速に普及し始めた。

やがて「御朱印ガール」などと呼ばれる新語も生まれ、それまで中高年の参拝者が中心だった寺社に、若い女性もたくさん訪れるようになった。
そうしたブームのさなかにやってきた今回の改元フィーバー。一部の神社では、改元を記念した特別な御朱印をつくり「特別頒布」とうたってアピールしたが、それが予想外の反響となり、各地で騒ぎとなってしまった。

以下に「御朱印騒動」の一例を紹介しよう。

フリマ、オークションサイトにずらり希少御朱印

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画像はイメージです

前述したように、寺社と参拝者の縁を結ぶのが「御朱印」であるはずなのに、それとは真反対の動きが出ている。典型的な例は、フリーマーケットやオークションサイトに次々に出品されるパターンだ。
参拝してはいないが、貴重な御朱印なので欲しい……という人々と、別に信仰しているわけではないがお小遣い稼ぎになりそうだから寺社を訪ねて手に入れよう……という人々の利害が一致して、各サイトは大賑わいだ。

これって本当に御朱印の意味があるのだろうか?と疑問を抱かざるを得ないケースも発生している。

明治神宮の場合
5月上旬、平成最後の日となった4月30日と令和初日となった5月1日の日付の入った明治神宮(東京)の御朱印が、大手オークションサイトにセットで出品された。その結果、27万3000円というケタ外れの高額で落札されたのだ。
明治神宮の御朱印は、通常500円の初穂料を納めれば入手できるのだが、改元初日の5月1日は一時的に10時間待ちという長蛇の列ができたため、自身で手に入れるのをあきらめた人たちがオークションに殺到。結果、このような法外な値段が付いた。本来の御朱印の主旨とは大きく外れた動きとして話題となった。

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令和元年5月1日に配布された明治神宮の御朱印

浅草神社の場合
浅草神社(東京)では、改元前後の4月27日~5月6日に数量限定で、「平成」と「令和」の両方の元号がはいった御朱印を配布したが、想定の3倍を超える約3000人が殺到。入手できなかった人の中には神社の職員や巫女に暴言を吐いたり、職員を取り囲んで罵声を浴びせたりする人まで現れた。
こうした異常事態を受けて、浅草神社では、そのあとに開催される「三社祭り」で配布予定だった毎年恒例の特別な御朱印の配布を、今年はとりやめた。楽しみにしていたファンからは、一部のマナー違反者のおかげで、大事な御朱印の配布がなくなった、と残念な声がでたという。

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改元前後に期間限定で配布された浅草寺の御朱印

会津若松飯盛山の場合
白虎隊の墓があることで知られる会津若松の飯盛山(福島県)では、100年以上にわたって直筆での御朱印の授与を行ってきていたが、5代目墓守で書家の飯盛尚子さんに対して「筆が遅い」などのクレームが相次いだため、いったん中止。
今回の改元を機に予約制で再開したのだが、今度は「予約なら郵送してほしい」「ホテルまで届けてほしい」など、信じられない要求が届いたことから、結局は直筆御朱印は取りやめたという。

到津八幡神社の場合
福岡県北九州市の到津(いとうづ)八幡神社では、公式ツイッターで御朱印の配布は一人に1枚と告知したところ、特別御朱印が欲しいために、すでに手に入れていた通常の御朱印を、これはいらないと神社の境内でページを引きちぎって、新たに手に入れようとする人が現れたという。信仰の表れとはほど遠いと、関係者は怒っている。

そのほか、令和ゆかりの地とされる福岡県太宰府市内の坂本八幡宮でも5月初めは境内に人があふれ、その日のうちに頒布価格の数倍もの金額で、フリマアプリに次々と売りに出された。

ちなみにフィギュアスケートの羽生結弦選手など有名アスリートが必勝祈願することで知られる仙台市の大崎八幡宮の御朱印も、改元当時フリーマーケットに多数売り出されていた。

寺社にとって実は貴重な収入源となっている現実

上にあげたような御朱印ブームによる弊害の例はまだまだたくさんある。とくに今年の改元フィーバーはブームの過熱に拍車をかけた。騒ぎの当事者となったお寺や神社はそれぞれ頭を痛め、まるでスタンプラリーのような感覚で参拝もせずに御朱印だけを集めたりすることや、あるいは法律違反ではなくても、すぐに転売するような行為はやめてほしいと訴えている。

しかし一方で、今のような御朱印ブームが、実はお寺や神社を救っているのも事実だ。
お寺では、檀家が高齢化して年々数を減らしており、寺を維持・管理するのが難しくなってきている。御朱印の配布はそれを補う貴重な収入源になっている。有名人が参拝して、その寺社の御朱印が気に入り、SNSで紹介されたために一気に参拝者が増えた例が実際にある。寺社としては知名度が上がって注目され、それがてっとり早い収入増につながるのも事実なのだ。

── 過熱するとさまざまな弊害が起きるものの、寺社が生き残るために、ぜひとも続いてほしい御朱印ブーム。
ただし参拝者は、原点にかえってお寺との縁結びの記念として御朱印をいただくようにしたいものだ。

≪記事作成ライター:小松一彦≫
東京在住。長年出版社で雑誌、書籍の編集・原稿執筆を手掛け、昨春退職。現在はフリーとして、さまざまなジャンルの出版プロでユースを手掛けている。


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