エアバッグメーカー「タカタ」の“リコール”による損失って、どれくらいなの?


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世界シェア20%で、No.2の位置につけているエアバッグメーカーのタカタ(No.1はシェア50%を占めるスウェーデンのオートリブ社)。
日本のメーカーですから、当然のようにホンダを筆頭にトヨタや日産などの日本の自動車メーカーはじめ、フォード、GM、FCA(フィアット・クライスラー・オートモービルズ)、フォルクスワーゲンなど世界の自動車メーカーにもエアバッグを納入しています。

そのタカタ、残念なことに世界中の耳目を集める不本意な事態に……。
 

世界で1億台以上に“膨れ上がる”

 
そのタカタのエアバッグが、2008年ごろから不具合を起こし始めました。
ご存じのとおり、エアバッグは車が衝突した瞬間にその衝撃で膨張ガスを爆発的に生じさせ、膨らませてドライバーを衝撃から守るという装置です。
その心臓部の膨張ガスを発生させるインフレータと呼ばれる部品の不具合により、飛散した金属片がドライバーに命中し、死亡するという事故まで起きてしまいました。

これにより、同年11月からタカタのエアバッグが搭載されている車のリコールが断続的に続き、2016年4月までに世界で1億台以上というとんでもない数に“膨れ上がって”います。
日本経済新聞の2016年5月1日付の報道によると、リコールにかかる総費用は1兆円にのぼる見通しのようです。

タカタの2016年3月期の連結売上高は7180億円で、前年比11.7%アップ。
2015年3月期は前年比11.5%アップですから、2ケタ成長を続けてはいます。
しかし、2017年3月期の見通しは5.7%の減少。
同年度の営業利益では日本で28.8%減、リコールが厳しい状況のアメリカは36.5%ものマイナスが予期されています。リコール関連経費が見込まれているわけですね。

そんな厳しい状況ですから、経営再建のためのスポンサーが求められていたところ、5月26日、コールバーグ・クラビス・ロバーツ(KKR)という、アメリカの大手投資ファンドが支援する意向を表明。ただし、スポンサー選定には取引先の自動車メーカーの同意を得る必要があるらしく、交渉は長期化するかも、とされています。

世界第2位という大手だったからこそ、ひとたび欠陥品だったとなればこのように影響は絶大になってしまうんですね。
 

“直接的”な諸費用と“間接的” なダメージ

 
さて。
1兆円というとんでもない金額が見込まれているリコール費用ですが、それで収まるのでしょうか? その内訳は詳(つまび)らかにはされていませんが、どんなことに費用がかかるのでしょうか。

“直接的”には概ね、次に挙げる項目が発生するようです。

・消費者への通知や広報(広告など)
・欠陥品の確認や交換
・返金
・代替品の保管や発送
・追加の人件費
・欠陥品など在庫の破棄

しかし、“間接的”にはもっといろんな影響が考えられそうです。
まずは、暴落するであろう株価による損失。
会社に愛想を尽かして退職する社員を補充するための余計な採用費(もっとも、業績ダウンにより辞めてもらうことは会社にとってはありがたいことかも)。
信用をなくした取引先が離れることによる挽回対策費。
そして一般人のイメージダウンというボディーブローのようなダメージ。
これはある意味、“逆プライスレス”ですね。

自動車メーカーでは、
2014年に韓国の現代(ヒュンダイ)が燃費の水増し。
2015年にはフォルクスワーゲンが排ガス不正問題。
そして2016年にはわが三菱自動車の燃費不正、
さらにはスズキまで、という連鎖状態……。

「リコール」は誰も気づかなかった欠陥が表面化して、というケースが多いのでなんともいえませんが、不正は“承知の沙汰”ですから許せませんね。
その代償は、もっと大きいのではないかと思います。
 

≪記事作成ライター:髙橋光二≫
フリーライター・エディター。1958年、東京都生まれ。1981年、多摩美術大学デザイン科卒業後、㈱日本リクルートセンター(現・㈱リクルートキャリア)入社。2000年、独立して現職。主に経営者インタビュー、コンテンツマーケティング、キャリアデザインなどの分野で編集・執筆。


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