トランプ米次期大統領の経済政策に左右される年に


新しいスポークスパーソンとしてのSNS

今年は金融市場そして政治経済共に、トランプ次期大統領の一言(ツイッター、Facebook)に一喜一憂しそうな印象です。その様相は破天荒とでも言うべきもので、これまでの政治家の概念を大きく覆しそうです。
彼は大統領である前に不動産で巨万の財を成したビジネスマンです。良いことは直ぐ実行し、悪いと判断すれば、あらゆる手を尽くして排除するのでしょう。そしてそのヒントをSNSを使って、人々に瞬時に伝える手法をとるようです。これまでのツイッターを見ると、“No Way(とんでもないことだ)”と言った言葉を用いており、妥協する姿勢はないようです。SNSでの発言は明確に対象企業、国、人物に伝わることになります。トヨタ自動車のメキシコ工場建設の話を持ち出し、メキシコで自動車を生産し、米国に輸出することになれば、高い関税を課すのは明確です。
これに関連して、豊田トヨタ自動車社長は、デトロイトでの自動車ショーの場を利用して、米国に1兆1千億円投資を実行し、雇用を確保すると発表しました。腹の探り合いのない、明快なやり取りであり、日本企業も即座の対応を迫られます。狙われた企業、国は戦々恐々の時代が到来したのではと認識しているのでしょう。

“Make America Great Again.”

それでは金融界にはどのような影響が出てくるのかに思いを巡らせたいと思います。
12月の当レポートでは、トランプ次期大統領の経済政策が、FRB(米連邦準備理事会)の金融政策、とりわけ今年は利上げセッションが続くと予想され、それを阻害する動きになるのではと記述しました。トランプ経済vs. FRBが今年の最大のリスクと認識しないといけないようです。株式市場、債券市場、そして外国為替相場が大きく振り回されそうです。
トランプ氏は、米国を再び偉大な国にすると公約しています。経済面では、米国民を豊かにすることを最優先します。そのためには手段は選びません。米国第一主義となります。
米国にまずは雇用を確保する政策を打ち出します。産業と雇用を守るために、トヨタ、フォード、GMのメキシコへの今後の工場建設を許さない。そうなったなら高関税を課すということを公言しています。
NAFTA(北米自由貿易協定)の見直しやTPP(環太平洋戦略的経済提携)の見直しも視野に入ってくるのではとのリスクがあります。これには共和党の有識者がトランプ氏にTPP脱退を思いとどまらせる努力があるのかもしれません。そして日本の安倍首相も首脳会談の場で継続を持ち出し、米国にもTPPは長期的に見て利点があるという説得工作に打って出るのかもしれません。

トランプ氏の公約実現と経済界の軋轢

米国に雇用を取り戻すため、そして経済成長率4%を達成するために、今後10年間で1兆ドルのインフラ投資と、連邦法人税率を35%から15%に引下げること。更に、これを達成するためには、手段を選ばないとトランプ氏は公約しています。
この達成のためには、FRBが利上げセッションに入ることは目の上の瘤となります。FRBの第一優先項目はインフレのコントロールです。2%のFRBのインフレ目標前後にインフレをコントロールする必要があります。米11月消費者物価指数1.7%前年比、そして米11月PCEコアデフレーター1.7%前年比と2%のインフレ目標に接近してきています。
そのためFRBのメンバーは、概ね今年末か来年にはインフレ目標が達成すると見ており、現在0.50%~0.75%の政策金利(FF Rate)の誘導目標を引き上げる必要があります。多くのエコノミストが今年は0.25%毎の利上げが年3回実施(合計0.75%)されるのではと予想しており、FRBのタカ派のメンバーも同じような見解を示しています。
実際に利上げに踏み切ると、トランプ氏が口を挟んでくるのかもしれません。それも直接的にツイッターを通して。利上げは米企業の資金調達コストを押し上げます。今年合計0.75%の利上げになれば、金融機関からの借入は概ね1%超コスト高になります。これは米企業にとっては悪材料です。そして個人では住宅購入意欲など消費が削がれます。
トランプ氏はこれに対して「No Way」と批判することがあるかもしれません。そうなれば、イエレンFRB議長はどのように反撃するのでしょうか。イエレン議長が、ツイッターやFacebook等で利上げの正当性を説明するとは思えません。やはりFOMC(米連邦公開市場委員会)後の記者会見、そして米議会公聴会、講演会など機会が限られます。即答えることをトランプ氏は求めてくるのかもしれない。それにどのように対処するか見所ではと思います。それにより金融市場は右往左往することとなりそうです。

SNSは“即答”が求められ、台本の効かないメディア

トランプ氏は大統領就任後もSNSを活用し、様々な発信をすると既に公言している。これまでの大統領とは異なった新たなリスクを生むこととなります。時代の変遷を筆者は感じることになります。そして市場は必然的にSNSへの対応を迫られることになります。年3回の利上げとなると、FOMC開催月でイエレン議長の記者会見が行われる会合にかなり絞られます。3月、6月、9月、12月が候補会合となります。この何れかで利上げとなると、トランプ氏から何らかの発信が予想されるのではないでしょうか。
そしてドルの動向にもトランプリスクが見え隠れすることになります。前段で説明しましたFRBの利上げに対してトランプ氏が口を挟む、つまり「No Way」までの表現を使わないものの、不快感を示した文言を発すると、ドル長短金利は一気に下落、そしてドル下落の動きとなると予想されます。
そしてもっと重要なことは、トランプ氏が、ドル安が米国輸出を増進させ米経済の好調を維持し、そして結果国民を豊かにすると認識することです。米国で商品を製造しても、ドル高が阻害要因となる。そのためにはドル安に誘導した方が良い。そうなると、ドル安政策を明確化することになります。ドル高は米経済には有用だという従来の文言が形骸化される可能性が出てくる危険性があると言えます。

最後に

今年はトランプ次期大統領とFRBとの対立、ドル安政策への可能性が、金融市場では強いリスクとして認識しましょう。経済のスムーズな運営にはこれらは阻害要因と言えます。トランプ氏が本当に“強いアメリカ”を標榜し、実際に行動し、理論的な経済を恣意的に動かしてしまうことは非常に危険と言えます。来週20日の大統領就任式以降、トランプ大統領の政策行動がどのように変化して行くか、穏健な発言に中和していくのか見極めることが極めて重要であると思います。波乱の一年がこれから始まります。皆さん気を引き締めて金融市場と対話しましょう。


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