リスク志向に戻りつつある市場環境


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グローバルでは株高。強まるリスク志向

 
英国のEU(欧州連合)離脱決定後、投資家はあれこれ考えているようです。英国の離脱手続きに2年間を要し、その影響を測りかねているかのような相場展開。ロンドンを中心とした英国不動産投資に対しては明確にNOの判断を下しているようです。

英大手不動産がREIT(不動産投資信託)の募集を停止しています。EU離脱で各種税負担が増えると予想され、また金融業界ではロンドン拠点を大陸のフランクフルト、パリへ移動する動きも加速しそうです。筆者は長期的に英金融業界の立場は弱体化する傾向にあるのではと思います。その動きを防ぐべきメイ新首相の交渉術に注目しています。今、ロンドン株式市場は活況、そして債券市場の動きとしてリスク回避志向の資金の流入が著しい状況です。ニューヨーク株式市場でもダウ平均が史上最高値水準に位置しています。東京株式市場は昨年12月の2万円水準にはほど遠いと言えますが、グローバルに見ると株高であり、リスク志向が強まってきていると言えます。
 

日経平均は1万6千円台まで回復

 
一方、日本ではヘリコプターマネー投入の議論が激しいようです。参議院選挙の結果、自民党の大勝、そして安倍首相は即座に経済対策に着手すると公約しました。10兆円近い経済対策に動き出しそうです。日銀による追加金融政策の議論が市場で盛んに行われています。ヘリコプターマネーとは経済後退局面で、デフレが進行している場合、強力に資金を市場に投入し、景気を刺激する策です。バーナンキ前FRB(米連邦準備理事会)議長は、リーマンショック後の金融危機に際して、国債購入を市場から購入するだけではなく、直接米国債を購入することを行いました。バーナンキ氏はヘリコプターマネーの推進者として有名です。今月バーナンキ氏は安倍首相を訪問し、また黒田日銀総裁を訪問するなどして、景気刺激策のひとつとして日本サイドに提案したのではないかと思惑が働きました。黒田日銀総裁が、バーナンキ氏の提案を受け入れて、追加金融緩和策(国債購入額を増額するなど)に踏み切るのではとの思惑が外国人投資家を中心に盛り上がっていると言えます。このため、日経平均は底値から切り返し、現在は1万6千円台まで回復しています。そして日本国債10年利回りマイナス0.25%と追加金融緩和の匂いを色濃くするマイナス金利体系と言えます。これも投資家がリスク志向の投資心理状態になっているのではないかと筆者は推測します。日本の投資家も英国のEU離脱の決定、トルコの軍事クーデター失敗の事態を消化し、そして日本政府・日銀の景気刺激策への期待感が高まっていると言えます。
 

上昇傾向のドルインデックス

 
為替相場もリスク志向かそれともリスク回避志向かどうか、ドルの動きで見ることが出来ます。筆者はドルインデックスという指数を参考にしています。下記グラフ(出所:ウォール・ストリート・ジャーナル紙)は過去1年のドルインデックスの動きを示しています。これを見ると、昨年11月には100以上を、今年の5月には92以下を示現しています。昨年末は、グローバルに株式市場が活況の状況であり、リスクを感ずる悪材料も少なかった相場展開でした。従ってドルインデックスが100を超える水準となり、リスク志向の投資環境と言えます。反対に今年に入り、原油価格下落、中国懸念が噴出し、そして英国のEU離脱懸念とリスク回避行動に投資家は動きました。その結果ドルインデックスは6月に92と下値をつけることになりました。そして徐々に上昇傾向にドルインデックスは動いていると言えます。93以下になるとリスク回避志向、100以上に動くとリスク志向と、ドルインデックスからは言えます。95の水準がリスク志向とリスク回避志向の潮目の目安として投資の参考にするとよいでしょう。

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日米金利差の拡大により円安方向に

 
為替相場を個別に見ると、リスク回避志向の金融市場環境では円高傾向になります。例えば英国のEU離脱報道には、ドル/円では一瞬100円以下の円高となりました。為替相場形成の一番の理論的根拠は、二国間の金利差です。10年債が基本となります。日本国債10年金利は現在マイナス0.25%、米国10年債金利は1.58%です。どちらかの動きで、この金利差が拡大する場合はドル高(円安)に、反対に縮小する場合はドル安(円高)と言うことになります。現在は金融情勢の落ち着きから本来の米景気回復から、米FRB利上げ観測台頭する可能性が強く、ドル金利上昇の方向が予想される。そして日銀の追加金融緩和観測から日本の金利は更に低下し、日本国債10年債はマイナス幅が拡大することが予想されます。従って日米金利差は拡大することになります。その結果のドル高(円安)方向が予想されます。しかし突然の金融状況の変化には、金利の方向性が乱れてきます。例えば英国のEU離脱と言う金融市場の予想外の報道には、リスクを恐れた資金が米国債へと流れ込みます。その結果、米国債10年金利は1.50%を下回る結果となります。日米金利差縮小となり、結果ドル安(円高)という為替相場になります。相場にはリズム、流れというものがあります。そのリズム、流れが現在リスク志向か、それともリスク回避志向なのか、潮目を良く読み、冷静に行動する必要があります。現在は落ち着きを取り戻した金融市場と言えます。従って、リスク回避志向からリスク志向にポジションを戻す動きが強まるのではないかと思います。

そのような流れに追いついていくことが難しいと考える投資家には、ミドルリスク、ミドルリターンと言ったクラウドファンディングに投資資金を振り向けることも賢明ではないかと思います。

 
 

≪記事作成ライター:国際金融アナリスト 水谷文雄≫
スイス銀行(現UBS銀行)にて20年余に亘り外国為替及び金利・債券市場部門で活躍。1980年代の為替相場大変動期の為替市場を体験する数少ない為替ディーラー。ファンダメンタルズ分析、特に欧州諸国で強みを発揮し、テクニカル分析においても定評を得る。ほぼ全部門に精通する国際金融のプロフェッショナル。
プライベートではスペインとの関わりを深く持つ文化人でもあり、スペイン情報発信センターをインターネット上で主催。スペインと日本の文化・経済交流を夢見るロマンティストでもある


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