最近、中国の大手スーパーやコンビニ、ファーストフード店などで、爆発的に広まっている電子決済(電子マネー)サービス。
その二大勢力として激しいシェア争いを繰り広げているのが、「アリペイ(支付宝)」と「ウィーチャットウォレット(微信支付)」と呼ばれる電子マネーです。
取引額は日本の約30倍、約150兆円規模といわれる中国の電子マネー事情と、急激な市場拡大の背景に迫ってみました。
中国のIT大手2社が展開する電子決済サービス
「アリペイ」は2003年、中国のネット通販最大手「アリババグループ」が始めた決済サービスです。
当初はアリババのネット通販で利用する仕組みでしたが、次第に他社のネット通販にも使われるようになり、インターネット上の決済手段としてスタンダードなポジションを確立。
最近はネット通販だけでなく、実店舗での電子決済にも活用の場が広まっており、いまや利用登録者数は3億人を超えています。
一方、アリババのライバルとして電子マネー市場に参入したのが、中国版LINEといわれる「ウィーチャット」を運営するIT大手の「テンセント」です。
同社は2013年より、ウィーチャットに支払い機能を持たせた「ウィーチャットウォレット」という電子決済サービスをスタート。
ウィーチャットは、スマートフォンを持っている人なら誰でも使っているチャットアプリで、利用者数は中国国内で約7億人!
その圧倒的なシェアから顧客層を広げ、アリペイに迫る勢いで急成長しています。
スマートフォンのアプリでサッと支払い完了!
アリペイもウィーチャットウォレットも、実店舗で支払う際は、スマートフォンに専用アプリをインストールして利用します。
使い方は実に簡単&スピーディー。スマートフォンのアプリを立ち上げ、レジのスキャナーで情報を読み込んでもらえば支払い完了!
いずれもオンラインで銀行口座に連携させているため、リアルタイムで口座の支払い処理が行われます。
また、昨年はアリペイやウィーチャットウォレットを使って、知人に「赤包(ご祝儀・お年玉)」を贈れるサービスが大ヒット。2015年春節(旧正月)の大晦日には、電子版赤包の利用額が約50億元(950億円)にも及んだそうです。
さらに最近は、イベントなどの電子チケットを発行するサービスも登場しています。会場でスマートフォンからQRコードを読み込んでもらえば、現物のチケットを入手しなくてもOKというわけ。これならチケットをなくす心配もなく、ペーパーレスでエコですよね!
中国で電子マネーが広まった背景
中国でここまで電子マネーが広まった背景には、スマートフォンの普及とともに、大きな理由が二つあります。
1・中国では個人の与信システムの構築が遅れているため、クレジットカードが普及していない。
2・最も額の大きい紙幣が100元(日本円で約1500円)と少額なため、現金で高額な買い物をする際に不便。たとえば、1万元(約15万円)の買い物をする場合、100元紙幣を100枚も持っていく必要がある。
こうしたことから、これまで中国での決済手段は、デビット式のキャッシュカード「銀聯(ぎんれん)カード」が主流となっていました。
しかし、利用時に暗証番号を入力する必要があり、どうしてもレジでひと手間かかってしまいます。
一方、アリペイやウィーチャットウォレットなら、高額でも少額でも関係なく、支払い時にスマートフォンで情報を読み込んでもらうだけ。キャッシュカードや現金払いより、格段にスムーズでストレスもありません。
いまや中国における決済サービスの主流となりつつある電子マネー。
国内でのスタンダードなポジションを獲得すべく、今後もアリペイとウィーチャットウォレットのシェア競争はますます過熱しそうです。
≪記事作成ライター:菱沼真理奈≫
約20年にわたり、企業広告・商品広告のコピーや、女性誌・ビジネス誌などのライティングを手がけています。金融・教育・行政・ビジネス関連の堅い記事から、グルメ・カルチャー・ファッション関連の柔らかい記事まで、オールマイティな対応力が自慢です! 座右の銘は「ありがとうの心を大切に」。
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